バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

20.街を救って回れ

 ルリアを仲間に迎えた俺たちは、当初の目的通り魔王軍に占拠された街を目指した。
 最初に到着したのは、ベルリアという美しい建造物が立ち並ぶ街だった。
 王都からも近く、観光地としても有名だったらしいが、非常に残念なことに魔王軍に完全占拠されてしまっていた。
 俺たちは街の外で隠れている。

「プラム、人間の生き残りは?」

「おらんのう。全部敵じゃ」

「了解、じゃあこれでいいか」

 俺は右手を街に向けてかざし、あのスキルを発動さえせた。
 街には魔王軍の連中が徘徊している。

「ん、何だあれは?」

 そのうちの一人が何気なく空を見上げると、黒い物体が浮かんでいるのがわかった。
 斑点模様のように空に浮かぶそれが、すさまじい勢いで街に降り注ぐ。

「て、敵しゅ――」

「……雨炎火石」

 俺が生み出した炎の岩で、美しい街並みは無残に破壊されていった。
 その様子を見ていたルリアが青ざめながら言う。

「ちょっ、やりすぎだろ! 街まで壊さなくても」

「いいやあれが最善じゃ。街に生存者はおらんのじゃからのう」

「言いたいことはわるけど、俺たちには時間がないんだ。手っ取り早くが最優先なんだよ」

「……」

 理屈はわかるが納得できない。
 そういう顔をルリアはしていた。
 
 続いて訪れたのは、産業都市だったクリークという街。
 ここでは多くの人間が働いており、騎士団が愛用している武器や防具を生産している工場がある。

「どう?」

「人間はおるぞ。どうやら働かされているようじゃ」

 空からプラムが確認すると、工場では魔王軍支持のもと、捕まった人間たちが働かされていた。

「どうするのじゃ?」

「さっきのはなしだぞ! 生きてる人がいるんだからな!」

「……そうだな~」

 ルリアの意見に賛同するわけじゃないけど、さっきみたいに街ごと破壊するのはなしだと思った。
 ここの工場では騎士団の武器防具を生成しているし、無闇に破壊すれば味方の戦力ダウンにも繋がってしまうからだ。
 
「地道に狩りますか」

「了解じゃ」

 俺たちは言葉通り地道に駆逐することした。
 俺の手に入れたスキルには、相手を欺くタイプのものが多かったし、プラムもそういう能力は持っていた。
 だから姿を消して一人ずつ倒し、敵に気付かれないように数を減らして、ある程度少なくなったら――

「こっからは掃討戦だ」

「うむ!」

 プラム主導で残党を狩っていく。
 最終的に敵を駆逐するまで、五時間以上かかってしまったよ。
 この日は取り返した街で一夜を過ごし、助けた街の人には、王都へ連絡するように伝え、明朝すぐに出発した。

「順調かな?」

「じゃな」

「な、なぁお前……何で魔王に負けたんだよ」

「どういう意味?」

「だってお前、王都に迫ってた大群も倒したんだろ? 半信半疑だったけど、実際見て強いのはわかったし……そんなに強いなら魔王だって」

「違うぞ娘。強いのではなく、強くなったが正しいのじゃ」

「え?」

 ルリアは首を傾げた。
 俺は彼女に説明するように言う。

「プラムの言った通りだよ。以前の、シンクたちと旅をしている頃の俺は、本当に弱かった。どうしようもないくらいにな。それと勘違いしているみたいだけど、俺は魔王と戦ってない」

「ど、どういうことだよ!」

「俺は弱くて足手纏いだった。そんな俺を助けるために、シンクたちが俺を遠ざけたんだよ。らしくない嘘まで付いて……。だから俺はこうして生きてる。お前は俺を裏切り者だって言ったけど、実際その通りだよ。俺がもっと強ければ、皆と一緒に戦えたのにな」

 もしも、あの頃も今くらい戦えていたら、こんな結末にはならなかったかもしれない。
 考えれば考えるほど、後悔しか浮かんでこないよ。
 いくら後悔したって無駄だし、もしもなんて考えても意味がないってわかってる。
 地獄巡りを経て、ある程度は割り切れたつもりでいたんだけどなぁ……。
 ルリアに言われてから、また考えてしまってるよ。
 やっぱり……俺は弱いな。

「だからまぁ、俺は恨まれても仕方ないな」

「……そんな顔で言われたら、恨めないだろ」

 ルリアはぼそぼそと何かを呟いた。
 俺には聞こえなかった。

「何か言った?」

「なんでもない! それよりお前って呼ぶな!」

「はいはいルリア。だったら俺もルークってちゃんと呼べよ」

「それは私の勝手だろ! ついていくとは言ったけど、別にお前を信用したわけじゃないんだからな!」

「そーかい」

「騒がしい娘じゃのう……」

 プラムは呆れてそう言った。
 こうして俺たちの旅は、少しだけにぎやかになって続く。

しおり