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2話 死んだフリは誰でもできる訳はない

ハンバーガーを食べ食べた後ルルさんの世界の話しを聞いた僕は面白くて盛り上がってしまった。

ゲームや漫画のような世界の設定話しをあまりもリアルに語る!凄過ぎる!

死んでなお、厨二を貫く彼女に僕は尊敬した。

女神?そんな信じる訳ない!神様だ…全知全能な神様が…夜中一人で寂しくボッチやってるのはおかしいでしょ?

でもルルさんの話は面白い!面白過ぎ!

ルルさんも自分の話を楽しく興味深々に聞いてくれてる僕に嬉しいそうに語る。

時々、悲しい表情もあったがすぐ笑顔に戻る。

ドーーーォーーン

遠い所から鐘の音が聞こえて来た。

ルルさんとの話に夢中で年が明けるまで気が付かなかった。

「除夜の鐘の音…あっ!あ、あ、開けまして、おめでとうございます!ルルさん」

「開けまして、おめでとう!ハルト君!」

互いにお辞儀をしながら顔を合わせると僕は照れ臭いようで顔を反らしてしまった。

僕は女の子に慣れてない…ギャルゲーのヒロインは山ほど攻略したが…

「ご、ごめんなさい、あまり…人付き合いがない方だったので…なんか擽ったいというか恥ずかしいです」

「そうか、そうか…でも、ハルト君、[ボッチ!!]だったからといって、こういう挨拶はしっかり、言えるようにならないとね!」

なぜか[ボッチ]に力強いアクセント。

「…否定はしません、返す言葉もないですが!!しかしですね、傷付いた所、更に抉り取るような事!辞めて貰えません?」

抗議する僕に鼻をトントン指で当ててそこを強調するルルさん

「すまん、すまん!鼻が痛くてな〜許せ!」

ほぅ!仕返しですか?

ルルさんは急に顔を近付けて僕の顔をジロジロ見つめて来た。

……ち、近いですよ、しかし!嫌ではなかった。

「しかし、女子に好かれそうな…中々可愛い顔してるな…それに、根も悪くない子に見える…何ゆえ?ボッチ!!かい?」

「ルルさん、性格悪いとか言われてませんでした?絶対言われてるはずです!」

「……何の事かな?」

顔を逸らしている…当たりか。

自分で言うのも何なんだが…引きこもって長く伸びたが、サラサラの薄黒い髪に17に見えない童顔、母に似て女の子に勘違いするほどの美少年と自負している。だが、……童貞です。

何故か僕をじっと見てから落ち着きが無いルルさん…顔も少し赤く鼻息も荒い。

そして僕は返事に困って、しばらく黙々と暗い空を見上げてた。

「ふむふむ…何か悩みがありそうだな…付き合ってくれる御礼とはなんだが…相談にのるぞ?」

相談する事を勧められたがあまり気が乗らない…でも、ルルさんの真剣な顔にいいですっと言えない。

幽霊にならいいんじゃない?っと思った僕は空に向けて過去の事から現在までの事を話した…それを黙々と聞いてくれてる。

「ふむふむ…9歳の時両親と夏休みに祖父の実家から帰りに交通事故ね……奇跡的にハルト君だけ無傷、以後…時々異常な現象、例えば?」

「体調が悪い時とか、落ち込んでる時、自分の周りが歪んで見える事やいきなり物が壊れたりしました…あはは」

幻覚か精神的な病気かと思われるが普通だ。

「続いてくれるかい?」

「……はい」

僕が人と関わりを拒む決定的な原因は高校入学して間も無く、構内で不良グループに絡まれリンチにあってからだ。

意識が朦朧となってしばらく、気付いたら回りの不良は血だらけでかなりの重傷…11人の中、まだ病院で退院出来ない人が7人…正当防衛といえ大事件だったので停学になった。

停学が終わった後、その噂に好奇心で喧嘩売って来る輩のせいで更に大事件…今度は相手は勿論、無関係のクラスメイトまで巻き込まれた。

それで、学校生活は混乱で退学し…家に引きこもりになり、時々夜に知り合いを避け、外に出て買い物や街をフラつくようになった訳だ。

「なるほど…うむうむ…凄いSF的な話だな!この世界の超能力見たいな?……ワゥ!」

ノリノリですな…異世界から来たと言った割に凄い知識ですよ?

