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152話 召喚者、対峙す

 お尻が隠れるくらいの丈の黒い上着は、袖口が白く縁取りしてある。縁取り自体は太い。袖口も大きくバサバサするくらい。前合わせの部分はループで留める様になっている。ズボンもゆったりしていて上着と同じ生地だけど、足首はきゅっと細く締まっている。靴は薄くてぺったりしてるなあ。
 あんな恰好で戦場に出て来るなんて、かなりやるのかしら? さっきの魔法がコイツのものなら確かに中々の威力だったけど。

 それにしてもホントにぽっちゃり。まあるい顔に黒髪黒目。髪型は……キノコかな? うん。髪型もまあるい。眉毛は太めで男らしいけど、ちょっと汗っかきそうな印象ね。
 レン君がずいっと前に出る。召喚者同士で話がしたいのかな?

「あんたがシャオロンか? どっちかってーと小龍(ブルース)より金峰(キンポ―)って感じだな」
「へえ? その反応だと君も召喚されたクチかい?」
「さて、どうだろうな?」

 うう、なんか凄い。二人とも笑顔なんだけどバチバチ火花が飛び散ってる。てか、きんぽーって何よ?

「ところで、逃げ出した連中の事なんだけどさ。君、何か知らないかな? 連中は逃げ出す事なんて出来ないハズなんだけどなあ?」
「そうなのか? 連中、ここの生活に嫌気がさしたんじゃねえの? 嬉々として逃げてったぜ?」
「ふうん? まあいいや。君達三人の方が、逃げた雑魚二百人より役に立ちそうだ。立ちそうなんだけど……」

 突如シャオロンの姿がブレた。速いわね! ぽっちゃりなのに! ぽっちゃりなのにっ!

「……へえ。やるね、君。初見で僕の蹴りを受け止めるなんてさ。僕を金峰呼ばわりした君を殺してやろうと思ったのにさ」

 シャオロンは右上段の蹴りを放っていた。レン君は左腕でがっちりガードしてたけど。てか、動けるデブって!!

「……まあ、そのナリ見たら、あんたが格闘家だろうって予測は出来るからな。ところであんたは武器は使わないのかい? ヌンチャクとかトンファーとかさ」

 ぬんちゃく? とんふぁー? どんな武器だろ?

「それは、相手によるかな? 君は僕に武器を使わせるにふさわしい相手じゃないと思うけど?」
「そうかい?」

 わっ! 今度はレン君がブレた! あれは噂の左ジャブ! レン君があたしに一番初めに教えてくれたパンチだよ! しかもスピードもキレもあたしの比じゃない!

「ちっ。ブッ飛ばすつもりだったんだけどな」

 なんとシャオロンは、閃光のようなレン君のジャブを紙一重で躱してる! 凄いなあ、ぽっちゃりなのに。

「ふふ。僕はガードしていないからここは僕のラウンドかな? ボクサー君?」
「いや。10対9で俺のラウンドだよ。拳法家」

 レン君がピッと左拳を振ると、拳から血が飛び散った。同時にぽっちゃりシャオロンの右頬に、一筋の赤い線が奔り、血が滲んで来る。
 
「……」

 シャオロンが頬の血を指で掬いとり、ペロリと舐める。

「おお、雰囲気出てるぜ?」

「……ふん」

 なんか、この二人の戦いって引き込まれるなぁ。邪魔の入らない所でずっと見ていたい気がする。シャオロンの俊敏な動きはちょっとビクってするけど。

《シャオロン殿ー! 無事かー!》
《賊はどうしたか!?》

 あちゃあ、帝国の騎士団とか近衛かな? じゃんじゃん集まって来たよ……

「レン君、頃合いだね。そろそろ行こう!」
「ああ。それじゃ今日はこの辺で帰らせてもらおうか」
「ちっ! 逃がすと思うかい!?」

 ――ズドドドーーーン!

 あたしは目くらましに、クラスターボムを思い切り地面に叩きつけて土煙で視界を塞ぎ、その間に撤退した。

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