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4話 もしこれがマネキンだったら、僕はもう服屋さんに行けない。

 本当に遺体が転がっていた。
 どう見ても、本物の遺体だ。
 真紅に染まった後頭部。
 顔中に付いている刺し傷。
 ずたずたに切り刻まれたトレーナーとズボン。
 床にどっぷりと広がっている血の海。
 全てが本物だ。
 もしこれがマネキンだったら、僕はもう服屋さんに行けない。
 こんなおぞましいマネキンが置いてある服屋さんに行くくらいなら、裸で生きていく方がマシだ。
 恐怖で体が震え出す。
 瞳孔が開いて、過呼吸になってくる。
 僕は堪らず顔を背けた。
「警部さんのおっしゃっていた通りですね……」
「これは確かに酷いわね……」
 ユリとマリは玄関に立って遺体を見下ろしていた。
 さすがに、ふたりは見慣れているらしい。
 顔こそ歪めているものの、悲鳴を上げたりはしない。
 腰を抜かして尻餅を着いたりもしない。
「おっちゃん、死亡推定時刻は?」
 マリが振り返って海堂警部に質問する。
 海堂警部は腰の後ろで両手を組みながら答える。
「死亡推定時刻は8時から9時頃だね」
「凶器は何かしら?」
「おそらく鋭利な刃物だね」
「鋭利な刃物ね。ナイフか包丁かしら? ユリは何だと思う?」
「そうだね。斧とか刀かな?」
ユリは左手の人差し指を顎に当てて小首を傾げる。
「犯人が自前で用意したのか、それともこの家の物を使ったのか。どっちかしら?」
「台所にあったナイフと包丁からは被害者の指紋しか検出されなかったよ。もちろん、ルミノール反応も出なかったよ」
「金品は取られてないの?」
「取られてないよ。財布も通帳もクレジットカードも金目の物は一切ね」
「てことは、強盗じゃないのかしら?」 
「盗む時間がなくて逃げていった可能性も考えられるけどね」
「もしかしてさ、あのお父さんが殺したんじゃない?」
「マリ、滅多なことを言うものじゃないよ」
「でもさ、ユリ。あの人、言ってたじゃない? 殺してやりたいって」
ユリは左手の人差し指を唇に当てて咎めたけど、マリは声を潜めて反論した。
そういえば、タカヒロさんはテレビのインタビューでそう語っていた。
 声を震わせながら、激しい憎悪を剥き出しにしながら。
「金品は取られてないしさ。やっぱ復讐じゃないの?」
「確かにマリ君の言うことも分かるけどね。この異様な遺体を見る限り、とてもただの殺人とは思えないよ」
「それかキョウさんじゃない? サクラさんの旦那さんの」
「うむ、彼にも動機はあるか」
 一理あると思ったのか、海堂警部は思案顔で腕組みをする。
 確かに事件が起きたタイミングを考えたら、タカヒロさんとキョウさんは有力な容疑者だ。
 僕だって馬鹿じゃないから、それくらいは分かる。
「アリバイはどうなってんの?」
「いや、まだ二人とも連絡は取ってないよ」
「目撃証言は? 逃走した犯人を見た人はいないの?」
「それもこれからだね」
「じゃあ、まずは聞き込み。その後に事情聴取と行きましょう」

「僕、犯人を見たんですよ……」
 男性の口から飛び出したのは衝撃発言だった。
 年齢は20代か30代だろうか。
 身長は僕と同じくらい。小柄だ。痩せ型で色白だ。
 玄関の明かりに照らされた顔は酷く蒼ざめている。
「本当ですか? 詳しいお話を聞かせていただけますか?」
「男の悲鳴が聞こえたから外に出たんです。その時、見たんですよ。死神の格好をした人が走っていくのを。黒装束を着ていて顔にドクロのお面を被っていたんですよ……」
 目撃した時の恐怖を思い返すように、顔を伏せて唇を噛み締める。
 僕は頭の中で思い浮かべてみる。
 顔をドクロのお面で覆い、黒装束を身に纏った死神が走るその姿を。
 おぞましさを感じて背中に悪寒が走る。
「何時頃だったか覚えてますか?」
「9時過ぎでしたね。映画が始まってすぐだったので」
「9時か」
「死亡推定時刻に近いですね」
