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1話 出会いは燃えるが自己紹介が痛々しいと台無し

ー 第一章 ー うちの女神様救いにちょっと行って参ります

静かで暗い部屋の中…僕は最近ハマったスマホゲームをやってる。

10連ガチャ300回やってやっと欲しいキャラが出た…このゲーム会社…エグイ。

グーゥ…

お腹が空いてキッチンに行って冷蔵庫を開けた。

なんも無い…買い出しに行ったのはいつだろ?…食料が尽きて仕方なく買い物に出かけた。

寒い!寒い!寒いぃぃ!

暗くなり始めた夕方に冬の冷たい風…引き篭もりの僕には辛過ぎる。

外に出たのは何時だったかも忘れた。

僕は志村晴人、訳あって今は無職、引き篭もりをやっている…勿論、好きでやってる訳では無い。

でも、今はこの生活も悪く無いと思って来た…その内、社会不適合者…いわゆる廃人になるだろう。

とにかく腹が減ったから腹拵えをしてから買い物に行こ…まずはいつものアレからだ。

僕が社場に出ると必ず寄って行くファーストフード店…マックストルネードバーガー!ネイミングセンスはどうあれ美味しい…山盛り買って置こう!

「ありがとうございました」

持ち帰りの袋を持って街をぶらつく…さてさて、買い物すませて…?

商店街の店はほとんど閉まっている。

うん…忘れてた!今日は大晦日の夜だった…そして、僕の誕生日…コンビニの世話になるしかない。

クーーーールル、グーーゥ

お腹から空腹感のレッドゲージを知らせるスクランブル音が鳴る…空気読めよ!僕の胃袋。

何処かで食べる事にした。

顔見知りに会ったら嫌だし、人が居ない場所は?…あった!

小さい公園で灯りも少ない暗い場所で静かな場所!最高のベストプライス!…座って食べる為にベンチに向う。

だが先に座ってる人が居た。

あぁ…ついてない、ほかに座れそうな場所は無い、仕方ないや相席させて貰おう。

暗くてよく見えなかったが公園の灯りが付くとベンチのど真ん中に座ってるのは女子の姿だった。

怖いお兄さんじゃなくて良かった!

ナンパ目的で来たと誤解されるのは嫌だが、冷めたハンバーガー食うのはもっと嫌だ!…だからササっと食べて去る事にした。

片隅に座ろうとする時、彼女は慌てて反対側に滑るような動きで移動した。

「あわわわ!? ササササー!」

き、器用だな…どうやって移動した?

どんな女の子かちょっと気になって包みを開けながら彼女をチラッと見た。

慌てて端っこに行った割には何も無かったように空を見上げてる。

真っ黒の黒髪、長い髪を結んだ白リボン…可愛いというより愛らしい顔立ち…中々の美少女!正直…僕のストライクゾーンど真ん中だ!

背は高い方ではない…僕のより低いと見える。

しかし!出るとこ…ぼーん!と出て、引っ込むとこ、しっかり引っ込んでる。

わーお!!初めて見た、世間で言うロリ巨乳!しかも、ボンキュボン!と来た。

そのダイナミックなボディに見惚れてしまってチラ見が止まらない!超光速眼球運動…ちょっと吐き気がしたが、やはりやめられない。

顔は幼く見えるが多分年上に間違いないような大人の雰囲気…それに彼女の座り姿に違和感を感じた。

彼女のお尻がベンチの上から少し上がったり下がったりしていたからだ…。

お、女の子のお尻って…凄い弾力だ!半端ねぇぇ!アンビリバボぉぉーーー!

僕は新たな発見に胸が躍った!

それに、この寒い時期にかなりの薄着だったので寒くないか心配になった。

ハンバーガーをか齧りながらまたチラ見をする瞬間…

「むむむ!!」

僕の視線に気が付いた彼女の顔が鼻に当たる1ミリ先まで接近していた。

「うわゎー!!びっくりした!ジロジロ見てすみません!すみません!ちょっと気になってというか、心配というか…」

「えっ?…まさか!君!!!!!」

「いやいや!誤解しないでください!ナンパとか変な事考えてませんから!ただ静かな場所でハンバーガー食べに来ただけですから!」

僕はチラ見した罪悪感もあり、必死に謝罪と弁明をした。

「うーーん…いや…違うよ!私が驚いたのはね…」

彼女は自分のアゴを指でトントンと当てながら、考え事し始める…しばらくしてから口を開けた。

「君は…なぜ私が見えるのかな…?ってね…」

…予測不能の質問!返事に困る!

「僕、視力は悪く無い方で…目に特に問題はないんですが…」

よし!何とか返事出来た!

