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第17話 開拓12日目 土台の木材加工①

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[ 開拓12日目 ]

 昨晩中に雨は降り止んだ。

 天気予報によると今日は快晴らしく、ここ数日作業が進んでいないこともあり、陽が昇り辺りが明るくなるに合わせて早速行動を開始した。

◇  ◇  ◇

 もう雨は降っていなかったが、木や草の葉は未だ十分な雨雫を含んでおり、それに濡れたくなかったのでレインウェアを着込み、まず昨日までの雨による影響を確認しに行った。

 まず建築エリアのブルーシートをはがして基礎の状態を確認するが、建築エリアの外周部分は浸水しているものの内部の方はほぼ浸水がなかった様で地表は乾いていた。

 浸水部分の沓石を固定しているモルタルは触ると崩れるほど柔らかくはなっていないものの、それほどガッチリ固まっている風でもなかった。強くこすれば削れてしてまう程度の硬さだ。

 資材置き場では下の方に置いていた木材は若干濡れていた。

 資材置き場はコンクリートブロックで底上げした上にベニア板を敷き、その上に資材を置いていたが、ベニア板と木材の間に雨が侵入してしてしまった様だったので今日の作業に向けて木材同士の間隔を離して風通しを良くし乾燥させておく。

 工具類と発電機はまったく無事な様で良かった。

 進入路の強度が心配だったので軽自動車は林道脇に置いたまま、人力で車内の荷物を建築エリアまで運んで今日の作業を始めた。

◇  ◇  ◇

 7時半頃に林道を登ってくる軽トラがあった。地元の人が大雨による山の被害状況を見に来たらしく向こうから話しかけられた。

 嫌々ながら少し雑談に付き合うと、私の土地とは離れた場所ではあるが山の斜面で小規模な土砂崩れが起きた場所があったらしい。道路も暴風雨によって枝や葉っぱや小石が散乱している状態らしい。

 また林道に入る前のアスファルト舗装の道路で大きな落石があったらしく、小型車はギリギリ通れるものの大型車は通れないだろうとのことだった。

 また、大雨を山の中で過ごしたことを話すとかなり驚かれて、なぜか『若いのに頑張ってるね〜』と褒められた。

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 今日からの作業は基礎の上に設置する『土台づくり』の作業となる。

 今回、土台は3本×4本 合計12本の角材を直接基礎の沓石の上に置いて、ボルトで固定する。使用する角材は防腐加工された断面が正方形になっている4×4(フォーバイフォー)の角材である。

 土台は角材を基礎の上に直接置かず『床束』という短い柱をたてて基礎と土台の間に挟む方法もあり、その場合の方が土台と地面の間のスペースが広く取れて、床下の乾燥や床下を収納場所として使えるメリットもあるが、今回は作業工程を省くため省略した。

 今回の小屋づくりは集中して取り組める期間に限りがあるので、複雑で高いクオリティを目指すことより、なるべくシンプルなモノをあくまでも期間中に完成させることを目標としている。

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[ 作業準備 ]

 まず作業場所を確保する。

 例のごとくコンクリートブロックを使って、角材を地面から少し離して水平に作業できるようにする。今回の作業からはいよいよ電動工具である電気マルノコを使っていくため自家発電機も近くに準備しておく。

 次に、土台に使う角材を実際に基礎の上に置いて確認する。基礎は完全に計測して設置してはいるが万が一ズレが生じていないかを再確認しておくことにしたのだ。また角材のそりを確認し組付けする際の向きを決める為でもある。

 今回使う角材は建物の重量を支える重要な部分ということもあってかなりの強度が求められるが、その反面非常に重い。角材をそのまま持ち上げることはキツいので、移動させる際には引きずる様して運び、沓石に乗せる際には角材の片端ずつ持ち上げることで沓石の上に置いていく。1人で行うにはかなり大変な作業だ。

 予定通りの場所に木材を置くと、4本の角材の上に3本の角材が乗る形となった。最終的には土台は12本の角材全ての高さが揃う様にするため、角材同士がお互いに交差している箇所を凹状に削る『欠き込み』と言う加工を行い、組み合わせる。

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[ 墨付け ]

 次に角材を加工する場所に目印を付ける作業を行う。この作業は『墨付け(すみつけ)』と呼ばれるが今回は普通に鉛筆を使って行う。またこの墨付けの後に木材を加工することを『刻み』と言う。

 複雑な『墨付け』や『刻み』は大工の職人技が光る芸術的な世界であるが、私は素人なので今回はすべてシンプルな直角と直線のみを用いて作業を完結させる。

 今回、墨付けに使用するのは指矩(さしがね)という直角が簡単に測れる定規とメジャーと鉛筆だけである。設計図通りに作れるのは規格化されたホームセンターの角材を使っているからであり、いつでも何処でも同じものが簡単に入手できるという現代の流通体制の恩恵を最大限享受している。

 メジャーと指矩で測りつつ、加工する部分に鉛筆で印をつけ、それらを線で結んでいく。

 次は『刻み』を行う。

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