「あはは…ですよね……」

こんな話し信じて貰える訳ない、幽霊にまて…バカにされた気がする。

虚しいなった僕はこの場を立ち去ろうとしたがルルさんに焦った顔で引き止められた。

「待てい!ハルト君…」


「……」

「君の話しは普通信じ難い話しだ…見た目も君は、大人数の相手全員に重傷に至るまで戦えるように見えないしね…」

「……だからなんですか!僕が嘘でも…」

「だがら!普通なら話しだ……」

ルルはこっちに指を差しながら見つめてる。

「君は絶対!見えるはずがない、私が見えて、話し合う事まで出来る…」

確かに幽霊が見えるのは普通じゃない…。

「それに君と会って、この世界の物に一瞬だが物理的干渉も出来た…体を再構築する力も無い私が…霊体のままで直接物に触れるなと…あり得ないのだ…」

「……それが僕の異常と何か関係があるんですか?」

「……今から君を調べて見よう」

調べる?何を?

ルルさんは手を伸ばして僕の顔に近づける…何か少し怖くてオドオドしてしまった。

「えーい!じっとせい!それと私の手を見ておれ…」

ん?小さくて可愛い手ですな?自慢ですか?

「よし!始めるよ……万物を見極める邪眼よ…究明せよ!」

ルルさんの体が光り出してから、その手の平から一つの目が現れ僕の目とその目が合った

怖ええぇぇぇぇ!!!何これ?手の平から目玉が出たよ!僕の目玉も飛び出そうだよ!まじかよぉ!

真っ赤な瞳に怖く感じる程冷たい視線…それを見てから意識が朦朧として来た。

それに凄く気持ち悪く辛い…

例えるなら…そうそう!深夜一人で凄く怖いホラー映画を見た後、風呂に入って髪を洗うとする時、何故か後ろから見られてるような感じた。

それ、気持ち悪いですよね?

