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第1話~幼馴染との再会~

 アルモと別れた俺は、一度フォーレストの城下町まで引き返し、あの宿屋で一夜を明かした後、生家であるフォーレスタ村へと向かっていた。

“パカラッパカラッパカラッ…”

「(俺に魔法の素質があるなんて…母さんからは何も聞いていないけど、実際の所は…)」

 考えても答えの出ない水掛け論に終始しながらも、主人を失ったフォーレスト城で騎馬を拝借した俺は、全速力でフォーレスタ村へと急ぎ、数日かかった(といっても、あの時は修道院でレイスと戦ったり、ガイーラに助けられたりだったので、本来真っ直ぐ村から城へ向かえば徒歩でも3日程度の距離なのだが…)往路を2日で戻ることに成功した。

 村の入口に到着すると、そこには門番としての責務を全うしているシューが立っていた。

「……アコードじゃないか!どうしたんだ?その馬は、確か城の衛兵が使っている城の騎馬のようだけど…」

「シューか!お前が今日の門番で良かったよ…」

「…そう言えば、アルモの姿が見えないけど、どうしたんだ?それに、そのショートソードの紋章……どこかで見たような気が…」

「その辺りも含めて、話したいことがいっぱいあるんだ」

“スタッ”

 騎馬から飛び降り、鬣を撫でてやる俺。

“ブルルルルル…”

「とりあえず、馬舎に向かいながら話そうか?」

「そうだな!」



***



「…てことは、あなたにアルモみたいな魔法の素質があって、それが何なのかを調べに戻ったって訳ね」

 馬舎に向かう途中で勘の鋭いサリットとも合流し、俺は村を出てから今までのいきさつを2人に話した。

「思い出した!!!」

「シュー?何を思い出したの?」

「アコードの腰にある、ショートソードのその紋章だよ」

「??それ…森にある『祭壇の洞窟』の入口にある紋章と同じものだわ…」

「そうなんだよ!それにしても、そのショートソードって、アルモが森を救ってくれた時に、お前がアルモから借りたものだったよな?その時、そんな紋章はついていなかったような気が…」

「(…そうか!俺もどっかで見た紋章だとは思っていたけど…祭壇の洞窟にある紋章だったのか)」

「(…父さんがまだ生きていた頃、一緒に洞窟の前に来た時、紋章のことを聞いても『大人になったら』って言って、教えてくれなかったんだっけ…)」

「…どうした?アコード…」

「いや、小さいときのことを思い出していただけだ。…ショートソードの紋章は、別れ際にアルモからもらったんだ」

「…中央に『CA』って描いてあるようだけど…」

「Crescent Alliance…三日月同盟っていう秘密結社の略称だ」

「三日月同盟…聞いたことないわね」

「ある訳ないさ。村長一族の俺ですら、その存在をアルモから聞いて初めて知ったんだから…」

「その紋章が、この村にある祭壇の洞窟の入口にあるということは…アコード、村に引き返したのは、正解と見て間違いないだろうな!!」

「そうだな!」

 そうこうしているうちに馬舎に到着した俺たちは、馬を馬舎に繋ぐと今度は俺の生家へと急ぐ。

「…そう言えば、俺が旅立ってから、村で何か変わったことはなかったのか?」

「…お前が居なくなって、それまで別々の組織だった自警団が青年団の下についたのと、自警団の団長が俺になったことくらいかな…サリット?」

「シューが団長になったのか!!」

「へへっ。まあね!!」

「ちょっとシュー!!自分のことばかり…城下町からたくさんの人が避難してきて、村長さんの指示で仮設住宅が急ピッチで作られているじゃない!!」

「そうそう。村の人口の半分位の人たちが避難してきたぞ。村長さんから話は聞いているけど、フォーレスト城が教団に制圧されたそうじゃないか?」

「その件と、アコードが旅から引き返した件って、やっぱり…」

「ああ。大いに関係しているさ。俺とアルモのせいで城が制圧された訳じゃないけど…」

 俺は、その理由を話すことを躊躇した。

 なぜなら、その理由はフォーレスト城が『魔法の研究』をしていたからに他ならず、それを2人が知れば、半ば強制的に俺とアルモの戦いに2人を巻き込むことになるからだ。

「…」

「どうしたの…アコード?」

「…いや、何でもない」

「…俺たちにはまだ話せない、という訳か…」

「…すまない。シューの言う通りだ…」

「…分かった。私とシューには、あなたが話せると思うようになったら話して」

「ありがとう。サリット…」

 シューとサリットは、まだこの世界の理を知らない。

 知らない方が幸せということも、この世の中には多くある。

 俺は、アルモと旅立ってそのことがよく分かる気がしていた。

 でも、俺に後悔は微塵もない。

 俺の血に、アルモが進むべき道の痕跡がある以上、俺は知らなければならない。

 俺の血筋に、一体何が隠されているのかを。

 気が付くと、いつの間にか俺たち3人は俺の生家の前にたどり着いていた。

「…さぁ、アコード!」

「…あぁ!!」

“ギィ…”

「ただいま、母さん!!」

 俺は生家のドアを開いた。

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