バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

10 応報

 依頼の帰り。陽が傾き始めた森は、薄暗く不気味だ。マリアは、小さくふるりと震えた。

「どうしたんだ?」

「ちょっと向こう行って来て良い?」

「怖いんだったら、付いてくぞ」

「いや、良いから」

「でも」

「トイレだから! 覗いたり、音聞いたりとか、絶対しないでよね?!」

「お、おう」

 俺はその剣幕に頷くしか無かった。いつまで経っても、マリアは帰って来なかった。

 森中を探したが、何処にも見つからなかった。




 俺はギルドへ駆け込んだ。その瞬間広がる「またか」という空気。俺は受付に駆け込む。見覚えのない顔だ。

「おい受付嬢、依頼だ! 森での失踪事件、報酬は金貨1枚、100000ディルだ!」

「はい、承りました。緊急依頼として受理します、ですが、ただ今事務処理が立て込んでおりまして、しばらくお待ち下さい」

「どれくらいかかるんだ」

「……ちょっと聞いて来ます」

 そして待つこと10分。受付嬢が現れる気配はない。

「なめやがって……」

 怒鳴り散らしたい衝動に駆られるが、逆にこの時間で俺は幾分冷静さを取り戻し、それが完全な悪手ということも分かっていた。

 恐らく、俺は嵌められたのだろう。一体誰が。声を掛けた知人に無視された。罪悪感すら感じさせない見事なスルーだった。ここにいる冒険者は皆、グルだろうか。

 あり得る。仲間を俺に殺された恨みで、冒険者らに襲われた事もあるしな。

 そういえば、なんで俺はマリアがいなくなっただけでこんなに取り乱しているのだろうか? 俺のパーティメンバーがいなくなった時、俺はこんなに必死になっただろうか? 答えは否だ。ならば何故。


 それにしても完全に油断していた。俺がそうしない限り、マリアが行方不明になるなんて、想像もしていなかった。マリアがいないのでは、今までお金を稼ぎ続けた意味が無いじゃないか。

 俺は憧れていた。一回の依頼でザックザクと金貨を稼ぐ冒険者に。そして先生より裕福になって、孤児院の皆を見返す事に。その為なら何でも犠牲にしてきた。例え仲間の命でも。だから俺は、冒険者として恥ずべき行為はしていない筈だ。


「くそっ」

 なんだこの思考は。果たして俺はここまで薄情な性格だったか? まるで俺が俺じゃ無くなったみたいだ。

しおり