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第77話

「岩崎司令……!」

 04と06から話を聞いて、迎撃のための作戦を一緒に考えるために来てくれたのか? と、ナオを含めた倉庫の皆が――たぶん澄人も――淡い期待を抱く。が、04と06はそうではないと表情を曇らせた。

「貴様だな? ネイが敵と話しているところを直接聞いたというのは」
「はい、そうですが……?」

 岩崎がナオに聞いて確認すると、兵達は銃に手をやり、警戒する素振りを見せる。

「岩崎司令、何のつもりですか!」

 これがネイの正体を突き止めた者に対する礼儀なのかと、澄人は足を一歩前に出した。が――

「動くな!」

 岩崎の声とともに、銃口が澄人とナオ達に向けられ、体を固まらせた。

「そのまま、こちらが今から聞く質問に答えろ」

 岩崎はナオに険しい目を向けて聞く。

「ネイをやったのは、貴様か?」
「やった……というのは?」

 何のことかわからないとナオが僅かに首をかしげると、岩崎は続きを話す。

「貴様が映像を記録した時刻から、約一時間後に、機能停止しているネイが発見された」
「なんだって!?」

 澄人の声とともに、ナオ達は騒然となる。

「先ほどまで、この倉庫にいる以外のアーティナル・レイスのメモリと、監視カメラを調べたが、特に怪しい点は見つからなかった。兵達の聴取もとったが、全員アリバイがある。となれば、ネイを機能停止させた可能性がもっとも高いのは、貴様だ」
「待ってください! ナオがそんなことをするわけがありません」
「ふん。主人の命令なしに、勝手に基地内をウロチョロしたアーティナル・レイスを信じろと言われて、誰が信じる?」
「ネイ――アオヒメの基本性能は、先行量産型よりも上なのはご存知のはずです。先行量産型が一人で相手をするには、リスクが高い。それに、仮にネイを機能停止できる状況だったとしても、捕らえて情報を引き出す方法を彼女ならとります。だいたい、メモリを確認すればすぐわかることです。ナオが隠すメリットは何もありません。それに今は、襲撃してくる敵に対する迎撃の準備をするのが先決じゃないんですか?」
「お前の言う通りではある。だがネイを機能停止させた犯人を探すことも、優先せねばならないのだ」
「なぜですか? 理由を教えてください」
「詳しくは言えんが……ネイは軍上層部から、ある重要な命令を受けて、ここに派遣されたアーティナル・レイスなのだ。それが機能停止した今、速やかに調査し、原因を突き止め、敵と内通していたことも含めて報告する必要がある」
「軍上層部の命令……?」

 軍上層部といえば、久重重工の者。そこの命令による強制力は、通常よりも高い。それを無視して敵と内通することなど、あり得ないと考えていい。

「……わかりました。では、ネイの体をここに持ってきてください。僕が犯人を暴きます」
「それはできん。基地外のからきた人間に、ネイを調査させるなど――」
「心配なら、監視でも何でもつけてくれて結構です。責任を取るのが嫌だって言うのなら、僕が勝手にやったということにすればいい。今は僕にネイを調べさせて情報を得て、報告を早く済ませた方が、あなた方にとってはいいはずです。迎撃の準備に時間を回せますし、もしかしたら敵の情報も得ることができるかもしれません。生き残れる確率を上げることができるかもしれないんですよ? そのメリットを、あなた達は捨てるんですか?」
「っ…………」

 岩崎は考えるように口を結び、周りの兵達も顔を見合わせたり、中には銃にかけていた手を退けたりする者もいた。

「……わかった。おい、ネイの体をここに持ってこい」
「了解」

 岩崎に命令された数名の兵達は、走って倉庫から出ていった。

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