「てことは、やっぱその死神が犯人と見て間違いないわね」
 海堂警部は険しい顔で腕を組む。
 ユリは海堂警部の険しい横顔を見つめていた。
 マリは両手を腰に回しながら俯いていた。
 そういえば、さっき海堂警部が話していた。
 死亡推定時刻は午後8時から9時だと。
 犯人は死神か。
「ドクロのお面を被っていたということは素顔は見てないのですね?」
「見てませんよ」
「声も聞いてませんか?」
「聞いてないですね。男の悲鳴だけで」
「その声は被害者の声で間違いないですか?」
「間違いないですよ。あの人の声なら何度か聞いた事があるので」
「身長はどれくらいでした?」
「いえ、そこまでは。遠くから一瞬だけ見ただけなので」
「靴も見えませんでしたか?」
「見てませんね。何しろ、一瞬の出来事だったので」
「大変、参考になりましたよ。ありがとうございました」
海堂警部は敬礼をしながら礼を述べた。
 右手を下ろした時、マリが海堂警部を見上げながら問い掛けた。
「さあ、次は事情聴取ね。どっちから行くの?」
「ここからだとキョウさんの方が近いね。車だと1時間くらいだよ」
 海堂警部に釣られて夜空を見上げる。
 三日月が民家の屋根の向こうに、ぼんやりと浮かんでいた。
 今日は雲が少なくて、星が綺麗に見える。
「タカヒロさんの方は?」
「そっちは1時間半はかかるよ」
「じゃあ、キョウさんの方を先にしましょう」

 キョウさんの家はごく普通の2階建ての一軒家だった。
 白い車が庇の下に駐車してあり、赤い自転車が庭の奥に転がっている。
「あの自転車、サクラさんのかな?」
「かもしれないわね」
 ユリもマリも気になっているらしく、赤い自転車へ視線を送っている。
 海堂警部がインターフォンを押してから数秒後、扉は静かに開かれた。
 隙間から様子を伺うように、あの端正な顔が現れる。
「野暮遅くにすいません。警察の者ですがね」
「どうしたんですか?」
「森嶋が殺されたんですよ」
「森嶋? あの森嶋ですか?」
 初耳だという様子で素っ頓狂な声を上げる。これが演技なのだろうか?
「ええ、森嶋マサトです。ですから、お話を伺わせていただきたいのですよ」
「あの、その前にこちらの方々は?」
 右手をかざして、海堂警部の肩越しに僕らへ視線を送る。
「白鳥ユリです。この子が双子の妹のマリ。この子が助手のユウキ君です」
 ユリは自己紹介をして振り返る。左手をかざして、マリと僕も紹介してくれた。
「助手といいますと?」
「彼女達は探偵なんですよ。我々も頭を抱えるような難事件が起こった時、二人に力を貸して貰っているのですよ」
「へえ、そうなんですか」
 海堂警部から話を聞かされても、にわかに信じ難いという顔でふたりを見比べている。
 無理もない。僕だって面接で初めて対面した時、この子達が探偵なのかと驚かされたものだ。
「上がらせていただいてもよろしいですか?」
「はい。どうぞ」
 玄関で靴を脱いでいたら、キョウさんの左手に目が留まった。
 銀色の指輪が左手の薬指で光っていた。サクラさんとの結婚指輪だろう。
 リビングに通された僕らはソファーに腰掛け、キョウさんと向かい合っていた。
 不穏な空気が流れる中、最初に口を開いたのはユリだった。
「キョウさん、背が高いんですね。身長はいくつですか?」
「身長は185センチですね」
「子供の頃から高かったんですか?」
「そうですね。中学の頃にはもう170はありましたよ」
「背の順も後ろの方だったんですか?」
「ええ、3年間ずっと一番後ろでしたね」
「185なら私より大きいね」
「警部さん、いくつでしたっけ?」
「180センチちょうどだよ」
「ところで、警部さん。サクラの実家へはもう行かれたんですか?」
「いいえ、まだですよ」
「当然、お義父さんのことも疑ってらっしゃるんでしょうね。動機から考えれば当然ですよね。もし立場が逆だったら、僕だって真っ先に疑惑をいだきますよ。僕自身とお義父さんにね」
