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第三章 『温かい気持ち』と、恐怖の『お遊び』

 兵士は、そんな暎蓮をからかうのをやめると、楽しげに笑い、しかし、言った。
「しかし、本当ですね。姫様は昔と比べて、ずいぶんと明るくなられた。それもこれも、扇王様と御結婚され、白点様がいらしてくださったからこそ。わたくしどもは、本当に良かったと、思っているのですよ」
 彪は、悟った。
(この、『雲天宮』の警備の方々は、きっとみんな、お姫様のことが、まるで自分の子供みたいに、かわいくて仕方がないんだ……)
 彪の心は、温かくなった。
 彼は、言った。
「お姫様のことは、俺……私も、出来る限りお護りします。……扇様……じゃなくて、扇王様の補助として」
 それを聞いた兵士は、にっこりと笑って、言った。
「ありがとうございます、白点様。姫様を、これからもよろしくお願いいたします」
 彪は、しっかりとうなずいた。
「はい」
 暎蓮が、彼の手をもう一度握る。その顔が、うれしそうだ。
「……それでは、私たちは、そろそろまいります。……もう、彪様に、私のことで、妙なことをおっしゃらないでくださいね!」
 暎蓮は、文句を言っているようだが、それにしてはご機嫌な顔で、彪の手を引き、兵士に一礼して、彼を連れて門内に入っていった。
 彪が門内に進みながら、兵士を振り向くと、彼も振り返って、優しく彪に向かって微笑んでいた。……お互い、気持ちが通じ合ったかのように、うなずき合う。
 彪は、暎蓮が皆から愛されていることを感じて、再び、うれしさで心が満ちていた。

「……彪様、今日は、なにをして遊びましょうか」
「えっ!?」
 『応接の間』内で、卓をはさんで向かい合って座し、暎蓮は、例によって、彼のために茶を淹れながら、言うのだった。
「あ、遊び?」
「はい。今日は、ご一緒に、午後のお茶を楽しみながら、『お遊び』をしようと思っていたのですよ」
 暎蓮が、急須のふたを押さえながら、楽しげに言う。
「お、お姫様。……今日は、『作戦会議』だって、言ってなかった?」
 どもる彪の言葉に、暎蓮は、そこで初めて、我に返ったようだった。顔を赤らめる。
「あら」
 しかし、気を取り直したように、茶を淹れつづけながら、再び、彼女は、言う。
「ですが、まだお時間は充分にあります。もちろん、『作戦会議』も大事ですが、それは楽しく遊んでからでも……」
 彪は脱力した。
「お姫様……」
 暎蓮は、その彪の様子を見て、ふくれっ面になった。
「少しくらい、私と遊ぶお時間を作ってくださっても、よいではないですか。……『作戦会議』は、あとで、ちゃんと、やりますから!」
 ふくれていてもかわいらしい暎蓮の姿に、彪は、……負けた。
 一つ、ため息をつくと、彼は暎蓮に向かって、笑ってみせた。
「なにをして遊ぶ?……お姫様」
 暎蓮の表情が、再び輝いた。
「実は、彪様とご一緒に遊ぼうと思って、以前からずっと、紙で『着せ替え人形』と、そのお衣装を作っておいたのです!」
「……き、『着せ替え人形』?」

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