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212話 魔王侵攻の真実

 そして、あたし達はアルフォートによって様々な情報を得る事ができた。
 まず、数百年前の魔王の侵攻。経緯は定かじゃないんだけど、ある日突然魔界と人間界を繋ぐ穴が出現した。
 魔界と比べて人間界は豊かだった。それを知った魔王は、人間界を制圧すべく侵攻した。そして、それに対抗するために当時の人達は異界の勇者を召喚し、勇者は魔王を倒し魔王を封印した。

「ん? それは違う。吾輩異議を申し立てる。たしかに魔王様は当時の勇者と戦い深手を負った。だが魔王様は封印などされていなかったぞ? あれは深手を負って魔界に一時撤退した際に、勇者とそのパーティが魔界と人間界を繋ぐ穴を封印したのだ。魔王様も当時の事を語られる際は随分悔しがっておった」

 何とここで衝撃の事実が判明! 
 封印していたのは魔王じゃなくて通路だけって事?

「それにな、数百年前に痛い目に遭って魔界に逃げ帰った連中はいざ知らず、吾輩のように当時を知らぬ魔人は、そこまで人間を敵視している訳でもない。魔人が全て好戦的という印象を持っているようだが、それも違う。自ら人間世界へと攻め込み大暴れした挙句に、しっぺ返しを喰らい逃げ帰ったのだから、それは魔王様の自業自得という者すらおるのだ」

 そもそも、なぜ人間の世界に攻め入ろうとしてるんだろ? 魔界とのゲート? 通路? が開くまではちゃんと住み分けが済んでいた。

「さっきも言ったが、人間の世界に比べると、魔界の環境は厳しいのだ。一度人間の世界の豊かさを知ってしまった魔王様は、手に入れたくなったのであろうな。しかも、力こそ正義の気風が魔人にはある。魔人に比べて人間は脆いのだそうだな。なれば、力で奪うのも魔人の感覚としては間違ったものではない」

 ふんふん。隣の芝は青く見えるってヤツだね! で、隣の人が弱者だから、芝生を奪ってやろうと。
 ……全然共感できんわーっ!

「だが、吾輩が集めた情報は修正せねばならぬ。人間は脆弱ではないではないか。少なくとも吾輩、魔人の中でも強者の部類に入ると言うのに完敗」
「あー、アルは人間と接触した事は?」
「アル?」
「うん。アルフォートって長くて面倒」
「そうか。長いか。物事を効率的に変化させるのは吾輩歓迎だ。以後アルと呼ぶがよい。で、人間と接触した経験があるかどうか、だったか?」
「うん」
「いや、今回が初めてだぞ? 正直舐めていた。吾輩反省」

(初めてがシルトでは人間の評価メジャーがおかしい事になってしまうね?)
(ボクはこの魔人にちょっと同情するかなー?)
(この魔人の認識が間違ってるんじゃなくてシルトの存在が間違ってると俺は思う)
(真面目に思考するレンも素敵ですー)
(フォートレスのみんなの視線が魔人に同情的なのはおかしいと思うぞ? 私から見ればシルトもシルト以外のメンバーも大して変わらん)
(どうしてあんなにあっさり馴染んでるんだろうね、シルトちゃんは。やっぱり王になる器って事かねぇ)
(や、ヤバい! あの魔人、凄く可愛い! 僕、どうしちゃったんだろう?)

『……というのが、順にメッサー、ラーヴァ、レン、ヒメ、アイン、セラフ、シャオロンの心の声です』

 うん、ありがとうアイギス。本当に、本っ当に言いたい事はあるんだけど、今は置いておこう。

「アル、この先の魔王軍はどうなってるの?」

 今欲しいのは魔王軍の情報。アルなら詳しく知ってると思うんだけど。

「うむ。ここまで来たという事は、既に四天王は二人まで倒しているのだろう? 本来なら、この先帝都まで四天王は配置されてはいないはずだが、帝都に招聘されている可能性はある」

 それじゃあ帝都では、四天王の残り一人と魔王を相手取って戦う可能性があるのね……

「最後の四天王はガチガチの戦闘脳の男だ。侮れぬぞ? しかも、帝都には魔人の中でも精鋭が揃っておる」

 ピエールやシ・バーイのような、搦め手を使ってくるタイプじゃないのね?

「むしろ我々とは相性が良さそうじゃないか?」

 そうね。メッサーさんが言う通り、ただの力自慢が相手ならそんなに怖くない気がするなぁ。

「まあ、吾輩を完封するような人間だ。勝利の目もあろうぞ。だが魔王様は……」
「アルは魔王の強さを知ってるの?」
「うむ。どういう絡繰りかは知らぬ。だが戦闘中にどんどん強くなっていくのだ。吾輩不思議」

 ふうん? 良くわかんないなら今考えても仕方ないよね。

「それじゃあ、取り敢えずこの街を元に戻してみんなを休ませてから、改めて作戦会議といきましょうか!」
「元に戻す? 何を言っている? 吾輩困惑」

(戦いが起こる前の状態まで元通りになあれ!)

「んなぁ!? 吾輩驚愕……」

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