 キョウさんが悟りきった表情で語る一方、海堂警部は目を走らせて部屋を観察していた。
 何か手掛かりになる物はないか探しているようだ。
「どうされたんですか?」
「何がですか?」
「いえ、さっきからキョロキョロしてらっしゃるので。もしかして、凶器でも探してらっしゃるのですか?」
「いえ、そういう訳ではないのですがね」
「まあ、あんな狭い場所には入らないでしょうけどね」
 キョウさんは収納ケースを指差してソファーに座り直した。
 両手を広げながら、余裕の笑みさえ披露する。
「何でも聞いてくださいよ。何でも素直にお答えしますから」
「では、遠慮無く質問させていただきます。午後8時から9時の間はどこで何をされてましたか?」
「アリバイですか。独りで家にいましたよ。今は独り暮らしですからね」
 キョウさんが何気なく口にしたその言葉は僕の胸を抉った。
 そうだ。サクラさんが殺されるまでは二人で住んでいたのだから。
「家から一歩も出てませんか?」
「出てませんよ」
「それを証明できますか?」
「できませんよ、そんなこと」
 苦笑しながら首を横に振る。
 淡々と受け答えをするその態度には余裕が感じられる。
 これはやましいことがないからなのか? 
 それとも、この冷静沈着な態度も演技なのか?
「キョウさん、実は現場から逃走した不審人物がいるんですよ。この人物が犯人であると私は見ているのですがね。その人物は死神の格好をしていたらしいんですよ」
「死神ですか」
 興味を引かれたのか、背中を丸めて前のめりになる。
 膝の間で両手を組みながら、海堂警部の表情を覗き込む。
「黒装束を身に纏い、ドクロの仮面を付けていたそうなんですがね」
「へえ、変わった犯人ですね。まあ、確かにその格好をすれば素顔は隠せるでしょうけどね」
「あの裁判の日以降、タカヒロさんとお話はされましたか?」
「もちろん、電話で話はしましたよ」
「何か変わったことをおっしゃってませんでしたか?」
「当然ですが、悔しがってましたよ。もちろん、それは僕も同じですけどね」
 顔を伏せて、深い溜め息を零す。これはさすがに演技ではなさそうだ。
「その電話以外では連絡を取り合いましたか?」
「いえ、電話だけですね」
「メールもしてませんか? 直接、会ってもいませんか?」
「ええ、そうですよ」
「正直な所、キョウさんはどう思われますか? あの5人の男達、彼らがサクラさんを殺害した犯人だと思ってらっしゃるんですか?」
 海堂警部は大きな背中を丸めて膝の上に両手を置いた。
 鋭い眼光でキョウさんの顔を窺っている。
 単刀直入な質問に動揺したのか、キョウさんの目の色が変わった。
 俯いてから、膝の間で組んだ両手を見下ろす。
「正直に言うとそう思ってます。確かに、裁判では証拠不十分で無罪になりました。でも、だからといって彼らが事件と無関係だとは思えませんよ。こんなことを言ったら、まずいですか?」
答えないと思いきや、慎重に言葉を選ぶように語ってくれた。
 最後に顔を上げて、海堂警部に問い掛ける。
「いいえ、全く疑ってないとお答えになったら、かえって怪しんでいた所ですよ。警察の人間としてそれこそこんなことを言ってはいけないのかもしれませんがね。彼らがあの事件に関わっている可能性は高いですよ。裁判で無罪になったとはいえ、限りなく黒に近い灰色だった。私はそんな印象を受けましたよ」
「確かに、僕はあいつらを疑っています。けれど、だからといって殺したりはしませんよ。それに、まだサクラのことで殺されたと決まった訳ではないのですよね?」
「ええ、おっしゃる通りです」
 海堂警部が首を縦に振ると、キョウさんは背筋を伸ばしてソファーに体を預けた。
「だから、これだけは信じてください。僕は犯人ではありません」
キョウさんは胸に手を当てながら、きっぱりとした声で容疑を否認した。

 向かいのソファーに座るタカヒロさんは見るからに落ち着きがなかった。
 結婚指輪を嵌めた左手が膝の上で震えている。
 この人が森嶋を殺したのか? 
