バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

134話 レジスタンス、始動!

「ふ~ん? エルフの方も結構ヤル気なんだな」

 翌日、領主様のお屋敷から戻って来たレン君、ヒメ、それにアイン小隊メンバーは、今は空き家同然のあたしの家に集まっていた。そこで双方の情報交換が行われているところなの。
 帝国に復讐を望むエルフが予想以上に多い事に、レン君が意外そうな声を出している。

「そうだね。ボク達が迷宮街まで連れて行くのは二百人近くになるんじゃないかな? 建築系の職人さんも必要だろう?」

 お姉ちゃんの言うように、エルフの他にも迷宮街拡張のためのマンパワーは必要だ。そのため、エルフ以外にも連れて人数は自ずと増える。

 また、職業訓練及び斡旋所の話が出たので再度エルフに確認作業を取っているらしいんだけど、そちらで手に職を付けられるならそっちの方向で、という人も多分出てくるだろうという事らしいわね。
 なので実際に即現場、という人は減ってくるかも知れない。何しろ他に出来る事が無い、だから仕方なく冒険者を志す。そういうケースも少なくないんだよね。ちゃんと食べて行けるだけの技術を身に付けさせてくれる所があるなら、命懸けの冒険者を希望する人は減るとあたしは思うんだ。

「帝国兵の方は百人前後になります。レンの師匠である百人隊長さんがいるのでこちらは混乱も少なかったんですよ」

 ヒメの話では帝国からの投降兵に関しては問題なし、と。それにしても、レン君の師匠って人望があるのね。

「彼等の移動に関しては、こちらに護衛任務で一緒に来ていた騎士団がそのまま引き続き任務に当たる事になっている。エルフ達の移動とスケジュールを調整して共に行こうではないか」

 なるほど、来たメンバーでそのまま戻るのも混乱が無くていいよね。となると、あとはセラフさんの方で動いているエルフの方だね。

「まあ、それはセラフさんの結果が出るまでのんびり待つ事にしようよ。ボクは屋台通りで食べ歩きを希望する!」
《さんせ~い!》

 お姉ちゃんの案に女子全員が乗った。レン君はやれやれ、って感じね。
 ……そうだ!

「ああ、レン君は乗り気じゃないみたいね? ヒメと二人きりがいいのね? そうなのね? よ~し、あたし、友達だから一肌脱いじゃおう! 皆さん、ここは若い二人に任せてあたし達は別行動といこうじゃありませんかっ!」

 もちろんレン君以外は一も二も無く賛成。一番大きな声で賛成してたのはヒメだ。ホントにこの子は可愛いわ……

*****

 数日後。あたし達は迷宮街にいた。領都から引き連れて来たのは元帝国兵百人余り。エルフが五十人余り。各ギルドがら派遣された職人が五十人余り。かなりの大所帯だ。
 ここに来なかった帝国兵は貴族の息が掛かった敵対的な連中。そして町人として王国に移住する事を希望した者で職業訓練を受ける者。エルフでここに来なかったのは要注意人物の長老他二十人。そして領都での生活を望む者達。そして狩人として暮らす事を望んだ者の中でヒューマン種との関わり合いが少ない宿場町での生活を望んだ者。

 そして、更にその中でも事前の面接で帝国に挑む事を決意した人達。帝国兵九十七名、エルフ四十三名。計百四十名がヒメの前に並んでいる。

 ヒメは居並ぶ聴衆を前に、帝国の野望を打ち砕きあるべき姿へと戻す為に戦う事を宣言した。 
 ここに反帝国レジスタンスが結成され、形式上はヒメをリーダーとしレン君がその補佐をする。実働部隊の指揮はレン君の師匠の百人隊長さん。細々とした事はまだこれからだけど、ヒメとレン君の目的の第一歩は踏み出された。

