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第21話 開拓14日目 土台の組付けの仕上げ

◇  ◇  ◇

 『大造じいさんとガン 』という椋鳩十の童話がある。

 猟師である大造じいさんとその獲物であるやたら頭が良くてリーダーシップのある"残雪"というガンが、大自然の中でお互いの生活をかけて知恵比べする様子を淡々と描いている名作である。

 大造じいさんにとって残雪はガン猟を妨害する敵であるものの、終盤で第三者であるハヤブサに襲われて怪我をした残雪を大造じいさんは保護し、また自然に返すというは場面はとても印象深い。
 
 小学生の頃、教科書に載っていたこの話を最初に読んだ時には大造じいさんと残雪の二者関係にばかり目がいっていたが、大人になったいまに振り返ってみると、大造じいさんは残雪という対象を通して"自分自身をみていた"のではないかと思う。

 大造じいさんは残雪との一筋縄ではいかないやり取りの中で、普段の生活の中では見えない自分の本質的な部分が可視化されたのではないだろうか。

 
 『予想外の場面に遭遇した時に自分自身が”どういう場面で"、"どうか考え"、"どう行動するのか"。それを知りたい。』

 
 失敗はしたくないし、失敗を恐れる心はある。

 だがセルフビルドの小屋づくりをはじめた時から全てが計画通りうまく行くとはサラサラ考えていないし、心のどこかではトラブルが起こることを希求してすらいるのかもしれない。

 昨日の失敗は精神面・身体面の両面にダメージを残した。だが小屋づくりの手を止めるわけには行かない。

 作業中の起きる様々な事象に対処することで、私は私自身のことをより深く知ることができるだろう。
 
 それがセルフビルド小屋づくりの目的の1つでもあるのだ。

◇  ◇  ◇

[ 開拓14日目 ]

 朝から身体が非常に重く感じた。身体は"もうやめろ"と言っているのかもしれない。

 だがやめない。もっと限界になるまでは続ける。

 外は雨は降っていないが曇り空だった。スマホの雨雲レーダーアプリで確認すると雨雲が鳥取県あたりをうっすらと覆っており、この土地も今日中に雨が降る可能性は十分にあると分かった。

 今日の作業はどこから手を付けようか迷ったが、雨に備えて昨日買った建築資材を整理してビニールシートで防水することから着手することにした。

濡れに弱い床や壁の木材を買ってきてしまった以上、これから先は雨との戦いになることが予想される。

 次に土台の大引を組付ける作業に入る。土台の作業はなんとか今日中に終わらせたいところだ。

◇  ◇  ◇

[ 組付け ]

 昨日に引き続き欠き込みを少しずつノミで削り、嵌めて、具合をみて、また微調整するという作業を行う。一度に大きく削ってしまえば楽だが、なるべく隙間なく接合したいので根気よく作業を続ける。

 ある程度できたところで、いよいよ組付けの作業を行う。

 はめ込む側の大引に木を当てて、その上からプラスチックハンマーで叩き、嵌め込んでいく。

 14時頃には全ての作業を終えて、基礎の上に土台の木材が乗る形となった。

◇  ◇  ◇

[ 土台の固定 ]

 次に土台の水平をみながら、沓石に埋め込まれている羽子板(穴の空いた金属板)と土台の木材である大引をコーススレッド(ネジ)+コーチスクリューボルト(先端がネジ状のボルト)でガッチリと固定する作業に取り掛かる。

 コーススレッドは直接打ち込まず、事前に電動ドリルで下穴を開けた後、圧倒的なトルクを持つインパクトドライバーを使って打ち込んで行く。

 コーチスクリューボルトも同じくやや小さめな下穴を開けた後に、インパクドライバーの六角ソケットを使って締め込んでいく。

 これらの作業は近くの沓石を順に固定して行くと偏り歪みが出てしまうかもしれないと考え、対角線にある沓石同士を交互に行っていった。

 夕方、土台の固定作業を半分ぐらい終えた頃に、ふと風が変わったのを感じた。雨雲レーダーを確認すると雨雲がすぐ近くまで迫ってきていたため今日の作業を切り上げ、仕上げ途中の土台をブルーシートで覆い、撤収した。

◇  ◇  ◇
--経過--
進入路の工事      完了
資材の購入(基礎・土台)完了
資材置場(仮)の建設  完了
基礎工事        完了
資材の購入(床材・壁材)完了
土台          完了
 木材の加工      完了
 組付け        完了
 固定         進行中
床板貼り        NEXT

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