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第70話

「澄人の手……あったかい……」

 澄人の左手を通して伝わってくる、心地良い彼の体温を感じながら、ナオはうっとりと彼の顔を見つめながら、心の中で、こっちを向いてほしいと願ってみた。

「ん~……」

 偶然にもその願いが叶い、仰向けだった澄人が寝返りを打って、ナオの方を向き、右手も彼女の方に出される。
 ナオはその右手をとると、広げて自分の左胸へ……。そして左手も同じように、右胸へ……。

「澄人……はぁ……ぁ」

 胸を鷲掴みにさせた、澄人の両手を動かし、快感と至福を得ていき……次第にそれだけでは満足できなくなってしまう。

「ん……れぉ……」

 左手は胸を掴ませたままで、澄人の右手の指を舌を出して舐めていく。

「澄人のゆび……んふぅ……じゅるぅ……ちゅぱぁ……」

 さらに親指から順に、人差し指……中指……薬指……小指と咥え、澄人の体温を感じていく度に、ナオは自分の心が、どんどん満ちていくような気がした。

「じゅぷ……はぁ……」

 ゆっくりと、口から澄人の右手の指を抜き、唾液によって濡れたその手を見つめる。

――これ以上はいけない。

 理性が止めようとしてきた。それに従うべきなのはわかっているが……欲望も強い。

 感情プログラムの中で、それぞれがナオに判断を仰いできた。その結果、選ばれたのは欲望の方だった。

 澄人の右手を、唾液で濡らしたことによる支配感と、もっと求めたいという気持ちが、ナオにその選択をさせてしまったのだ。

「澄人……………」

 ナオは愛おしそうに、澄人の右手と顔を見つめると、服をたくしあげて腹に触れさせ、擦らせるように動かし始めた。

「ここ……わかりますか? 澄人が施術してくれたところですよ。澄人が治してくれたおかげで……食べ物を食べられるようになって……パフェを食べることができました。それに、イヤリングも買ってくれて……ずっと側にいてほしいとも言ってくれて……私、とても嬉しかったです……」

 澄人の顔に、ナオは自分の顔を、唇が接触しそうなくらいの距離まで近づける。

「私は、あなたにいただいてばかりで……何もあげることができていません。ですから……」

 澄人の右手を、徐々に下腹部の方へと移していく。

「私の初めて……あなたにあげたい……いえ……あなたに愛してほしい……」

 ナオは澄人の右手をさらに下へ……ショーツ越しに、女性の部分を触らせる。

「あなたのものをここに…………そして、いっぱいにして……満たしてほしいんです。澄人になら、どんなに強くされても……どれだけされても……構いません。だから……」

 澄人を求めながら、ショーツを湿らせたナオは、澄人の右手をショーツの外から中へと入れる。その直後、

「だいすき、だよ……はる……」

 澄人が寝言ではるの名を言った。

「っ……!」

 それを耳にした途端、理性が一気に呼び出されたナオは、手を止めた。

「…………そう……ですよね」

 澄人が心の底から愛しているのは、あくまでもはるであって、自分ではない。

 例え抱いてもらえたとしても、そこにはると同等の愛というものはないだろう。それに……

「……私のバカ。こんなことをしても、澄人に嫌われるだけなのに……」

 ショーツに入れていた澄人の右手を抜き出して、ベッドから起き上がり、洗面所から濡らしたタオルを持ってくると、それで彼の両手を拭いた。

「……すみませんでした、澄人」

 もう、澄人の隣で寝るわけにはいかない。

 タオルを洗濯カゴの中へ入れてから、澄人にかかっているかけ布団を直すと、ナオは床で寝ようと思い、ベッドから離れようとした。

「まって……」
「えっ……?」

 眠っている澄人が、ナオの手を掴んできた。

「一緒に……そばにいて……ナオ……」

 澄人がどのような夢を見ているかは、わからない。しかし、名前を言ったということは、彼の夢の中には今、ナオがいるのだろう。

「……はい。私はここに――あなたの側にいますよ」

 ナオがそう言うと、澄人は安堵したように、また寝息を立て始めた。その頬に、彼女は軽くキスをすると、朝まで彼の手を握りながら、顔を見つめ続けていた。

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