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176話 失敗しちゃった☆

 レン君達が迷宮から帰還してきたので、夕食がてらお互いの今日の出来事を報告し合っているんだけど、あたしの訓練内容を聞いたレン君が頭を抱えた。

「いや、まったくの無駄とは言わねえけどさ、リセットで無かった事にしちゃダメだろ。超回復ってのは、文字通り筋肉が回復する過程で以前より強くなろうとしてるんだ。単純にリセットしちまったら、折角鍛えた事実も無かった事になるだろうが。はぁ~……」

 何ですと!? では今日一日ハードに苛め抜いたのは一体……

「まあ、メンタルは相当に鍛えられただろうけどな。ここ一番ってとこでモノを言うのは精神力だし」

 ガーーン!
 そんな顔をしているであろうあたしに、なんとかフォローの言葉をかけてくれたレン君の優しさが余計に痛い。
 あう……
 守護者達(ガーディアンズ)のみんな、ごめんなさい……
 今日の訓練はメンタルを鍛えるだけで終わったらしいです。とほほほ……

「いいか、シルト。リセットするにしても筋肉疲労はダメだ。自己回復がまず基本、それにヒールなんかで筋肉の痛みを回復するのは恐らくOKだと思う。もし出来れば、筋肉痛のみ無かった事にして極限まで無理させるのはアリかもな」

 そっか、なるほど。リセットも条件を付けてやれば、出来る事が増える可能性があるのね。でも超回復を目的にした訓練にはヒーラーが居た方が効率がいいって事よね?

 じーーーーっ

「はいはい、分かりましたよ。明日からは私もお手伝いしますから」
「わあい! ありがとう、ヒメ!」
「それじゃあラーヴァさん、俺の模擬戦の相手、お願い出来ます?」
「ふ~ん? ボクとかい? いいよ! いっちょ揉んでやろう。にししし」

 明日はあたしとヒメが訓練に参加。レン君とお姉ちゃんは模擬戦っと。

「やれやれ、私の出番は無さそうだね」

 明日の予定が決まりかけた所で、メッサーさんが私暇なの発言! そこにセラフさんが救いの手。

「それなら、駆け出しのヒーラーや魔法使いに魔力操作のコツをアドバイスしていただけません? 帝国から連れて来た人達にも素質がありそうな人はいましたので」
「ああ、レン君直伝のイメージ力による魔力操作法を広めるという事でいいのかな?」
「ええ、お願いします」

 そんな訳で明日の予定が決まったのはいいんだけど、セラフさんとバッジーナさんの方はどうだったのかしら?

「やっぱりパワレベとドラ肉のコンボはすげえ効果だったぜ!」

 物凄いレン君のドヤ顔がちょっとムカつくのは、あたしの八つ当たりってやつかしら?

「お二人とも、第五階層までクリアしましたよ。私達のフォローは途中の体力回復くらいでしょうか。ミノタウロスとも単独で互角以上でしたね」

 ほぉ~、そりゃ凄い。ヒメの出番はもっとあるかと思ってたんだけどな。しかも、うまくいってもオークキングあたりまでかなって思ってたのに。

「いやあ、俺達もよ、まさかあのミノの巨体を押し返せるくらい強くなってるとは思わなかったぜ? お陰でほら、こんな得物も扱えるようになった。これで攻撃力も大幅アップだ」

 そう言ってバッジーナさんが手に取ったのは巨大な戦斧。あれは確かミノタウロスが使ってたヤツだわ。ミノが持ってると片手斧なんだけどバッジーナさんが持つと両手持ちのポールアックスみたいね。

「それでよ、これからは他の連中も迷宮に潜らせてレベリングするんだろ? だったらそれなりの武器を持たせねえと、すぐにイカれちまうぞ?」

 なるほどなるほど。確かにナマクラじゃあ第一階層のハイ・ゴブリンですら打ち合えないかも。

「それは私が持ち帰ってインギーに相談してみよう」
「私もリーチの長い格闘武器が欲しいです」

 セラフさん……リーチの長い格闘武器ってなにさ?
 みんなが考え込む。

「扱いが難しい上に誰も教えてあげられないですけど、知識だけなら思い付くのがいくつかあるにはあります」

 お!? 出るかレン君の異世界武器ネタ! レン君のこういう話はワクワクするよ!

「こういうのとか、こういうのとか……あとはこういうのもありますね」

 レン君は紙とペンを取り出し、いくつか武器と思しきものの絵を描いていく。どれも単純な造りのように見えるけど、全く見た事のない形。

「恐らくこの世界には無いものなので、使いこなすのにどんなスキルが必要なのかも分かりません。逆に格闘スキルさえあれば使いこなせるかも知れません。コレばかりはどうにも……」
「くくく、どれもこれもインギーが没頭しそうで怖いな。どうだ? 今からインギーを呼んでみるかい?」

 難しい顔で懸念事項を口にするレン君だけど、セラフさんも自分で結構無理を言ってる自覚はあるみたいで、レン君に申し訳なさそうな顔をしている。逆にメッサーさんは楽しそうだわ。さすがにイングおにいの性格を知り抜いている。
 でも制作する側のイングおにぃなら、何か解決策を持ってるかも知れないわね。

「ごめん、アイギス、イングおにいを呼んで来てくれる?」
『わかりました。あとで美味しいお肉を所望します』
「あははは。もちろんだよ! とっておきの燻製ドラ肉をあげよう!」
『ゴクリ……すぐに戻ってきます!!』

 五分後、パンを咥えたままのイングおにいがアイギスに引き摺られて来た。

「一体何だってんだよ……」

 ごめんね、イングおにい。

 
 

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