ルルさんの声ははっきりと聞こえなかったが何故か焦るような、時間に追われるように感じだ。

「うむ……体に異常はないな…特に変わった所も無い普通の人の子だ…次は…魔力系…いや…この世界に魔力の存在は無に等しいほど薄い…が一応確認して見るか…」

しばらくしてその悪感が消え意識が少し戻った感じがした。

ルルは呆然として邪眼を閉じる姿が見えた。

…本当にルルさんは何者?…只の幽霊ではなさそう。

急に深呼吸し始めるルルさん…そして叫び出す。

「うひゃーぁぁ…なんじゃいなーありゃ…!あんなドス黒い!!デッカーイ魔力の渦…!バカなーー!」

ルルさんが急に大声で叫び出しでせいではっきりと目が覚めた。

「おー!ハルト君!目が覚めたか!」

はい…お陰様で。

「君の異常の原因が分かったぞ!!」

彼女は焦りと嬉しさ、心配、様々な表情だったが僕の方がもっと焦って心配になった。

「る、ルルさん!!か、体が……!」

「あぁ…そんな事より、今君は大変な状況に置かれておる…」

そんな事よりって?さらっと何言ってるが彼女は微弱に透明化が進行していた。

「ルルさん!体が薄く透けてますよ!!なんか…ヤバイ気がしますよ!!一体なんですか?」

「気にするな…いずれ今日の夜明けまで持たない身、それよりいいか!ハルト君…君は今…」

衝撃的な言葉だった…今まで時々彼女の不可解な表情や話し…バラバラのピースを組み上げたように…僕は理解した。

「夜明けまでって何ですか!!」

体が震えて来た…。

「ハルト君!!!」

僕を落ち着かせようと大きい声で怒鳴るように叫ぶ彼女は真剣な表情だった

「いいか…よく聞いて!君は今、死と生の境界線に居る…」

「ど、どいうことです?」

あまりもピンと来ない話しに実感が湧かない。

「ふむ…この世界の人間にはない魔力が、君には宿って居る、問題は…君の魔力は私の世界の人族と比べても前代未聞の程なんだ」

「ん?魔力?ですか?魔法を使うためのアレですか?」

「あらがち間違えてない…その魔力が…」

ルルさんは事故が原因で、魔力が活性化してしまったのではないかと推測した。

魔力の運用や作り出したマナを体に巡らせる方法も知らない、そのマナを身に巡らせるパイプ役の魔力回路まで退化しているこの世界の人類。

僕もまた、マナの運用が出来ず、その巨大な魔力が精製したマナを貯め込むだけの状況と言う…いわゆる不安定な時限爆弾だ。

そして、膨張し過ぎたマナは衝撃や精神的不安定の時、暴走してしまうっとルルさんが説明してくれた。

「ハルト君…いずれ…また、魔力暴走したら確実に君は死ぬよ…」

「そ、そうですか……」

死の宣告を言い渡された…でも長い呪縛から解放されたような平穏な気持ちだ。

「今までの辛いかったです…本当は自分のこの訳わからない力で両親が事故に巻き込まれたかと…それを思うと怖くて…」

僕は体を丸くして必死に泣かないよ耐えた。

慰めてあげたいようなルルさんは自分の姿を見てため息をした。

「はぁ〜これも縁…この世界で、ただ朽ち果て消えるのみのだった私に、君と出会い…成すべきの事が出来た…これでよいではないか…」

何か意味が分からない事を呟いてるルルさんは泣き顔を隠してる僕の頭を撫でる。

すり抜け触れ無くてもやり続けた。

「…さあ!今から私の最後の力を振り絞り、ハルト君の魔力回路を構成し直す!こっち向いて!」

その言葉に頷く訳にはいかない。

邪眼を使って透明化が始まった…もしまたその不思議な力を使ってしまうとどうなるか言わなくても分かる。

「待って下さい!!最後って…これ以上力を使ったらルルさんが…!嫌です!!やめて下さい…」

「馬鹿者ぉー!今君の状況説明したはず!ハルト君…君はいわゆる時限爆弾ようなものだ…いつ死ぬわからないのだぞ!」

「いいです…ルルさんの命を使ってまで…生きたく有りません…」

原因を教えてくれただけで感謝し切れない。

ルルさんは急にビンタをして来た、無論すり抜けてしまうが…意地になった彼女はパンチとキックまでする…

「はぁはぁ…この意地っ張りめ…子供か!!あっ…子供だったな…?ふぅ……ハルト君!私は救える命を見殺しにした汚名を残したくないよ」

「しかし、ルルさんが!」

「えいーヤカマシイ!夜明けまでも持たぬ命惜しくもなんともないわ!」

怒り出して僕を怒鳴るかと思ったが、優しい表情で静かに話した。

「それに君は2000年以上孤独だった私にひと時の刹那でも楽しい時間をくれた、最初君と話しが通じた時、嬉しくて泣きそうだったよ…むむむ!鼻にポテトを刺すなど無礼者でもあったが!ふふふ…あはははは!愉快な奴…」

急に笑い出し笑顔に僕を見つめてる。

「このままだと君も私も終わりだ…せめて君だけでも生きて…そして私の事、時々思い出してくれれば、私は救われた気持ちになれる…」

その優しい笑顔…今なら女神と信じてもいいと思う…。

「ルルさんの事…忘れる訳ないじゃないですか!」

「そうかそうか…嬉しいよ!ありがとう、これで心置きなく行ける……よし!やるぞハルト君!」

説得に応じる事にした…死ぬ事より、自分の存在が消えて忘れ去られるのが…とても寂しくて死ぬより怖く感じたからだ。

ルルさんは両手から青い光を取り出して僕の頭部にそれを入れた。

「よいーしょっと!これはアストラルラインっていうものでね…普通の魔力回路じゃ君の魔力に耐えられないから私の一部を切り取り君に移植した…」

ルルさんの一部…

「ふふふ…光栄に思え!向こうの世界じゃ国を売っても手に入れないシロモンだぞー」

「そんなに凄い…うぐ…何…この…全身の痛み…あーぁー!!!!」

「ハルト君!耐えるんだ!」

全身が激痛に襲われてあまりにも痛くて地面に倒れた。

「構成が始まった!上手くいったようだな…さって…仕上げと行くか!」

ルルさんの両腕をひらげだ瞬間、僕とルルさんの体から同時に青い光が発光した。綺麗なサファイアの輝きのような光に包まれた

「ハルト君!君の体の中から構成されてる、アストラルラインを良く感じろ!そこで自分の魔力の中心まで繋ぐように念じろ!君の魔力は巨大だ!すぐ分かるはず…私もサポートするよ!」

「ぐぁー痛…いが 頑張ってみます…くっ…」

時間と共にその光は収束し始める…僕は上手くやれてるようだった。

それにしても、自分の魔力?どんな物なんだ?見た事無いから分かる訳がない…それに痛くて意識が飛びそうだった。

その時、蠢いてるように渦巻く黒い物体のような影のような物を感じ取った

「ん?な、何だ!この気色悪い黒いウズは?」

……凄く気持ち悪い…こんなのが僕の体に?

「ハルト君それだ!それが君の魔力だ!つなぐんだー!」

えーーーー!ウィルスか何かの病気かと思ったよ!

