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第4話~レイスとガイーラ~

 フォーレスト城の謁見の間を後にした俺たち3人は、朝日に照らされる城下町をとぼとぼと歩いていた。

「(…俺を含め、流石に疲れが出ているな…ここは、いったん休憩にすべきだな…)」

「アルモ、それにレイス。提案なんだが、城下町には敵も潜んでいないみたいだし、安全に休める場所で休息をとらないか?」

「…そうね。それがいいかも…」

「…異存ない」

 二人が同意を得ると同時に、周囲を見渡す俺。

「…あそこに宿屋の看板がある。人はいないだろうが、ちょっと間借りしよう」

 無言で頷く二人を確認し、俺たちは宿屋へと向かった。



***



 数分後、俺たち3人は宿屋の中に入ったものの、ワイギヤ軍の侵攻から避難した後だったのだろう、案の定、宿屋の中には人っ子一人居なかった。

「…やはり、人の気配はないな…」

 俺は表示されている宿泊代を確認すると、3人分の代金を懐から取り出し、カウンターの向こう側にそっと置く。

「…無銭宿泊でも誰も咎めないだろうに…アコードは律儀だな…」

「曲がりなりにも、フォーレスタの村長一族だから、な。払うものは払っておかないと…」

「アコードらしいわね」

 くすっと笑うアルモ。あの戦闘後、久々に見る彼女の笑顔に、俺の顔も自然と綻ぶ。

「…よし、ちょっと台所を借りて、私が食事を作るわ!2人には迷惑かけちゃったし…」

「いいのか?あんなことがあって、疲れてるんじゃ…」

「大丈夫よ。こう見えて私、料理大好きなの。いい気晴らしになるわ」

「そういうことなら、私たちは部屋で休ませてもらおう。アコード」

「そうだな…。アルモ、何か手伝うことがあれば呼んでくれ」

「分かったわ」

 話しながら銀の鎧と銀のガーターを身体から外しカウンターの奥にある机に置いたアルモは、奥のキッチンへと消えて行った。

「それじゃ、俺たちも部屋に行こう」

「ああ、そうしよう」

 残された俺とレイスは、2階にある客室に足を運び、それぞれ部屋を選ぶと、中に入った。

“トントントン”

 部屋に入り暫くすると、俺の部屋のドアをノックする音が響いてきた。

「レイスか?」

「…そうだ。ちょっといいか?」

「ああ、鍵はかけていないから、中に入ってくれ」

“キィ………バタン”

「どうしたんだ?」

「ああ、ちょっと、今後のことについて話しておきたい、と思ってな…」

「今後のこと?」

「私は、ラジマが吐き捨てた『主はもう生きていない』という言葉を信じるつもりはない」

「ああ、それはさっき聞いた」

「…そうだったな…そこで私は、私自身で主を探したい、と思っているんだ…」

「えっ!?」

「確かに、旅をするには人数が多いに越したことはない。だが、私の腕はアコードが一番分かっているはずだ。だから、私は私で自分が信じる道を進み、ガイーラ様を探してみたいんだ」

「自分が、信じる道…」

「ガイーラ様は絶対に生きている。私にはそう思えてならない。だから、それを確かめるため、ここからは自分一人でガイーラ様を探していきたい、と思っている」

「レイス、一つ聞いても良いか?」

「何だ!?」

「レイスが、そこまでガイーラのことを信じることができるのは、どうしてなんだ!?」

「…そうだな…それを話すには、まず私が何故ガイーラ様に付き従っていたのか。その理由を話せばならないな…」

 そう言うとレイスは、記憶の海原へと漕ぎ出した…



***



「くそっ!どこに行きやがった!」

「くまなく探せ!あれだけ傷を負わせたんだ。まだ遠くへは行っていないはずだ!」

「(くっ…ここまでか…)」

 ガイーラ様に仕える前のこと。私は「義賊」を名乗り、悪どい商売をしている悪人の邸宅から金銭を巻き上げ、貧しい人々に分け与えるといったことをしていた。

 それは、私自身が捨て子で、盗賊稼業で生計を成り立たせていた育ての両親に育てられたことで、貧しいことに対する惨めな気持ちが分かっていたこと、12歳の頃には育ての両親の盗みを手伝えるほどの盗賊の腕を持っていたことなどから、育ての両親が行方知れずになってからは盗賊の技術で生計を立てつつ、貧しい人々への施しをしていたのだった。

 だが、その日私はフォーレスト城に居を構える悪徳商人の邸宅に足を踏み入れ、施しをするだけの金品を手に入れたものの、物陰に隠れていた警備兵に手傷を負わされ、その邸宅からやっとの思いで出てきたところだった。

 走りながら背後を振り返ると、私と同程度かそれ以上のスピードで私を追う警備兵の姿が目に映る。

「(逃げ切れない…………)」

 そう悟った次の瞬間…

“ドスッ”

「(!?何だ…どうしたんだ…何も見えない…それに、身体の自由が…利かない!?)」

「おいっ!?落ち着け!!落ち着いて、俺に何もかも任せるんだ…」

「!?」

 私は身体の自由が奪われながらも、久々に感じる大きな温もりに心穏やかな気持ちになりながら、言葉の主の提案を受け入れることにした。

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