 確かに殺してやりたいとは言っていたけど、本当に殺してしまったのか? 
 この人が殺人者かもしれないと思うと体が震えた。
 今にも襲いかかってくるのではないかと、膝の上で左右の手を握る。
 疑惑の視線を注いでいると、ユリが膝の上で両手を重ねて喋り出した。
「タカヒロさんも背が高いんですね。身長っていくつですか?」
「身長かい? 確か、173くらいだよ」
「黒がお好きなんですか?」
 ユリの視線は黒いニットキャップに注がれていた。
 ソファーに挟まれたテーブルに黒いニットキャップがある。
「そうだね。若い頃から黒は好きな色だよ」
タカヒロさんはニットキャップへ視線を注ぎながら頷く。
 それから海堂警部へ顔を向ける。
「それで警部さん。お話というのはなんですか?」
「実はですね、森嶋が殺されたんですよ」
「殺された……? どこでですか……?」
 今、初めて聞いたかのように目を見開く。
 本当に今、初めて聞いたのだろうか?
「自宅の玄関前です。血塗れになって倒れていましたよ」
「そうですか。森嶋が……」
 愕然とした顔で俯きながら息を吐く。
 これが演技なら大した役者だ。
 アカデミー賞でもグラミー賞でも、なんでも受賞してしまえばいい。
「タカヒロさん、今晩はどちらにいらっしゃいました?」
「夜はずっと家にいましたけど」
「それを証明できる方は?」
「妻が一緒にいましたよ。なあ?」
タカヒロさんは同意を求めて、隣に座るカズミさんへ顔を向ける。
「はい。夜はどこへも出掛けてませんよ」
 カズミさんはタカヒロさんと顔を合わせてから、海堂警部に向かって頷いた。
「誰か訪ねてきたりしませんでしたか?」
「いいえ、誰も来ませんでしたよ」
「ということは証人は奥様だけという訳ですね?」
「まあ、そうですけど」
 ばつが悪そうに頷いて認める。
 証人がいないということは二人が口裏を合わせている可能性も否定できない訳か。
「ところで裁判の後、キョウさんと電話で話をされたそうですね。何か変わった様子は感じませんでしたか?」
「もちろん、無念さを滲ませていましたよ。私もキョウ君も有罪判決が出ると信じていたので」
「それ以降は連絡を取ってませんか?」
「取ってませんよ。やっぱり、私を疑ってるんですよね?」
「いえ、参考までにお話を伺わせていただいているだけですよ」
「仕方ないですよね。あんなことを言ってしまったし。あの時はつい感情的になって言ってしまいましたけどね」
 あの発言を後悔するように、タカヒロさんは顔を伏せる。
 寂しそうな顔で静かに笑う。
 本当だろうか? この言葉を信じていいのか?
「とにかく私じゃありません。それだけは信じてください」
 タカヒロさんも首を横に振って容疑を否認した。
 海堂警部が口を噤んで会話が途切れた。
 リビングに流れる気詰まりな沈黙を破ったのは電話のベルだった。
 僕らは一斉に台上の電話機へ視線を送る。
「いいですか?」
「ええ、どうぞ」
 海堂警部の許可を得るなり、カズミさんは立ち上がって電話へ歩いていった。
 そっと左手を伸ばして受話器を取る。
「はい。吉野ですけど」
「高田さんですか?」
 おばさんの声が受話器から漏れ聞こえてきた。
 高田さん? 間違い電話だろうか?
