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第二章 『お姫様』の『お気入り』

「そうなのです!……彪様は、とても、かわいらしいでしょう?まるで、上等なお人形さんのようだと、思われませんか?」
 そのあまりな言われように、愕然とする彪を尻目に、暎蓮は生き生きと言う。
「彪様は、見た目も愛らしいですが、それだけではなく、とても頼りになるお方なのですよ。私の知らないことをたくさんご存知で、いろいろと教えてくださるのです。……確かに、そうです。普通の『お人形遊び』より、彪様と過ごすほうが、ずっと楽しいのです!」
「それは、よかった」
 兵士は、それを聞いて、ついに、破顔した。
「山緑殿もおっしゃっておいででしたよ、白点様が宮廷にいらしてから、姫様はお元気になられたと。……しかし、姫様」
 兵士は、小さな声で、言った。
「くれぐれも、扇王様がやきもちを焼かれない程度になさいませ。扇王様は、こと、姫様のことになると、理性が吹き飛ぶようですから。ご兄弟分であられる、白点様がお相手では、なおさら、そのお立場がないでしょうからねえ……」
「あら」
 暎蓮は、それを聞いて、真っ赤な顔をした。
「わ、私、そんなつもりでは……」
「そうでなければ困りますよ。……白点様が」
 兵士はそう言って、笑いながら、暎蓮の後ろで、硬直したまま顔を真っ赤にしている彪に向けて、言った。
「……白点様。姫様は、これまで世間と隔絶されていた分、まだお心が幼くていらっしゃいます。どうか、あなた様がお持ちのお知恵で、姫様をお護りして差し上げて下さい。……扇王様とは別の面から」
「は、はい……」
 彪は、なんとか答えた。その彼に、兵士は、さらに言う。
「当分の間は、姫様のお好きな、おままごとやおはじき遊び、貝合わせなどにさんざんおつきあいさせられることになるでしょうが、どうか、御辛抱ください」
「ま、ままごと……」
 さすがに、彪が顔を引きつらせる。……暎蓮はさらに顔を真っ赤にして、兵士に向かって、叫ぶようにして言った。
「……もう!彪様にそんなことばかりおっしゃるなんて、お人が悪すぎます!」
 暎蓮は、頬を赤くしたまま、まじめな顔になり、言った。
「私は、もう、『人妻』です。そんな、『子供』ではありません」
「おや。お人形遊びからご卒業なさる御覚悟が、やっとできましたか?」
 兵士の言葉に、暎蓮はあわてて、
「……今後は、お人形で遊ぶのは、彪様と扇賢様とだけにします」
「それはそれは。扇王様は、姫様と遊ぶのだけはお苦手なご様子で、さんざん逃げ回っていらっしゃるようですから。……となると、残された白点様も、大変なことになりますなあ」
「お願いです、私から、彪様だけは、取り上げないでください!」
 暎蓮が、真剣に懇願する。その様子を見て、兵士は大笑いした。そして、彪に向けて、
「……白点様。と、いうわけですから、今後とも、姫様のお相手をよろしくお願いいたします」
 と言った。彪が、真っ赤な顔で、どうにか、
「……は、はい……」
 と、返事をする。
 暎蓮がそれを聞いて、ほっと息をついた。

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