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第64話

 現れた男たちは、カーキのジャケットをきた、岩崎の部下である傭兵達。

 その先頭に立つ、髪が金色に染まっている男が、澄人に近づいてきた。

「僕がそうですが……何かご用でしょうか?」
「そろそろ、何体か直ったころだと思ってな」
「はい。M.Lタイプが――」
「そっちじゃない。女人形の方だ」

 男が発した女人形という言葉に、澄人の眉頭が下がる。

「……すみません。彼女たちは、まだ治っていません」
「は?」

 聞くと同時に、傭兵達は不機嫌そうな目になり、声を荒げた。

「おい、どういうことだ!」
「なんで直してねぇんだよ!」
「僕とナオの二人だけでは、H.WタイプとH.Mタイプの施術を行うための、機器を設置して準備するのに、かなりの時間が必要で、施術にも時間がかかります。要は人手不足なんです。そのため、短時間で修理が可能なM.Lタイプから治し、人手を確保するのが最良だと判断したんです」

 そう澄人は説明したが、

「ふざけんな、バカ!」
「こっちは何日もできずに溜まってんだよ!」

 それで男たちが納得するはずがなく、何度が澄人に暴言を浴びせた後、彼等はナオに目を向け始める。

「こうなったら、お前のアーティナル・レイスを貸してもらおうじゃねぇか」

 男たちの視線が、ナオの体を舐めるように見る。

 それを遮るように、澄人はナオの前に立った。

「それはできません。ナオのサポートなしでは仕事になりません。何より……彼女は僕にとって大切な存在だ。お前達の欲望のはけ口になんかさせない」
「澄人……」

 澄人が言った言葉と、大きく――頼もしく見える澄人の背中に、ナオは自分の胸がキュンとするのを感じた。けれど、それに浸っているわけにはいかない。

「お前、自分の立場がわかってないようだな」

 先程の先頭にいた男が、腰から軍用のオートマチック拳銃を抜き、銃口を澄人に向けた。

「その気になれば、ここでお前を殺すこともできるんだぞ?」
「澄人!」

 すかさずナオは澄人の前に出るが、他の傭兵達も銃を抜き、二人の周りを囲む。もし一斉に撃たれたら――連射されたら、無傷というわけにはいかない。

「……正気ですか?」
「ふん。どうせ俺達は、死ぬまでこの島から出られない運命だ。それにいつ死ぬかわからないからな。やりたいことをやって死にたいんだよ」
「死ぬまで出られない……?」

 どういうことだという澄人の声に、ナオも同じような疑問を抱くが、それを聞いたり考えたりできるような状況ではない。

「さあ、お前のアーティナル・レイスを俺達に貸せ。そうすりゃお前は、痛い目を見ずに済む」
「……断る」
「バカかお前?」
「僕にとってアーティナル・レイスは、人間と同じ――命あるものなんだ。それにさっき言ったように、彼女は大切な存在だ」
「……っく、ははははははは! 隊長、どうやらこいつは、本当にバカのようですよ」

 金髪の男に、隣の男が言いながら笑う。それにつられたのか、周りの者達も笑い声をあげた。

「っふ、どうやらそのようだな」

 隊長と呼ばれた金髪の男は、澄人に銃を向け直し、

「口で言ってもわからないバカには、やはり痛みでわからせるしかないな」

 そして――銃声が鳴った。

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