「レジスタンスの皆さんは、冒険者登録をしたばかりの5級冒険者です。本来ならば迷宮に入る事は許可出来ませんが、形式上騎士団に所属していただく事で抜け道的に迷宮に入ってもらいましょう。パーティは四人から六人編成で。帝国兵とエルフは混成でお願いします。理由は様々有れども目的は同じ。協力してもらわねば困りますからね」

 とはセラフさんの弁。おそらくは冒険者ギルドと領主様の間で何らかの取り決めがあったのだろうと思う。

「内心微妙な思いを抱いている方もいらっしゃると思いますが、どうかよろしくお願い致します」

 元皇族であるヒメが、いや、ここにいる帝国兵にとっては今も皇女であるヒメが、木っ端の如き自分達に深々と頭を下げる。これに心を打たれない者はいなかった。
 結果、この行為が切っ掛けで帝国兵はエルフに歩み寄り謝罪する事になる。そしてここに居る帝国兵に限って言えば、エルフもそれ程憎悪の対象では無かった為に両者に険悪な雰囲気は殆ど無くなった。

「それにしても、こんな街の中でレジスタンスの設立宣言をして大丈夫なのかい? この街がレジスタンスの活動拠点になる訳だろう?」

 イングおにいと充実した夫婦の時間を過ごしたらしいメッサーさんが言う。確かに、この迷宮街に帝国のスパイが入り込む可能性はあるもんね。

「冒険者に関してはその心配はないですよ? 冒険者はどこのギルドの所属か分かるようになってるんですよ」

 となると商人や職人が心配?

「それもまあ何とかなると思いますよ?」

 セラフさん、さっきからヤケに自信たっぷりだけど、何か策でも有るんだろうね。

「フォートレスの皆さんがエルフの里に行っている間、私達も何もせず過ごして訳では無いんですよ。帝国がそのつもりならこちらも備える必要が有りますからね」

 彼女の説明によれば、この迷宮街そのものを対帝国の反抗拠点にしてしまおうという事になっていたらしい。

「この街に常駐している人達は、みなレジスタンスのバックアップをする事で団結してたりします。なので、警戒すべきはエルフの里襲撃以降に迷宮街に出入りした者だけという事になります。もちろんギルドと軍の腕利きが監視してますよ」

 ほえ~、知らない間にそんな事になってたのね! すごいや!

「ふふっ、ヒメ達の活動はこの街では公然の秘密と言うヤツか。恐れ入ったよ」
「恐れ入ります」

 そんな感じで立ち上がったレジスタンスは、迷宮で実戦訓練を積む事になる。あたし達も教官の真似事をしてみんなを鍛え上げたよ。そして三か月程経ったある日の事。

「主要メンバーの皆さんは支所の大ホールへ集合して下さい」

 召集を掛けたのはこの迷宮街の騎士団を纏め上げているアインさん。
 あたし達パーティの他にも、レジスタンスの隊長格や高ランク冒険者、エルフのまとめ役的なポジションに着いたコルセアさんが呼び出されている。

「先程届いた連絡によると、この迷宮街は王国の管理下を離れ独立自治区という扱いになった」
「辺境伯閣下が国王陛下を説得していたのかい?」
「そうだね。王国から独立する事によって表立って動く事が出来るという訳だ。今まではこちらから仕掛けると王国が仕掛けた事になってしまう。帝国に口実を与えるのは好ましくないだろう?」

 アインさんが得意気に微笑む。それを聞いていた参加者も不敵な笑みを浮かべていた。なるほど、あたし達が行動を起こしても、王国は我関せずとすっとぼければいいって事ね。

「ともあれ、王国から離れたと言ってもバックアップは引き続き行われるから、心配は無用だ。思う存分動けるぞ」

 ははは、そんな事になってたなんて。凄いや。

「では皆さん、反抗の狼煙を上げましょう!」

 ヒメが力強く叫ぶ。そしてここにいる全員が雄叫びで応えた。

 

しおり