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200話 人族最強の魔法使い

 私の極大魔法二連発。敵は頑強な魔人達だが、あれならほぼ殲滅できた筈だ。いや、仮に生き残りがいたとしても私が切り刻んでやるだけだが。

「ウゴアァァァッ!! 貧弱な人間風情がやってくれる!」

 魔人共の躯が折り重なって山のようになっていたその場所から、躯を吹き飛ばしながら一人の魔人が立ち上がった。

「生きていたとは驚きだな」
「メッサーさん、あれは確か四天王のなんとかだよ!」

 シ・バーイだよラーヴァ。ふふふ。君といるといい意味で力が抜ける。

「フ……フハハハ! あまりいい気にならない事だな。我が拠点に残した戦力を呼び出せば、手負いの貴様らなど赤子の手を捻るようなものだ! それにそこの青い魔法使い! 貴様の魔力とてもう残っておらぬだろう!」

 ふん。この私がマージンを残さず魔力を使い切るとでも思っているのかな。見くびられたものだね。

「風刃」

 指先に集めた魔力をひたすら鋭利にするイメージ。剣よりもナイフよりも剃刀よりも。
 私は手首の可動範囲だけ、左から右へと振る。

「グッギャアァァ!! 腕が! 私の腕があぁっ!」
「君は少々人間を侮りすぎだ。それにハッタリは止めたまえ。君たちの戦力は、伏兵を含めて全て連れてきていたのだろう? 君たちの言う拠点ならば、すでに私達の別動隊が制圧に向かっているよ」
「……別働……隊だと? あれだけ劣勢だった状態でも戦線に投入せずに、拠点制圧に向かわせたというのか!」
「私達の諜報能力を甘く見るな。拠点がもぬけの殻なのは、君たちの伏兵が出現した時点でお見通しだよ」

 シ・バーイは信じられないという顔で固まっている。まあ、普通はそうだろう。レン君の冷静な判断がなかったら、こちらも全戦力を投入していただろうね。
 結果、拠点に敵の戦力があった場合は増援を足止め出来るし、英断だったと思うよ。今にしてみれば私にも分かる。おかげでこの魔人の将は退路を断たれた訳だ。

「それに、少々被害が出たところで、私達なら立て直せる。そういう事だね」

 後方から、シルトやヒメに治療を施された兵達が、ほとんど無傷の状態で復帰してきた。やや数が減ってしまったのは致し方ない。戦争なのだから。

「……貴様達は化け物か……なぜ殆ど戦力が減っていない?……まさか嘗て魔王様を封印した伝説の勇者か?」
「私は勇者ではないよ。人族最強の魔法使いを目指してはいるがね。それに、君たちに化け物呼ばわりは心外だな」
「……フフフ…貴様より強い者が人間にいるとでも言うか」
「もちろんさ。私など手も足も出ずに粉々にされてしまうだろうね」

 そう言いながらシルトに視線を送る。視線に気付いたシルトは訳が分からず首をコテンとしているが。

「くくく……魔王様、今回は随分と分が悪い戦いになりそうですぞ。おい、青い魔法使い」
「何かな?」
「私の知略毎全てを叩き潰してくれた偉大な人族の魔法使いよ。名前を教えてくれ」
「……メッサーだ」
「そうか……メッサー。願わくば、次の生では敵として出会う事のないよう願う! ゴバァッ!!」

 どうやら、二発目の極大魔法ですでに瀕死のダメージを負っていたようだね。
 大量に吐血し地面に倒れ伏すシ・バーイ。だがその顔は何故か満足気な笑みを浮かべていた。

「さらばだ知略の魔人よ。君の思い切りの良い戦術には敬意を表する」

 事切れた魔人に奇妙な感情を抱きながら、ラーヴァに視線を送る。意図を察してくれたラーヴァはパチンと指を鳴らした。

 ――ボウッ!!

 立ち上った炎が、シ・バーイを包み込み、彼の骸はやがて灰となった。

「次は人間として生まれてくるがいい」

 手向けの言葉を言い終えたタイミングで、シルトが、ラーヴァが、ヒメが、レン君が、アイン団長が手を掲げながら近寄って来た。

「すごくカッコよかったですっ!」

 シルトとパァンと手を合わせる。そこからは皆が互いにハイタッチを交わした。まだ四天王の二人目を倒したに過ぎないが、間違いなく魔王の元へまた一歩近づいた私達の表情は明るかった。

「さあ、戦死者を弔ったら街へ行こう。セラフ達が待っている」

《おおおお!!》

 さあ、行こうか。

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