「うーん?そういう事聞いてないが…まあ良い!名は何というか?」

言いたい事がありありそうだったが、どうでもいいような顔に変わり話をすり替えった。

「僕は志村晴人(シムラハルト)です、今日で17歳になりました。」

普通に自己紹介が出来た!僕はまだ廃人レベルまでは至ってないようだ

「うむ!良い名だ!それと、誕生日おめでとう!志村君!この先君に幸あらんこと祈ろう…」

優しく微笑む彼女に顔がふわっとなった。

何だろう…なんだか…嬉しい。

初めて会った人に形だけのお祝いの言葉だが彼女の微笑みには真心と暖かい気持ちが伝わった。

嬉しさと照れ隠しのように身を彼女の反対側に向けて礼を言った。

「あ…ありがとうございます…」

「ぷっ!照れてる照れてる可愛い可愛い!あはははー」

腹を抱えて笑い出す彼女。

「…揶揄うの…やめてもらいません?」

笑われたが嫌な気分になれない…彼女の笑顔は見惚れる程無邪気な笑顔だったからだ

「うむ…誕生日なのに悪いが…今しばらく付き合ってもらえぬだろうか?」

「はい?何をですか?」

「サイゴの夜は楽しく語り合って過ごしたいのだが…だめだろうか?」

先までの無邪気な笑顔が寂しく切ない表情に変わる…その顔の前にして断る事は出来なかった。

「…いいですよ!どうせやる事も、待ってる人いませんし……朝まででも付き合いますとも!今年最後の夜、二人で過ごすのもいいですね!」

夜、女の子を置き去りして帰るのに気が引ける…本当は偶然な出会いにちょっと萌える

「おーー!本当にありがとう!…しかし…大晦日の夜…一人寂れたこんな所で…君…ボッチかい?」

はい!その余計な一言で心のダメージを受けているボッチです。

「あの…否定はしませんが…流石に傷つきます…こんな暗い場所で女の子一人………って貴女も同じじゃないです?」

「あはははは!すまん!すまん、ふむ!私も自己紹介をしなければならんな!」

ベンチから立ち上がり凛々しく自己紹介を語る彼女

「心して聞くがよい!そして光栄に思え!私の名はルナ、ファナリー、ルカ!そして!」

「へぇー!外国の方だったんですか?日本語が悠長で分かりませんでしたよ!すごい!わーい!パチパチ」

あっ!話の腰をポキっと折った…。

「おい、君…人の自己紹介は最後まで聞かないと、どっかの怒り狂った女子に殴り殺されるーとかなんとかの話し親御さんに教わらんかったかね?」

僕の顔にグーを出す彼女…丸くて柔らかそうで殴られても痛くなさそう…。

「その様な話は初耳ですが…今後から気を付けます!続きをお願いします」

「ふんっ!許す!改めて名乗ろう!」

彼女は真剣な顔でもう一度自己紹介をやり直した。

「私はルナファナリールカ!そして!私はこの世界の者ではない…」

最近ヘッドホンでボリューム上げ過ぎてゲームしてたせいか耳が悪くなってる?それか日本語を間違えてるか?

「この世界と異なる…ダースアクリア, マムンティア, レガリスという3大陸が存在する別世界の16の大神の一柱!破壊を司る女神である!!!!」

………どっちも違った。

「えへん!人の前に自己紹介は2000年ぶりだよ!なんか照れるなーウフフ♪」

何言ってるんだこのお姉さん?何大陸?女神?2000年?

あまりも壮大な(痛々しい)自己紹介に体がガチガチ固まって言葉が出ない。

は、早まったよ!ああぁ…朝まで付き合うのは骨が折れそう…どうしよう?

彼女はハルトが何を考えているのか気付いた様子で、怖ーい顔してハルトの顔に近付けて来る

「君…私の事…痛々しい厨二病の女とか思ってるんじゃないか?イヒヒ」

「いや…その………ちょっとだけ……」

怒りはすぐ虚しさに変わったようでため息をした。

「そうだな…この世界には神の信仰…存在すら薄いでな…当たり前か…」

その壮大な自己紹介はどうあれ、彼女の落ち込み姿に少し胸が痛む…。

それで包みの中身のハンバーガーとフライドポテトを取り出して話を合わせる事にした。

過去、僕も相当な厨二だったからな…話に合わせる事ぐらいは全く問題ない。

「あのルルさん…一緒に食べながらその何ちゃら大陸の話ししてくれませんか?」

「うん…?ルルさん?」

「ルナファナリールカさんって長いし呼び難いじゃないですか?ですからルルさんで…」

そう…舌を噛みそうだよ?

「フッ…まあ悪く無い呼び名だ!なら、ルル様で良い」

様付け?ふっ!さらっと拒否するか…。

「はい!ルルさん!」

「お、おぅ…君、顔に見合わずに根性座ってるな…まあ良い好きにせい…」

「はい!ルルさん」

「ってなんちゃらってなんだ!私の世界バカにしとるんかい?あん?」

その地名、一回聞いて覚えられる訳ないでしょ?

