04
「死んだの?」
ボクが亜金に尋ねる。
「うん、首を跳ねたからね死んだと思う」
「そっか」
ボクの胸が切なくなる。
「モンスターが死んで悲しいのか?」
清空がそういうとボクは「わからない」と答えた。
「君の仲間がクマノコ一匹に沢山殺されたんだよ?
憎くないの?」
「わからない」
「わからない?どういうことだ?」
「亡くなった人のこと覚えてないんだ」
清空のその質問にボクはそう答えた。
答えた。答えるべきかどうかはわからない。
でも、そう答えた。
嘘を言っても仕方がない。
「覚えていない?お前は旅人だったのか?」
「そうじゃないよ。
わからないんだ。なんていうんだろ。
前世っていうのかなその記憶がなんかある。
それだけ覚えているんだ」
「転生者か」
清空が顎に手を当て考える。
「転生者?久しぶりに見るね」
「転生者?」
ボクが不思議そうな顔で亜金の方を見る。
「この世のありとあらゆる生物はなにかの転生者なんだ。
ただ大体の場合その時の記憶、前世の記憶ってやつは失っている。
前世の記憶が甦ったとき現世の記憶は失う。
そのかわり今の生物の特性と前世の時の特性を受け継いだ状態になるんだ」
「そうなんだ」
亜金の説明にボクはわかったようなわからなかったような顔をしている。
「相変わらず説明下手だな」
清空がそういってケラケラ笑う。
「ちなみにボクの前世は何だったの?」
亜金が話を逸らす。
「スライム」
「え?」
「スライムだよ、経験値1の」
「そうか」
亜金の顔が渋くなる。
すると地響きが鳴る。
「おいおいおいおい!
誰だ?俺のペットを殺したのは!?」
そういって赤髪の少年が現れる。
「ジルか……」
亜金が赤髪の少年を睨みつける。
「ジル?」
ボクが首を傾げる。
「誰だ?お前は」
「僕の名前はボクだよ」
「ほう……?そうか。
俺の名前はジル・ジルベルト!聞いて驚け!
傭兵ギルド・ダークグラムの長、デスペル・ジルベルトの息子だ!」
「誰?」
ボクが亜金に尋ねる。
「知らなくてもいいよ」
亜金がそういって笑う。
「いい度胸だな?
ボク、お前は死んどけ」
ジルが刀を召喚するとボクとの間合いを詰めた。
しかし、清空がそれを防ぐべく。
ジルの刀を素手で掴んだ。
「クソが、オバさんがセーラー服着てキモいんだよ!」
「お前、死にたいのか?」
清空の目に殺気が宿る。
「……死ぬかよ!
だがこっちはペットを殺られたんだ。
そっちも誰かの命を差し出せ!」
ジルのその言葉を聞いたボクは切なくなった。
「こっちは、そのペットに……
クマノコにいっぱい殺されたんだよ?」
「知らないやつが死んでも響かねぇ!」
ボクは怒りを感じない。
悲しみと哀れみを感じる。
ああ、この人にとって命はどうでもいい存在なんだ。
そう思った。