「は、はい!」

ルルさんの命と形見のようなこのアストラルライン失敗は許さない

青光をその魔力に繋ぐように強く念じると生きてるようにアストラルラインが僕の魔力に融合し繋がれた

全身に発光した光が僕の体に吸い込まれ消える

「上手くいったようだ…おめでとう、ハルト君!」

「ルルさん…何故か体が凄く軽いです…」

こんな感じ本当に久しぶり…この何年間、色んな病院に通い、様々な薬を飲んでも治らなかった。

嬉しくて体をピョンピョン飛び跳ねて見た。

「そうじゃな…それが本来の状態であろう…いままで溜まってマナが回れず…うっ!!はぁはぁ…」

辛そうな表情で座り込んでしまった。

「ルルさん!!!!」

「あはは…最早、限界見たいだ…力が入らないのう…しかし、ハルト君が助かって嬉しいよ、最後は自分を誇らしく行ける…気が楽になったよ…」

「そんな!!まだお礼も…話したい事もたくさんあるのに…ダメだよ!」

僕はルルを強く抱きしめて子供ように泣き始めた…。

「ああ…この世界の最後の情けか…?ありがたい…やっと君に触れる事が出来た…」

ルルさんの手が僕の頬に触れた…暖かく柔らかい女の子の手…

「ああ…この温もり…愛おしい男の子の涙と暖かい胸の中で散りゆく…女神冥利に尽きるのう…ふふふ」

本当に幸せそうなルルさんの顔の前で泣いてはいけないと思った。

だが、涙は止まらない、泣き止む事も出来なかった。

「あーぁっ!ルルさん!!」

「そう悲しまなくて良い…出会いと別れはどどの世界でも同じ理、自然な事よ」

「でも、早すぎるよ…それに僕何もお返しできてない…酷過ぎるよ!」

「ふふふ…すまんな…こんなバットエンディングでな…ハルト君…ありがとう…君との出会いをこの世界に感謝を……」

「ルルさーーーーーん!」

僕の頭を撫でいたルルさんの手はもう力が入らないようで地面に落ちる…僕はその手を握り取った。

微笑んでじっと目を閉じ消滅を待つルルさんと、離さないように必死に抱きしめる僕…

その状況が5分…30分…1時間が経過した…。

動かずそのまま、僕の泣き声も止まり冷たい冬風の音しか聞こえない沈黙の中。

(は、早く消滅しろ!私!!恥ずかしくて死にそうだぁぁ!なんでなんで!消えないのぉ?誰か殺してぇぇ!!うううう…)

顔を真っ赤にして目を瞑って恥ずかしさを耐える彼女…身体の微妙な動きを感じった。

ルルさんは自分を抱きしめて動かない僕が気になったかチラッと片目を開けて見ていた。

もちろん、気付いていたが…見なかった事にした。

(うわー!!こっち見てるよ!めっちゃ見てるよ!ゴミを見る目で見てるよぉー!今の状況まるで死んだフリじゃないか!辛いよぉ…誰か助けてーうう…!)

うん…もうちょっとこのままでして置こうかと思ったが…可哀想になって来たから声をかけてあげよう。

「あのー、ルルさん…」

僕の呼び声に最早、その死んだフリは続行不能と判断したルルさんは胸の中から逃げるように離れた。

「あ、あれぇー?おかしいな…もう消滅するような感じだったのに…あらまぁー!不思議!」

あら?いいノリですね…びっくりとも動かず見つめて見ようか?

「あの…これはですね…決して嘘ついた訳じゃなく」

「えーと、もう大丈夫ですか?」

「てへっ! そう見たい!…まだ原因が分からないのでな…油断は出来ないが…」

本当はルルさんの無事に僕は凄く嬉しくて涙が出て来た。

「良かった…本当に良かったよ」

消滅の話しが本当かどうかはどうでもいい…彼女は私の命の恩人に違いないからだ。

自分の無事を喜び、また泣く僕を愛しい我が子のように暖かい眼差しで見つめて頭を撫でてくれた。

「しかし、よくわからんな…消滅する段階で急に復活しておる……どいう事だ?」

自分の体を隅々確認するルル

「いるかどうか分かりませんが…本当に!本当に!!神様に感謝です!!」

「君の目の前におるのじゃろうが…ヘックチ!…うん?体が冷えておる…本当にどうしたものかのぅー?」

僕は服に付いた砂を払いジャケットをルルさんにかけてあげた。

「おぅ…ありがとう、暖かい…」

「ルルさん …寒いし、良かったらうちに来ませんか?」

「良いのか? 行く当てがない私は助かるが…」

「はい!!喜んで!是非来て下さい ︎」

「うむ!案内せい!」

「はい!」

死と消滅の危機を免れた僕と自称女神ルルさん

その奇跡の因果に後からどんでもない事が起きると僕達は予想も出来なかった…

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