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第10話~撃退~

「これでも喰らえ!!」

“ザシュッ”

 光の巨人兵に一斉攻撃を仕掛けた俺とシュー、サリットの三人は、光の巨人兵にスマッシュヒットを浴びせた…はずだった。

“ヒュン…”

「何…だと!!」

「アコード!大丈夫!?」

「ああ。何とかな」

 刹那、光の巨人兵の体全体が透明と化し、俺たち3人の攻撃は空しく空を切った。そして敵の胴体部分をすり抜け、向こう側へと移動させられた。

「…来るぞ!!」

 振り返ると、透明と化していた光の巨人兵は実体化し、巨大なウォーハンマーを俺たちの中心へと振りかざそうとしていた。

“ブウォォォン!”

「散れ!」

「言われなくても!」

“ササッ”

“ドスゥーン”

 三方向に散った俺たちのいた場所にウォーハンマーの一撃が炸裂し、洞窟の地面の一部を削り取ると同時に、大量の砂煙が辺りに充満した。

「この砂煙の中じゃ、敵さんも俺たちを攻撃できないな」

「シュー!!危ない!!」

“ドサッ…”

“ブウゥン!”

 光の巨人兵の横方向の一撃が、辺りの砂煙を一瞬にして吹き飛ばし、周囲の状況が一気に明らかとなる。

「……こんな時まで、二人はラブラブなんだな…」

「なっ…」

「アコード!違うのよ!!」

「…冗談だ」

 砂煙があがり、敵の視界もなくなったと油断したシューに向かって、敵はウォーアンマーを振りかざして攻撃をしかけた。

 それを、見えないながらも空気の流れを感じ取ることで、瞬時に敵の攻撃形態を悟ったサリットがシューに飛び掛かり、敵の攻撃をすんでのところで防いだのだった。

「もう!いつも言っているじゃない!!油断はしないことって…」

 シューを叱りつけるサリットの瞳には、大粒の涙が浮かんでいる。

「ああ…悪かったよ、サリット。それよりも…」

「…そうね、今はあなたのことを叱りつけてる場合じゃないわね…」

“どうしたのだ?もう終いか?”

 母の…いや、今は敵である村長の声が洞窟に木霊する。

「…もう一度だ…シュー!サリット!!行くぞ!!!」

 体制を立て直した俺たち3人は、再度光の巨人兵へ突撃を仕掛けた。

 だが…

“ザシュッ”

“ヒュン…”

「くそっ!またかよ…」

 2回目の突撃を仕掛けた俺たちだったが、1回目と同じようにスマッシュヒットが決まる直前に敵の体は透明化し、俺たちはまたしても敵の反対側へと誘われていた。

“…我が息子ながら、たわいもない…アコード!お前の力はそんなものか!!”

「このままじゃ、俺たち3人、本当にあの巨人野郎にやられちまうぞ!」

「何か、何か手があるはずだ…」

 その時、周囲を見渡していたサリットが言う。

「…ねぇ、あれを見て!!」

「………あれは!!」

 彼女が指差した方向を見ると、光の巨人兵を取り囲むように配置された四方の宝玉から、光の巨人兵に対して魔力が供給されていた。

「こいつの力の源は、あの4つの宝玉だ!」

「…ここは、私の出番みたいね。アコードとシューは、できる限り敵の注意を引き付けて!」

「分かった!」

「任せたぞ!!」

 短曲剣マインゴーシュを手にしたサリットの姿が、視界から遠ざかっていく。

 それを確認した巨人兵が、サリットめがけて攻撃を仕掛けようとした、その時…

「(サラマンダーよ!我、汝に命ずる…)」

「(入口のガーディアンを倒した時と同じだ…言葉が自然に浮かんでくる…ということは…)」

「アコード!どうした?」

「…大丈夫だシュー。それよりも、俺の後ろに避難してくれないか?」

「分かった!」

 シューが後方に退いたのを確認した俺は、頭に浮かんできた詠唱呪文を唱える。

「サラマンダーよ!我、命ずる!!業火を放ち、敵を攪乱せよ!!」

「アコード!まさか!!」

 詠唱と共に光り出した剣は、俺が詠唱を終えると魔法の力で紅蓮に染まっていた。

 その剣を頭上にかざし、俺は叫んだ!

“ファイヤーディスバーン!!”

 次の瞬間、俺の剣から無数の炎柱が解き放たれ、巨人兵の周囲を取り囲み、その行く手を阻んだ。

“シュッ!”

“キーン……ガッシャーン”

 巨人兵の動きが止まると同時にサリットから放たれた短曲剣が宝玉の1つにぶつかり、粉々に砕け散る。

“グッ…グゥオオオオオオ!!”

 同時に巨人兵は苦痛にまみれた叫び声をあげ、その元凶を作り出したサリットに近づこうとする。

 だが…

“ブウォォォォォ!”

「サリットの元へは、行かせない!!」

 俺は身体の底から湧き上がってくる力を剣に注ぎ込み、巨人兵の周囲に張り巡らせた枷の力を更に強化させた。

“グウォォォォォ・・・・”

 サリットに近づこうとした巨人兵に、俺が作り出した炎柱が容赦なく業火を放ち、その行く手を遮る。

“キーン…ガッシャーン”

 そうこうしている間に、サリットは2つの宝玉の破壊に成功していた。

 そして、宝玉が残り1つとなった、その時…

“ヒュゥゥゥン…”

 宝玉から供給されていた魔力が一瞬のうちに消え去り、炎柱に行く手を遮られていた巨人兵も跡形もなく消え去った。

「…終わった、な…」

「ああ」

「…ねぇ、アコード…あれって…」

 サリットが指差す先を見た俺は、思わず叫んだ。

「……母さーーーん!!!」

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