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22.偽りの平穏①

 俺たちは街中を散策した。
 道を歩き回り、いろんな店も覗いて見たけど、特に変わったことはなかった。
 見れば見るほど普通の街でしかなくて、魔王軍との関係も見つからない。

「やっぱり気のせいだったのか……」

 そう思い始めた頃には完全に夕日が沈み、月と街灯の光だけになった。
 これ以上は散策できそうにないな。

「まだ続けるのか?」

「いや、一旦宿を探そう。そこでこの街を治めている人間は居ないか聞いて、いるのなら会ってみようと思う」

 これだけ大きな街だ。
 治めている地主か、有力者の貴族はいるだろう。
 このまま無闇に探すより、よく知る人物に聞いたほうが手っ取り早い。
 初めからそうすればよかったかも。

 そうして見つけたのはラポールという名前の宿屋だった。
 一階部分が飲食店になっていて、二階が宿泊施設を兼ねている。
 入店した俺たちは、受付窓口に立っている女性に話しかける。

「すいません。今夜泊めてもらいたいんですけど」

「はい、三名様ですね。一部屋でよろしいですか?」

「大丈夫です」

「なっ! ちょっと待てよ!」

 俺と受付嬢の会話に、ルリアが割り込んできた。

「何だよ」

「お前と一緒の部屋なんて嫌だぞ!」

「はぁ?」

「私は一人で泊まる! お金も自分で払うし!」

「……」

 困った表情で受付嬢が俺を見てきた。
 俺はため息をついて頷く。

「二部屋でお願いします」

「かしこまりました」

 書類にサインをすると、二部屋分の鍵を持ってきてくれた。
 それを受け取った後で、受付嬢に別の質問をする。

「すいません。もう一つお願いしたいこと、というか質問があるんですが」

「何でございましょう?」

「この街に領主とか、地主っていますか? もしいるなら、どこで会えるか教えてほしいです」

「領主様なら西の大きな屋敷に住んでおられますよ」

 受付嬢は親切に街の地図を持ってきてくれた。
 彼女が指し示した場所には、エルドワール家という名前が刻まれていた。
 領主の名前はウィルソン=エルドワール。
 もともとは王都の貴族で、十年ほど前にこの街周辺の領主となったらしい。
 領主ならこの街の事情には詳しいだろうし、ここ数年の出来事も知っているに違いない。
 俺たちは一旦荷物を部屋に置いてから、領主の屋敷へ向けて出発することにした。

「今さらなんだけど、プラムは俺と一緒でよかったの?」

「ん、何じゃ? もとより一緒みたいなもんじゃろ」

 プラムは気にしていないと言った。
 荷物を置いた俺たちは、すぐに宿屋を出発した。
 この時点で時刻は午後八時を回っていた。

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