「いえ、吉野ですよ」
「あれ? 高田さんのお宅じゃないですか?」
「違いますよ。うちは吉野ですよ」
「また間違えちゃった。ごめんなさいね」
 カズミさんが受話器を置いて戻ってきた。
 ソファーに座り、タカヒロさんに苦笑を向けながら報告する。
「間違い電話でした。同じ人です」
「またか。よく確かめてから掛けて欲しいな」
 タカヒロさんも苦笑いと共に肩を揺らす。
 興味を持ったのか、海堂警部は目を丸くしながら尋ねる。
「タカヒロさん、またかというと、そんなに頻繁に掛かってくるのですか?」
「いえ、今日2回目なんですよ。その時は私が出たんですけどね」
 やっぱり、ただの間違い電話だったか。
 何か事件に関係のある電話かと思ったから、僕は拍子抜けしてしまった。

「昨夜9時頃、都内で殺人事件がありました」
 背広姿の男性キャスターがカメラに向かって喋る。
 画面が切り替わり、森嶋の自宅が映し出された。
 右端に小さく表示された森嶋の顔写真。
「殺害されたのは森嶋マサトさん、26歳。先日、高崎サクラさん殺害事件の裁判で無罪判決が言い渡された5人の被告。その中のひとりでした。警察の調べによると、現場から逃走した不審人物がいたそうです。その人物は黒装束を身に纏い、顔にドクロの仮面という死神のような格好をしていたとのことです。警察ではこの人物が事件に関与しているものと見て、捜査を進めています」
 昼間よりも音量を絞ったテレビから、トップニュースで事件の詳細が伝えられている。
 僕らはソファーの上で食い入るように画面を見つめていた。
 目を閉じなくても、森嶋の死に顔が浮かぶ。
 それ程までに瞼に焼き付いている。
 事務室の壁掛け時計を見上げると、長針と短針が重なっていた。
 午前0時過ぎだ。
「死神ね。あの人、そんなコスプレ趣味があるのかしら?」
「別にそういう訳じゃないんじゃない? 顔や体格を隠せるからかもしれないよ」
「でも、あのお父さんの態度は怪しいわよね」
「かなり挙動不審だったね。それに比べてキョウさんは冷静だったよね」
「あの人、ほんとポーカーフェイスよね」
 ユリもマリも向かいのソファーに座って、真剣な顔でテレビに見入っていた。
 ユリは膝の上で両手を重ねていて、マリは背中を曲げながら首を伸ばしている。
 僕はスリッパを履いた足を見つめながら思考を巡らす。
 キョウさんは沈着冷静。タカヒロさんは挙動不審。
 確かに、ふたりの態度は対称的だった。
 キョウさんのあの態度が演技だとは思えない。そうなると、やっぱり……。
「やっぱり、タカヒロさんが犯人なのかな?」
「まだ断定するのは早いよ。第三の人物が犯人って可能性もあるからね」
「そうね。森嶋に怨みを持ってるやつなんて他にもいるだろうし」
 ユリは首を横に振って慎重な姿勢を示した。
 マリは眉間に皺を寄せながら腕組みをする。
 第三の人物か。確かにその可能性もある。
「でも、もしこれがお父さんかキョウさんによる復讐だとしたらよ。まだ事件は続くってことよね」
 マリの言う通りだ。
 被告だった人物は5人、その中のひとりが殺された。
 残るは4人。
 もしこれが死神の復讐劇なら、5人全員を皆殺しにするまで事件は続くはずだ。
 これから第二の殺人事件が起きるのだろうか。
 連続殺人事件へと発展してしまうのだろうか。
 もしかして、密室殺人や見立て殺人まで起きるのだろうか。
 いちいち密室にしないで欲しいし、いちいち見立てないで欲しい。
 この事件だけで終わればいいけどな。
 だけど、この事件だけじゃ終わらないような気がする。
 どうせ、起きるんだろうな。
 第二の殺人事件が起きるんだろうな。

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