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190話 殴りにいこうか

「ふうん? 結構厄介な武器ね、それ」
「あっさりシールドでガードしておいて……」

 シャオロンがイングおにいに頼んでいた武器が仕上がったので、あたしはシャオロンの慣熟訓練のため、模擬戦の相手をしている。

「そりゃ当たったら痛そうだし、ガードくらいするわよ」
「いや、普通はそう簡単にガード出来るようなものじゃないんだって!」

 シャオロンが持ってきたのは一見普通の棒。長さはシャオロンの身長より少し長いくらいかしら。それなら防御はそんなに難しくない。間合いが遠いからまともにやり合ったら反撃は難しそうね。そんな事を思って臨んだ模擬戦だったんだけど……

「あれは三節棍だな。随分扱いづらそうな武器を……」

 レン君が言う三節棍っていうのは、棒が三等分に分割されて、それぞれが鎖や紐なんかで繋がれているものらしい。でもシャオロンが持っているのは、あたしのモーニングスターの星球と飛ばす時に使っている鋼線を何本も編み込んだワイヤーで連結させている。
 固定して棒として殴る事も出来れば、分割させて軌道の読みにくい鞭のような攻撃もしてくる。

「この武器は初見殺しといっていいトリッキーなものなんだけどなぁ……僕も修行が足りないみたいだ」

 シャオロンがしょんぼりしちゃったけど、あたしも盾持ちだからガード出来ただけで、回避となると難しいかも知れない。それに、そうそう修行している時間もないのよね。

「悪いけど、後は実戦で修行してちょうだい。魔王が攻め込んでくる前にこちらから先制するんだから」

 なんだかんだでシャオロンは強い。間に合わせの武器だったトンファーでオークキングを倒す実力だったのが、今は装備も充実してるし進歩も目覚ましい。同じく異界から召喚されたレン君も、張り合ってる訳じゃないけど更なる高みを目指して頑張ってる。

「シルトさん!」
「あ、リャンさん! どうしました?」

 彼女はアインさんの側近のリャンさん。アインさんのパーティーではタンク役の人だ。

「団長がお呼びです。出征部隊の編制が終わったようですよ?」
「ならいよいよって事ですね。今から行きます」

 こうしてあたし達はアインさんからの召集を受けて騎士団の施設へ向かった。

「こんにちは。お待たせしました!」
「いや、こちらこそ呼び出して済まないね。今フォートレスの他のメンバーや、バッジーナ隊長も呼んであるのでもう少し待っていて欲しい」

 中で待っていたのはアインさん他騎士団員が数名と、セラフさん。
 セラフさんはギルド代表の立場として呼ばれたのかな? 
 フォートレスは、あたしとレン君以外は今日は別行動なの。最近はパワレベや訓練の指導でバラバラに活動する機会が多いんだ。

「どうぞ。これ、美味しいですよ?」

 リャンさんがお茶とお菓子を出してくれた。わぁ! 美味しそう!

「ありがとうございます! 頂きます!」

 出されたお茶とお菓子を摘まみながら、ちょっとした雑談をしながら時間を潰していると、メッサーさん、次いでお姉ちゃん、その後バッジーナさん、最後にヒメとアイギスが来てメンバーが揃った。

「揃ったようなので話を進めようか。先程部隊編成が確定してね。総勢八百名で出陣する事になる。街の守備に三百、予備で百は残して行くが、三百の内五十程はローテーションで補給部隊として運用する事になる」

 予備の百っていうのは何だろう?

「騎士見習いや半人前で前線に出せない兵士とかだな。あとは低ランクの冒険者だ。4級までの」
「つまり戦力としては期待できない戦力(・・)って事だね! 予備の百人を投入するって事は、負けを意味すると」
「ラーヴァさん、まあそう言わないでくれ。主力が街からいなくなっても、魔物の間引きや護衛の依頼などは無くなる訳じゃない。彼等にもしっかり働いてもらわなくてはね」
「そっかそっか、こりゃ失敬」

 てへっと舌を出して、自分の頭をコツンとするお姉ちゃんが可愛い。エルフの血が濃いからかな、物凄い美人なのに気取ったところが一切ないから、男の人にもモテそうなんだけど……やっぱり異名のせいかしら?

「それで、今日集まって貰ったのは補給についてなんだ」

 補給? ギルドに人員を用立ててもらうとか? それとも守護者達(ガーディアンズ)から捻出して欲しいとかかしら?

《シルト、そうではないでしょう。街の守備で残る兵で補給部隊を回すと言っているのですから……》

 あ、そうだった。てへっ☆

「……魔法鞄かな? アイン団長?」
「流石です、メッサーさん。先日の迷宮攻略で、我々のパーティも一つ入手できた。そして戦場での物資の重要性と運搬に割く兵力と時間を考えれば、魔法鞄での物資運搬は画期的な変革をもたらすと言える。だが、数が足りない」
「なるほど、補給部隊をローテーションで運用するのだから複数必要である事は分かりました。それをギルドで保有している分を貸与して欲しい。そういう事ですか」
「そういう事さ、セラフ女史。さらに言えば、殆どの魔法鞄はフォートレスが邪龍を倒して持ち帰ったものだ。フォートレスに話を通すのが筋だと思ってね」

 そっか。なるほどねえ。あたしとしては、守るものの為に有効活用してもらうのは全然オッケイなんだけど、他のメンバーはどうかしら?

「……俺としては祖国解放の戦いのために、どうか使わせてもらいたいと思っている。それにもし、現地で苦しんでいる帝国民がいれば魔法鞄の無限とも言える容量だ。物資を提供して救済できるかも知れねえ。俺からも頼む」

 バッジーナさん……そうよね。あたし達の中にも帝国出身の人はたくさんいるものね。

「俺は王都の何とかいうバカ侯爵との決着がつくまでは、貸与してもいいと思う。それに、さっきおっさんが言ってたように、帝国民の救済に役立てればこっちの心象も良くなる。近い将来ヒメが国を立て直す時にも国民の支持を得やすいだろう」

 おおお……いつもながらレン君すげえ……

「私はシルトの意見に従うよ。将来の国のリーダーだからね」
「ボクも同じ! 我が妹は難しい事を抜きにして、考えなしに正解を選んでしまう特技があるのさ!」

 ええ~、メッサーさんはともかくお姉ちゃんは全然褒めてない気がする……

「シルト……」

 うう、ヒメったらそんな縋るような目で見ないで。もう……

「あのですね。あたしは魔法鞄くらいでガタガタ言いませんって。アインさん、有効に使ってもらえればそれでいいです。それに必要ならあたし達がいくらでも調達しますし。それにもしかしたら補給なんて必要ないかも知れませんよ?」
「シルト……?」
「あたしは長期間戦うつもりはありません。さっさと魔王見つけてソッコーで撲殺です!」

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