00 おわりからのはじまり
世界は優しく。
残酷だった。
流れ出るのは最後エンドロール。
映し出されるのは自分の名前。
たくさん流れる文字列。
水野 |彼方《カナタ》
その文字を見つける。
その瞬間、彼方は思い出す。
「金を出せ!」
妹の|深雪《ミユキ》が暴漢にナイフで脅されている。
彼方は大きな声で怒鳴る。
「なにしているの!?」
暴漢はナイフを彼方に向ける。
「なにって?これからこの嬢ちゃんを殺して金を手に入れるんだ!」
「私、お金持ってないよ……」
気の弱い深雪は震えながらそういった。
「0円じゃないだろう?
俺はスライムを殺して6円稼ぐタイプなんだ。
って100人殺せば600円!」
暴漢のテンションが上がる。
「600円のために100人殺すの?」
「いいアイデアだろう?」
暴漢が嬉しそうに笑う。
「そんな命ってのは!」
彼方がそこまでいったとき胸がチクリと痛む。
そして生暖かい感触とともに寒気が走った。
「6円ゲット!」
暴漢は嬉しそうに笑う。
そして深雪の方を見る。
「120円目になるのは誰かな?」
暴漢がナイフを深雪に向ける。
「やめろ……」
彼方が暴漢の腕を掴む。
「ああん?まだ死んでないのか!
お前が死ななきゃ!6円!得れない!だろう!」
暴漢は何度も何度も彼方の体を突き刺す。
「お兄ちゃん!」
深雪が涙声で彼方を呼ぶ。
「大丈夫だから、逃げ――」
彼方はその言葉を最後までいえることなく意識が遠のく。
――ああ、僕は死ぬんだ。
そう思うとすべてがどうでも良くなった。