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211 リリアンヌ様の悪だくみ

 リリアンヌ様が私とキリカちゃんを離すと、すたすたと屋敷に向かって歩いて行く。
 屋敷のドアを使用人が開くと同時に、リリアンヌ様が屋敷の中に向かって叫んだ。
「パーティーを開くわ!すぐに準備を始めてくださいませ!」
 リリアンヌ様の言葉に、屋敷のそこかしこから何人もの人がリリアンヌ様の前に現れた。
「王都に滞在中の爵位のあるご婦人やお嬢様にはすべて招待状を出してちょうだい。明日までに間に合うのであれば近隣の領地へも。それから、街には立札を。税金を年に金貨10枚以上収めている家庭のご婦人やお嬢様もパーティーへ参加するようにと。とにかくたくさんの女性を集めて!」
 指示を聞いた使用人たちが自分の仕事を遂行するために足早に散っていく。
「陛下の言葉を裏返せば、一部の人間の楽しみじゃなくなればば、国を動かすということですわよね。だったら、数えきれないほど多くの人が楽しめるということを、教えて差し上げますわ!ふふふふっ!首を洗って待っていなさい!妻や娘にチョコレートを乞われ続けたどれだけの貴族や豪商が、陛下に陳情するかしらね?ふふふふふ!おーほほほほっ!」
 あ。
 リリアンヌ様が一瞬悪役令嬢に見えた。気のせいですね。はい。
「というわけで、パーティーは明日の午後よ!それまでにチョコレートのお菓子を山のように用意しないといけません。ユーリちゃんにもお手伝いお願いできるかしら?」
 私?
「はい、私に手伝えることがあれば」
「キリカも手伝うのよ!」
「俺も!できることがあるなら」
 と、元気よく返事をしていると、リリアンヌ様の目がブライス君に止まった。
「まぁ、まぁ、あなたは?」
「初めまして。僕はブライスと申します。ローファスさんと行動を共にするB級冒険者です」
 ブライス君が綺麗な笑顔でリリアンヌ様に事項紹介をする。
「嘘ですわ!」
 リリアンヌ様が言い切った。
 いや、嘘じゃないよね?
 まさか、ブライス君みたいな小さな子がB級冒険者だというところが怪しまれた?
「あんな粗野な息子に、こんな上品な子が一緒にいてくれるなんて、嘘ですわ!」
 そ、そこなの?
「……」
 ブライス君の顔が複雑な表情を取った。
 うん。まぁ、あれだね。確かに迷惑こうむったりもしてたりするのは事実だったりするから……なんで一緒にいるのか疑問に思う人もいるようないないような……。
「ローファスさんのお目付け役だよな!ほっておくと、ユーリ姉ちゃんのご飯食べたくて小屋に入り浸るかもしれないからだろ?」
 カーツ君……。さすがに、お母さんの前で息子の悪口は……。
「お、お目付け役……その手がありましたか……。ブライス君、息子のお目付け役はわたくしが引き継ぎますわ!ユーリちゃんの料理を食べに来ないように、私が、ユーリちゃんと一緒にいて、来たら息子を叱りつけてやりますから!」
 え?
「あのね、キリカたちは小屋に帰るのよ?リリアンヌ様とずっと一緒にはいられないのよ」
 はい。そうです。ありがとうキリカちゃん。まさか屋敷に残れと言われても困ります。
 あ、リリアンヌ様が膝をついた。
「ローファスさんには、冒険者見習いの時から小屋でとてもお世話になってきました。多少強引なところはありますが、いろいろと勉強をさせていただいております」
 ブライス君がにこっとわらってリリアンヌ様に手を差し伸べる。
 そうだね。結局、ちょっと迷惑したって、ローファスさんにはお世話になってるし、第一……嫌いになれないんだよね。だから一緒にいるんだよね。
「あら?息子から勉強?むしろ、ブライス君が息子にいろいろ教えてあげているのではなくて?」
 リリアンヌ様、それ、無きにしも非ずだけど……。
「まぁいいわ。ブライス君もパーティーのお手伝い頼んでもよろしいかしら?」
「ええ、僕にも手伝えることがあれば」
「あるわ!あるわ!ふふふ。さぁ、みんないらっしゃい!」
 と、私とカーツ君とキリカちゃんとブライス君が連れていかれたのは、それはそれは大きな……衣裳部屋でした。
 あれ?
 使用人が10名ほど、体のサイズを測ったり足のサイズを測ったり、服を選びだしたり靴やアクセサリーを私たちの体に当てたり……。
 なんでしょう、これ。
「うちには16人も子供がいますからね。様々なサイズの洋服がありますのよ」
「キリカ、パーティーのお手伝いするんでしょう?」
「ええ、そうよ。当日はたくさんの方がいらっしゃいますからね。おいしい顔してチョコレートを食べて、美味しいよどうぞとお客様におすすめしてくれますか?」
 ああ、なるほど。
 初めて見る食べ物で、口にするのを躊躇している人も、小さな女の子がおいしそうに食べているの見たら安心して口に入れますよね。
「ユーリさんには、興味を持った方にチョコレートの元になるものは輸入しなければ入手困難だと教えて差し上げてくださいます?」
「あ、そうですね。説明できる人がいたほうがいいですよね。分かりました。手伝わせていただきます」

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あれ?リリアンヌ様、璃々亜みたいね?
……立場といい、食べ物に対する姿勢といい……
おかしい……。
名は体を表す……
おかしい。

注*璃々亜とは「オタクガール、悪役令嬢に転生する。」の腐女子である。

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