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第71話

 次の日。ナオは昨日と変わらぬ態度で、澄人の仕事をサポートした。けれど作業の途中、「体調が悪いの?」と澄人はナオに聞いてきた。もちろんナオは大丈夫だと答えたが、澄人は念のためだと言って、システムチェックをした。

 顔に出ていたのか……それとも、澄人は何かをナオから感じたのか……。

 それでも、システムチェックで異常がないことを確認すると、澄人はそれ以上のことは――追求や詮索などを、することはなかった。

 本当は気になるはずなのに、いつも通り優しい笑顔を浮かべてくれる彼に、ナオは昨日の行為を途中で止めることができて、今の関係を壊すことにならなくてよかったと思いながら、心の中ではるに感謝し、その日の夜からは、もう同じような行為を彼女がすることはなかった。

 そして、澄人とナオがこの基地にきてから五日。

 幸いなことに初日のようなトラブルは起きず、敵からの襲撃もなかった。おかげで仕事に集中することができて、四日目の夜には、修理が必要だったアーティナル・レイスのほとんどが動けるようになった。その結果、マンパワーが増えたことで、澄人の作業もどんどん楽になり、彼等によって倉庫内も掃除がされた。

 それは澄人が指示したことではなく、澄人に治してもらったアーティナル・レイス達が感謝して、率先して行ったことだった。さらにそれだけでなく、彼等――特にナオの姉妹兄妹である先行量産型達は、澄人の身の回りの世話とサポートまで、するようになっていた。

「澄人、お飲み物をお持ちいたしました」
「ありがとう。そこに置いておいてくれるかな」
「あの……ご昼食はお食べになりますか? よろしければ、私がご用意致しますので」
「じゃあ、お願いするよ。これが終わったら食べるから」
「洗濯物が乾いたので、たたんでおきましたので、こちらに置いておきますね」
「ありがとう。助かるよ」

 H.Wタイプである、ナオと同じ顔をした、04、06、11の三人は、炊事洗濯など。

「澄人、荷物はこちらで良いですか?」
「ああ、そこで大丈夫。次は三番のコンテナに入っている部品の箱を頼むよ」
「了解」

 M.Lタイプの二人は、主に荷物運びなどの重労働。

「澄人、こちらの作業は終了しました」
「ありがとう。じゃあ、次はこっちを手伝ってもらってもいいかな?」
「はい」

 H.Mタイプの三人は、澄人の補佐。

 そのような感じで、先行量産型達はそれぞれ役割を分担し、なるべく澄人の負担を減らし、快適に過ごしてもらえるように努めていた。

 しかし、そうなると当然ナオの仕事は激減した。

「はぁー……」

 倉庫の隅で、小さくため息をつくナオ。

 澄人が楽になった上に、姉妹兄妹達の多くが治ったことは、とても喜ばしいことではある。だけど、自分がやっていたことのほとんどの仕事を、姉妹兄妹達に取られる形になってしまったことに、少々不満を感じていた。いや、それだけなら、まだ黙り続けていられただろう。問題は……

「澄人。他にお手伝いすることはありませんか?」
「遠慮なく申しつけてください」
「我々に、もっとご命令を」

 姉妹兄妹達が、澄人を囲んでいる光景に、ナオは頬を少し膨らませてしまう。

 H.Wタイプは三人で、他の五人はM.LタイプとH.Mタイプではあるが、みんなに囲まれている澄人が、ナオにはモテモテ――ハーレム状態に見えたのだ。

「澄人。よろしければ、肩をお揉みしましょうか?」
「それでしたら、私は足を――」
「私は腕を――」
「え? ちょ、ちょっと……」

 次々に澄人の体に触れていく姉妹兄妹達。

 たまらずナオは、「ちょっとみんな、ストップです!」と声を大にして皆を止めた。

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