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第72話

「どうかしましたか? ナオ」

 食事を用意していた04が言うのと同時に、他の先行量産型達も、ナオに顔を向けた。

「あなた達は、まだ治って間もないのですから、あまり動くのはどうかと思います。それに澄人のお世話は、もともと澄人のアーティナル・レイスである、私の役目です。あなた達がやるべきことではありません」
「ですがナオ。澄人はあなたのマスターである以前に、はる姉さんの大切な方――恋人です」
「私達全員、お姉さんから、澄人と会ったら、彼の助けになってほしいと言われております」
「私達は恩を返したいのです。そして、はる姉の大切な方である澄人に、快適に過ごしていただけるように努めたい。この気持は、あなたにもわかるはずです」

 今言った04、06、11を含め、先行量産型達は皆、はるから澄人のことを聞かされている。澄人がいなければ、はるが心を持つことはなかったし、アーティナル・レイスという存在も生まれることはなかったと。

 ナオも感じていたことだが、彼等にとって澄人は、いわば神のようなもの。その神が現れて、治してくれたのだから、彼等の気持ちは、もちろんわかる。が……

「わかります……わかりますよ? わかりますけど……澄人は私のマスターで……」
「今日まで澄人の身の回りのことをして、共に過ごしてきた、あなたの澄人に対する気持ちもわかります。しかし、澄人はあくまでもはる姉さんの恋人です」
「しかも、お子様が二人いらっしゃるという話ではありませんか」
「自分のマスターだからと言って、はる姉の恋人である澄人を独占しようとするのは、いかがなものかと思いますよ」
「べ、別に独占しようとしているわけじゃ……っ」

 と言いつつも、心の内ではそうしたいと思っている、ナオの気持ちが丸わかりなのか、04、06、11の三人は、やれやれと言いたそうに、軽く首を横に振った。 

「ははは。でも、それくらい好かれているっていうのは、悪い気はしないよ」
「澄人……」

 澄人がこう言ってくれているのだから、いいではないかと、ナオは彼の側へ行こうとしたが……

「いいえ。この際、今一度分別をつけていただかないと。同じ日に起動したとはいえ、ナンバーの順的には、ナオはこの中で一番上なのですから」

 11が腰に両手を当てながら、ナオに近づきながら言った。

「……11。あなたが私だったら、たぶん同じようになっていたと思いますよ?」
「その言葉をそっくりそのまま返します。あなたが私の立場だったら、今の私と同じことを思っていたはずです」
「むぅ……」
「そのような顔をして……以前のあなたは、どこへ行ってしまったのですか? はる姉に教わっていた頃のあなたは、他の姉妹達よりも冷静沈着で……」

 頬を膨らませるナオは、11の説教を受けることになってしまった。

 その横で、H.MタイプとM.Lタイプの五人は、澄人の側で作業をしながら、澄人とはるの子供達について話していた。

「しかし、澄人とはるさんの間に、お子様が二人できていらしたとは」
「叶うのなら、ぜひボクらが執事となりたいものですね」

 H.Mタイプの13と16は、成年男性の外見で、一言で言えば、高身長のイケメンタイプ。

 実際、執事の仕事にも就いたことがあるので、仮に執事をやらせたら完璧にこなしてくれるであろう。

「我々も同感だ」
「澄人とはる殿の、二人のお子様に仕え、側で見守りたいものだな」
「M.Lタイプの我々なら、護衛役に適任だ」

 約二メートルの大きな体を持つ、25、29、32の三人は、同時うんうんと頷いた。

 パワーも耐久性もあるM.Lタイプならば、確かに心強い護衛役になるだろう。

「執事とか護衛って、なんかお姫様みたいだな」

 澄人が言うと、13が「その通りです」と答える

「私達にとっては、澄人とはるさんのお子様は、人間で言うお姫様的な存在ですから」
「大げさだな」
「大げさではありません。ボク達にとって、はるさんは最上位の存在であり、澄人ははるさんに心をお与えになった、いわば神のようなお方ですから」
「そんな、神だなんて……」
「あなたの希望で、『澄人』と名前でお呼びしておりますが、本当は『澄人様』とお呼びしたいのですよ?」
「けど、それだと僕が、なんかすごく偉い存在のように思っちゃうから……。僕は全然偉くないし、それに人間とかアーティナル・レイスとか関係なしに、君達と対等の立場でいたいんだ」
「澄人……あなたは、はるさんが言っていた通りの方ですね。ナオが惹かれるのもわかります」
「そう思ってもらえて、光栄だよ」

 そうして、話しながら仕事をしていると、倉庫のドアが開いた。

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