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第81話

 敵が襲撃してくるとされる一七時まで、あと一五分。

 前線となる基地の外には、アーティナル・レイスが配置され、SAFUを装着した傭兵達は、比較的安全とされる後方――基地敷地内にいる。

 そして非戦闘員である澄人は、やはり倉庫にいた。頑丈だからというのもあるが、戦闘で傷ついたアーティナル・レイスを、すぐに処置することができるからだ。

 しかし、敵がくる以上、一〇〇パーセント安全とは言い切れない。ナオは武装を装備し、倉庫の外で警戒にあたることにした。

「澄人はここにいてください。私は万が一の場合に備えて、倉庫の外にいます」
「ナオ。その……僕も一緒に戦うよ。SAFUをつければ、銃を撃つことくらいはできると思うし……」
「何を言っているんですか! あなたは命を狙われている身なのですよ!? それに、仮に戦闘に参加したとして、澄人は銃の引き金を引けるのですか?」
「それは、ナオが前に少し教えてくれたし……」
「そうではありません。敵のアーティナル・レイスを撃てるのかと、聞いているのです」
「敵のアーティナル・レイスを撃つ……?」
「話にも出ていたように、敵にもアーティナル・レイスがいます。それを前にした時、澄人はためらわず銃を撃てるのですか?」
「…………」

 澄人は口をつぐみ、視線を落とした。

「撃てないはずです。ここを襲いにくる敵のアーティナル・レイスは、人間に命令されているだけで、何の罪もありません。それに、あなたにとってアーティナル・レイスは、単なる機械ではない」
「そう……だけど……」

 澄人の顔は、不安に満ちていた。はるがいなくなった、あの日と同じように。

 そう。はるがいなくなった時の状況と、今の状況が似ているのだ。澄人を一人残していく、この状況が。

 それでも、澄人を外に出すわけにはいかない。

「澄人。私達の助けになりたいというあなたの気持ちは、とてもありがたいです。しかし、あなたはアーティナル・レイスを救うためにここにきたのであって、殺すためではありません。そうでしょう? 姉さんも、澄人がアーティナル・レイスを傷つけて殺す姿なんて、見たくないと思います。ですから、あなたはここにいてください。大丈夫。わたしは、必ずあなたのもとに戻ってきますから」
「……わかった。おとなしくここにいるよ」
「倉庫の近くからなるべく離れないようにしますが、もし何かあったら、すぐにウェアラブル端末で呼んでください」
「うん。気をつけてね」

 ナオは倉庫の外に出ると、出入り口をしっかりと閉めると、他の先行量産型達に通信を送った。

「(みんな、聞こえますか?)」
「(聞こえます、ナオ)」
「(ボク達の方も、大丈夫です)」
「(問題なく聞こえる)」

 全員から返事が返ってきた。

「(前もって言った通り、最初の襲撃では、敵の戦力や出方を見て、可能な限りの情報収集を行ってください。それによって、敵の目的が判明すれば、澄人が狙われる理由も判明し、二度目の襲撃に対して、有利な備えができるかもしれません)」
「(そうしたいものですが、その余裕があるかどうか……)」

 04が不安混じりで言った。

 六翼のアーティナル・レイス――ルシーナの戦闘能力の高さは、映像で見ただけでもひしひしと伝わってくるほどのものだった。澄人のおかげで万全に近い状態になったとはいえ、渡り合えるかどうか――全員でかかっても、倒せるかどうか――正直わからない。

「(……それでもです。澄人のことは、必ず……絶対に守らなければなりません)」

 ナオがそう言うと、通信の向こうで全員が頷いた。そして、ナオが夕暮れになりかけた空に目を向けた時。

「敵襲――!!」

 警報の音と傭兵達の声が響いた。

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