魔法を使ってみよう
私は図書室で借りた本を読み始める。
「あれ? 固い本を読んでるなんて。普段は小説しか読まないのに。」
アンヌが声をかけてきた。
確かに私は小説、特に恋愛小説が大好きだった。
白馬の王子様に憧れていた。
しかし、現実を知ってしまった以上、私は夢なんて見ない。
「私だって、たまには教養になる本だって読むわ。」
生き延びる為には知識が必要なんだから。
でも、わずか10歳の子供が読むにはやっぱり違和感がある。
短い期間だが王妃教育を受けていたけど、正直この国の歴史とか、王族としての心構えとか貴族のマナーとかダンスのレッスンとか元孤児である私にとっては苦痛の何物でもなかった。
……そのおかげで、少しは理解できるからやった甲斐はあるんだと思う。
借りた本の中で私が一番気になったのは魔法の本である。
書いてあるのは基本的な魔術だけど、魔力を持っているのであればやはり使いこなしたい。
私は中庭に出て魔法書を片手に早速呪文を唱えてみた。
「エルデ・モン・トラージュ!」
この呪文は体を宙に浮かばせる魔法だ。
すると、私の身体が少しだけ宙に浮いた。
フワッと身体が軽くなったのだけどバランスを崩して私はこけてしまった。
「いたた……、でもやっぱり魔法は使える事は出来るみたいね。」
少しずつだけど、魔法を覚えていく事にしよう。
上手に使いこなせるようになったら私は冒険者か魔導士にでもなれればいいな。