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第61話

 倉庫には、数十もの動かないアーティナル・レイスが、横にされていた。ただ、それは病人のようにベッドで寝かされているわけではなく、床に直接……しかも乱雑に。中には積み重ねられているものもいる。

 そんな倉庫が、まともに整理や掃除がされているわけがなく、床にはアーティナル・レイスの冷却血液があちこちに付着し、悪臭が立ち込めている。まるで、虐殺が行われた後の死体置場のようだ。

「酷い……」

 澄人は片膝をつき、近くに横たわっている、裸同然のH.Wタイプのアーティナル・レイスに触れる。

「ぅ…………ぁ…………」
「意識がある……! 大丈夫?」
「ぁ……ぁ…………」

 虚ろな目をしながら、今にも消えそうなくらい、か細い声を漏らすH.Wタイプのアーティナル・レイスの状態を見る澄人。すると、すぐに眉が寄った。

「臭いが酷いのは、これのせいか……」

 澄人が見ているH.Wタイプ……いや、それ以外のアーティナル・レイスにも、男の体液が付着していた。それが腐敗し、異臭を放っていたのだ。

 よく見れば、ここに放置されているアーティナル・レイスの中には、一〇代の女性の外見をしたH.Wタイプや、およそ戦闘向きとは言い難い、幼い美少年タイプのH.Mタイプもある。

「……修理が必要な理由は、戦闘が原因だけじゃないようだな」
「その通りでございます」

 表情一つ変えず、頷くネイを横目に、澄人は倉庫の隅に丸められている――比較的汚れの少ない毛布を手に取ると、それで今見ていたアーティナル・レイスの体を包んだ。

「手伝います」
「じゃあ、他に意識のある子がいないか、見てくれるかな? 見つけたら、こっちに運んで」
「はい」

 ナオは順番に、倉庫内のアーティナル・レイス達をチェックしていくことにした。すると……

「ぜろ……つー……?」

 ノイズが混じった声が、ナオの耳に入ってきた。

「……?」

 声がした方に視線を移すナオ。そこは倉庫の隅の方で、ライトの明かりが照らされていない場所だった。

 そこへナオが近づいていくと、一体のH.Wタイプが横になっているのが目に入る。そしてさらに近くへ行くと……

「あぁ……やっ……ぱり……ぜろ、つー……です、ね……」

 そのH.Wタイプは再び声を出し、ナオの以前の呼ばれ方、02というナンバーを口にした。

 ナオは、なぜ? と一瞬思ったが、すぐに認識コードが表示され、目を丸くする。

「あなた……04!?」

 それは、同じH.Wタイプの先行量産型――ナオの姉妹だった。

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