05
「そうかい。残念だよ」
ボクが小さく言った。
「なにが残念なんだ?お前はモブだろ?
モブの分際で主役さまに楯突くのか?」
ジルがそう言ってボクを睨む。
「主役さま?」
ボクが首を傾げる。
しかし、すぐにその情報が入ってくる。
通称主役級。
それは物語の主人公のように強くなる可能性を秘めた存在。
主役級は、魔王を倒す存在とも言われ神すらも傷つけれる力を持っている。
彼らは何事においても優先されている。
それ故、ジルのような存在が産まれる。
「わかるよな?
モブは経験値になるか命乞いするしかない。
だから乞えよ!そのすぐに消し飛ぶ命を奪わないでくださいって!」
ジルは、ボクの方に刀を向ける。
「乞わないよ」
ボクが答える。
「ああん?じゃ、死ぬか?」
「死なせないよ」
亜金が剣を抜く。
「やるってか?俺は誰かを傷つければ傷つけるほど強くなれるギフテッドだぜ?
お前のなんでも武器にするデモニックとは違うんだぞ?」
「……どっちでもいいよ。
傷つけれなければ強くなれないんだろう?
そんなの雑魚も同然じゃん」
「亜金、相変わらず辛口だな」
清空が苦笑いを浮かべる。
「いうじゃねぇか。
テメェら出番だぜ?」
ジルがそういって空間を歪ませる。
すると数十人の傭兵を召喚させた。
「やっとかジル」
ピアスに箒頭の少年がそういった。
「さぁ、あたしは誰を殺ればいいんだい?」
黒髪に美しい肌を持った少女が笑う。
「ジャキ、ベル!
亜金以外のふたりを殺っていいぞ!
亜金は俺が殺す!他の奴らは村人捕まえろ!
全員俺の経験値に変える!」
ジルがそう指示を出すと傭兵たちはうなずいた。
「つっても、そこの雑魚は楽勝だが。
清空は強いんじゃね?ファルシオンだろ?一応」
ジャキがそういうとベルが笑う。
「力比べと行こうじゃないか!私は清空を殺すよ」
ベルは鞭を召喚すると清空の身体に向けて伸ばした。
清空はその鞭を器用に避けるとベルの腹部に一撃浴びせた。
「お前に私は殺せんよ」
「じゃ、俺が殺してやんよ」
ジャキが清空の頭に銃口を当てた。
「ジャキか、お前はなかなか隅に置けん男だった」
「なんで過去形なんだよ?」
「さぁ?」
「そっか、じゃ死――」
ジャキがそこまでいいかけたとき清空が身体を回転させジャキの頭に一撃蹴りを浴びせた。
「そうやって雑談するところがダメなんだ」
清空が笑う。
ジャキが殺気を込めた目で清空を睨む。
そして笑う。
「だったらこうする」
ジャキはボクの方に銃口を向ける。
そして問答無用で銃弾を放った。
「あ、しまった」
清空が慌てる。
ボクにはなにが起きたかわからない。
わからないまま。
銃弾に当たる。
「死んだ」
ボクは思わず声が出た。
「お前に恨みはないが残念だったな」
ジャキが笑う。
「ってあれ?死んでない?」
ボクの身体が光っている。
「即時転生か?まさか……?」
清空が驚く。
ジャキは舌打ちをした。
「テメェも主役級ってか?
ふざけるなよ!」
「だったら今のうちに殺してしまえばいいってことだよ」
ベルがそういってボクの方に鞭を伸ばした。