バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

189話 魔王軍の事は任せなさい

 王都にいる、なんたらとかいう侯爵の汚い企みの情報を入手してから約一か月。
 魔王軍は徐々に帝国内で勢力を広げているものの、周辺国に対しては大きな動きは見せていない。その一か月という時間は、適度な運動(ハードなトレーニング)おいしいご飯(ドラ肉)の効果で大きな戦力アップをもたらした。

「そういう訳でミハエル様。あたし達迷宮自治区の戦力は、帝国解放に向けて出陣する事にしました。ミハエル様の戦力は、王都の企みから領民を守る為に温存しておいて下さいますか? 領軍がまったく無傷で残っているのは王都としても計算外の筈ですし」
「そうか。確かに戦力が整ったのならば攻め込まれるのを待っている義理はないな。ならば領軍からも少しだが援軍を差し向けよう」
「いえ、お気持ちだけ。むしろあたし達の留守中の迷宮自治区をお願いしたく……」
「む、そうか。ならば留守は任せよ。それから、魔王軍と交戦するタイミングで独立を宣言しようと思っている。なんら支援の話を持ち掛けてくる事のない王家に対する不信感が限界まで達した。もっともらしい理由だろう?」

 今日はメッサーさんと二人でミハエル様のお屋敷に出向き、ミハエル様と面会しているの。『もっともらしい理由だろう?』のくだりでミハエル様がニヤリと笑う。
 果たして、魔王軍との戦いで疲弊した所を狙う腹積もりの王都の連中がどう出るか、これは大きな賭けになると思うんだけど……

「閣下、それは我らが魔王軍に敗れれば絶体絶命の窮地に陥る事になりますが?」

 うん、メッサーさんの言う通りで、もしもあたし達が負ければ、シェンカー領は王都と魔王軍の双方から攻められる事になり兼ねない。

「ふ。君達が負けるなど、欠片も想像出来んな」

 それを聞いてあたしとメッサーさんは顔を見合わせる。この良く分からない信頼には応えなくちゃいけないね。そう視線で語り合う。

「分かりました。シェンカー領は我らの故郷でもあります。何よりこのシルトの大切なものもありますから、この子は絶対に負けないでしょう。では、我々は戻って準備を始めますので……」

 そうだよね。迷宮自治区に拠点を移した今だって、領都はあたしの故郷だもん。隣のおばちゃんや鍛冶屋のおじさん。城壁工事のおじさん達……それにハウルお父さんのお墓。

「うん。あたしは負けませんよ! ミハエル様も王都のなんたら侯爵なんかに負けないで下さいね!」
「無論だ」

 こうしてミハエル様との面会が終わり、お屋敷を出ようとする。ミハエル様と執事さんが門まで見送りに来てくれた。普通は上級貴族はそんな事しないのにね。

「あ、忘れるとこだった! ミハエル様、お土産です。アインさんが仕留めたんですよ! 有効活用して下さいね!」

 ――ズズン!

「……は?」

 お庭に邪龍を一頭分、丸ごと置いてきました! アインさんのパーティも、あたし達のサポート付きだけど最終階層を攻略できたんだよ。ミハエル様の呆けた顔、面白かった。

*****

「はっはっは! お嬢様もついに人外の存在へと到達致しましたな! わっはっは!」

 無造作に置いていった邪龍の死骸を家人が解体する様を見て、騎士団長が腹の底からおかしそうに笑う。

「何を笑っている? お前の二人の娘、リャンとミィと言ったか? アインのパーティにおるのだろう?」
「はっはっは……は!?」
「俺は一人の人外の父親だが、お前は二人の人外の父親という訳だ。こりゃ愉快だな! わっはっはっは!」
「はっはっはっは!」
「わーっはっはっは!」
「……あの、旦那様。既に旦那様もアレの肉を食してからは、すでに常人とは一線を画す存在になられている事にお気付きでしょうか? デヴィッド騎士団長もでございますよ?」
「「はっはっは……はぁ!?」」

しおり