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11 局地的な勝利

「あっ!ちょっ!隊長!助けてください!ガランが!ああ・・・」




グレンが一階の酒保に降りると、小隊長のヴィクトルが悲痛な叫びと共にベロベロになったガランが




小隊長のヴォルゲンと共に連れ去っていくのが見えた気がしたが、恐らく気のせいだろう。




ゴリゴリの武将である二人に連れ去られては、彼の命運はここに尽きたことだろう。










それを華麗に無視すると、グレンは自分と年齢が近い層が集まる机に座った。










この隊では、隊長のグレンと同年代が明らかな少数派になるが、年下を見るとさらに少ない。




現在は、ほんの十数人のグループでしかない。




「お疲れ様です隊長!」




平の若年隊員たちが一斉に敬礼するのを尻目に、エリアを始めとした役付きの隊員は自分の目的




を果たす事に夢中だった。







19歳の第八小隊長エリアは、一瞬こちらを見た気もしたが、気にせず目の前の隊員と話している。




“こいつ俺が来たことに気付いてはいるけど、ガン無視してやがるな、凄えわ”




エリアに話しかけられている隊員は、話に相槌を打つものの、後ろにいる自分を怯えた目で




見つめている。




「いい根性しとるなお前」




酒が入ると自制心が効かなくなるのが、彼の大きな欠点だ。




“どうしようもねえなコイツホントに”







18歳の第九小隊長メルヴィンは、酒に飲まれたのか、机に突っ伏し眠りこけていた。




“・・・だめだなこいつ”




グレンはあまりこの女が好きになれないようだ。







同じく18歳で、最年少の第10小隊長アイラは、顔色一つ変えずに酒を飲み続けている。




机には大量の殻になった皿と酒樽が並べられており・・・




「おい待てお前、それ払うの誰だと思ってんだ?」




グレンに呼ばれたアイラはこちらを向いて




「隊長」




「あ?」




「ごちそうさま」




一言グレンに添えた、とても素敵な笑顔で。







「ヌック」







グレンは何も言えなくなった。




そう言うとアイラはグレンを見向きもせずに、食べる食べる、飲む飲む




見ていると気持ちが悪くなってくる




「何であいつあんなに食えるんだよ。どこに入るだかさっぱりわから・・・ん?あれ?あの酒樽が一つ




確か・・・あの肉もかなりした・・・」




嫌な予感がしたグレンは、隊員が飲み食いした量と金額をざっと目測で計算する。




大隊より支給された軍資金は有る物の、足が出れば、出目は当然それぞれの自腹である。







「・・・クソが、俺の分無えじゃねえかよ」







そして、その軍資金は自分が一滴のお茶も、一口の食事も摂る前に尽きることは明らかだった・・・

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