「まあまあ…冷める前に食べながらね!」

ハンバーガーとフライドポテトを開け手に取って差し出したが、ルルさんはなんだか困った顔した。

「ハンバーガー嫌いですか?すみません…」

「いや君が謝る事はない…嫌いではない!そもそも口にした事もないんだ…むしろ食べて見たいぐらいだよ……」

「では…なぜ?」

「ああ…それはな…食べられないからだよ…触る事さえ出来ない…ほらね…」

ルルさんは手でベンチの背もたれを掴もうとしたがすり抜けて掴む事が出来なかった。
それにベンチから浮いて飛んでる!

びっくりして心臓が飛び出して喉に詰まって窒息死するかと思った。

あの時、見た跳ね上がる姿はベンチに座ってるように見えたたけで実は浮遊していた事に気づいた。

紛らわしいよ!僕のアンビリバボの気持ち返せ!!よく考えたら、んなわけ無いよな…

胸が躍った自分が恥ずかしくなった。

「ん?…という事は!えーー!ルルさんって…幽霊だったんですか!」

「き、貴様ぁぁ!女神だというておろうが!無礼にも程があるわ!ー幽霊ってなんだ!そんな未練ダラダラ残し彷徨うようような…」

怒ったと思ったが急に黙り、地面に座り込む。

(あぁぁぁ!私も女神のチカラを失い2000年以上この地を彷徨う立派な幽霊じゃないか…あはは…もう幽霊でいいです…)

初めて見た幽霊的な存在に興奮してしまったか、魔が差したか?好奇心満々な僕は落ち込んでるルルさんに向かった。

「ルルさん…ちょっとこっち向いて下さい」

「なんだ、後にしてくれるか…ちょっと、今の自分の置かれた状況に軽く絶望してるとこ…ん?」

ルルさんが顔を向くと長いフライドポテト二本を両手で持って構えた。

「はぁー!二刀流突き!せいやーっ!!」

「くは!ぬうおーー!」

僕はフライドポテトをルルさんの鼻の両穴に奥深く見事にぶっ刺してしまった。

「おほふ、信じられない…め、女神の鼻にこんな物をぶっ刺すとは…くぅ…この罰当たりがぁ!!ああ…もう幽霊だっけ?ふふふ…もういいです…どうでもいいや…」

フライドポテトが鼻に刺さってままくの字になった。

あっ!見事に刺さってしまった!すり抜けると思ってやったよ!本当だよ!……ん?

「ルルさん!ルルさん!!ポテトが鼻に刺さってますよ!!」

「分かっとるわい!!お前が刺したんだろがー!!ん??えっ?」

ルルさんもやっと気が付いたか驚き、鼻に刺さったポテトに震えながら手を向ける。

そして、思い切り握り取った。

ぽん!ぽん!

え?その音…おかしくない?そこまで深く刺したか?

「と…と…獲ったどぉぉーーー!」

両手にポテトを取り空に向け叫ぶ彼女は物に触れた事が凄く嬉しいようだ。

「ルルさん!もしかしたらハンバーガー、食べられるじゃないですか?」

ルルさんにハンバーガーを両手で差し出した。

「うむ…試して見よう…(ごっくり)」

目をつむりながらハンバーガーを取ろうとしたが僕の顔にその手が近づいて来る。

「あの…ルルさんそっちは僕のオデコの方ですけど…」

「あっ!すまん!緊張して手元が狂った……えいっ!!」

ハンバーガーは僕の手からルルさんの小さくて綺麗な手の上に渡った。

「う、う、嘘見たい…長年あれほど物に触れようとして、叶わなかったのに…こんなにあっさり…」

信じられないような目でハンバーガーを見つめる

「食べて見ませんか?美味しいか分かりませんが、僕は好きですよ?マックストルネードバーガー……」

「ああ…食べたら口が引き裂かれそうな名前はどうあれ…頂きます!!」

ルルさん……突っ込みうまい!

「うん!美味しい…うううう…」

涙目になりながら、ハンバーガーを食べてるルルさんの姿に、僕は彼女を揶揄った罪悪感で顔を反らしてしまった。

そして、彼女の話しが全て本当の事なら、気が遠くなるほどの時を一人でどれだけ孤独や寂しさに絶望したか…

僕には想像もつかない。

「ハルト君!!これ、美味いな!もう一個寄越せ!!はぁはぁ」

「……はい」

女神から賊に落ちる瞬間を僕は目撃した…あと余計な心配したと後悔もした。

ルルさんはハンバーガーを5個を軽く食べ尽くし、まだ足りないような表情だった。

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