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第46話

「黒邉さんが、負けた……」
「バカな……黒邉さんのアーティナル・レイスが、こんな……ランキングにも乗っていないようなやつに……」

 ナオがとった常識外のポイントと黒邉の敗北に、周りの面々は驚嘆の表情を見せた。

「私の勝ちですね」

 リングの上から言うナオと指示台にいる澄人に、黒邉は顔をこわばらせて言う。

「……今のモーション、どこから拾ってきたんだ? 非公式のモーション配布サイトにも、あんな技はなかったはずだ」
「そんなことはしていない。僕がやったのは、武装の調整くらいだ」
「嘘をつくんじゃねぇ! バトル前に、どっかからダウンロードしてきたんだろ!」
「澄人は嘘など言っていませんよ。あれは私が自分で考えた技ですから」
「自分で……だと?」
「A.R.B開発の際、先行量産型である私が、テストとモーション作成をおこないました。先ほどのモーションは、その時に考案した技の一つです。ただ、関節部へかかる負荷が高いことや強力すぎるという点などから、実装はされませんでしたけど」
「……そういうことかよ」
「ペンダントを返してください」

 ナオはリングから下り、黒邉の前へ行ったが、

「そいつはできないな」

 黒邉はニヤリと笑い、拒否をした。

「……約束をしたはずです」
「なんのことか、さっぱりわからねぇな。そもそも俺は、勝ったら返すなんて言っていないぜ?」
「……!」

 ナオはメモリの記憶から、ゲームセンターにくる前の、黒邉との会話を確認する。

 確かに『返す』とは一言も言っていない。

「てか……まさか、A.R.Bのテストとモーション作成をした、先行量産型だったとはな……」

 黒邉はリングへ上がると、ナオの攻撃を受けて膝を崩しているフミヒメのところまで行くと、

「マスター……もうしわけありま――」
「――この役立たず!」

 いきなり足で蹴った。

「てめぇのせいで、恥をかいちまったじゃねぇか!」
「もっ、もうしわけ……きゃっ――」
「謝ったって結果は変わんねぇんだよ! この……ポンコツが!!」

 髪を引っ張り、殴りかかろうとする黒邉。それを――

「やめろ!」

 走ってリングの上へ上がった澄人の声が止めた。

「なんだよ」
「この子の所有者は、確かにお前だ。けど、だからって暴力を振るうのはやめろ」
「……っぷ、はははは! 暴力を振るうなだって? そいつは機械なんだぜ?」
「機械でも、この子にはこの子の意思がある。痛みも感じるし、心だって傷つくんだ」
「何を言っているんだか。どうせお前だって、自分のアーティナル・レイスでストレス発散くらいしているんだろ?」
「そんなことはしていないし、これからもしない」
「ふーん。じゃあ、そんだけ言うんなら……そいつを俺の暴力から守ってみな!」
「っ――!」

 再び殴りかかる黒邉を目にした澄人は、フミヒメの前に立った。

「澄人!」

 ナオは急いでリングに戻るが、間に合わず、黒邉の拳が澄人に襲いかかった。が――

「ふっ――!」

 澄人はそれを手で逸らし、軌道を変えた。

「なに!?」

 目を丸くしながらも、黒邉は何発ものパンチやキックを放つが、澄人はそれをすべて逸らし、払い落としていく。

 黒邉は腕っぷしにそれなりの自信があったのだろう。しかし所詮は素人。ナオから格闘技の特訓を受けている澄人にとって、その動きは十分に捉えることができるレベルだ。

「こんのぉ――!」

 力がこもった右。だがそれすらも澄人は逸らし、

「う、うぉわ――!?」

 黒邉はその勢いがついたまま、リングの床へと転び倒れた。

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