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第31話 復路

 部屋で駄弁っていると、疲れたような顔でローグが、アスカはハイテンションで戻ってきた。

「あれ、お前らどこ行ってたんだよ」
「それはこっちのセリフだっつーの。気づいたらいねーしよ」
「んなことより、明日の準備しようぜ」
「んなことって……」

 明日イクトたちは学院へと戻り、学院長へ話さなければならないことが多くある。王宮で王様に聞いたこと、魔導書(グリモワール)のこと、そして、天空魔法のこと。

「ん? なんだよ、その薄汚い本は」
「これか? バザーにいたおっさんから貰ったんだよ」
「ふぅん?」
「ふにゃー!」
「んー? ……何やってんだ、お前ら」

 声がした方を見ると、アスカがメイビスに抱きついて頬擦りをしていた。

「くさっ! お酒くさっ! あんた、お酒飲んだの!?」
「にょんでにゃいよー?」
「酔ってるじゃない!」
「そーんにゃことにゃいよー」
「何があったんだ、あれ。って、いねーし!」

 ローグに何があったのか聞こうとしたらローグがいなかった。ドアが開いているので逃げたらしい。
 イクトも部屋から出ることにした。ローグを探しに行くためだ。部屋から出る際何か聞こえた気がしたが気のせいだろう。だが、部屋から出てすぐのところにローグがいた。走って転んで頭を打ったらしく、頭を抱えて悶絶していた。

「何やってんだ、お前」
「ぐおー、頭が。頭がー」

 ローグを部屋に連れ戻して何があったのか聞くことになった。

「で? なんで、アスカはあんなに酔ってるんだよ」
「知るか。酒も飲んでねーよ」
「じゃあ、なんでこんなに鬱陶しいのよ。だー! 離れなさい!」
「いーやーやー」
「本当に飲んでないのか?」
「そういや、酒は飲んでねーけど、出店で売ってたやつは飲んだな」

 ローグが取り出したのは、なんの変哲もないただのグラスだった。

「ただのコップじゃないか……ん?」
「どうしたの、イクト?」
「この匂い、りんご?」
「え? ふんふん。あ、確かにりんごの匂いがする」
「え。これ、りんごジュースじゃないのか?」
「いや、りんご酒。つまり、お酒だ」
「マジかー、ジュースだと思って飲んでたわ」

 ここで、ローグたちが飲んで来たものがりんご酒であることが判明した。

「つーか、今思ったけど、これグラスだよな。なんでこいつ持ってきてんだ」
「え、返すものなのか!?」
「お前も酔ってんのかい!」

 いつの間にか寝ていたアスカと、無理矢理眠らせたローグをベッドに運び、イクトたちも明日に備えて寝ることにした。そして、次の日。

「頭と腹いたい」
「そりゃそうだろうな」
「なんでこいつはくっついてんのよ。ていうか、ベッド寝かせたはずなのになんでいるのよ」
「相変わらずカオスだな」

 帰りのの馬車までまだ時間があるため、食堂で朝ごはんを食べてから海で時間を潰すことにした。

「うーみー!」
「なぁ、火と水って相性悪いんじゃなかったか?」
「あれをみたらそうも言えねーな」
「まだ頭と腹痛いのか?」
「ああ……なんでだろうな?」
「飲み過ぎ食い過ぎだろ」
「全然記憶にねぇ」
「記憶無くすほど飲むか? ふつう」

 メイビスとアスカが海で仲良くはしゃいでいるのを砂浜から見守るイクトとローグ。端から見れば、子どもを海へ連れてきた兄といった感じである。

「こんな平和な時が長く続けばいいのになぁ」
「平和、ねぇ」

 イクトは、一昨日王さまが言ってたことを思い出していた。「色々あってな」確かそう言っていた。それが少し気がかりであった。

「……ま、いくら考えても仕方ないか」
「イクトー!」
「ん?」
「お腹すいた!」
「なぁ、メイビス」
「なに?」
「お前、どんどん子どもっぽくなってないか?」

 その一言に同意するように、ローグとアスカも頷いていた。

「むー!」
「そろそろいい時間だな」
「え、もうそんな時間なの?」
「ああ。11時だし、部屋戻ってシャワー浴びて準備しようぜ」
「仕方ないか」

 イクトたちは一度部屋へ戻り、シャワーを浴びて準備をした。準備といっても、最終確認のようなもので、忘れ物がないかをチェックする。

「よし、準備完了。いざ、学院へ向けて」
「出発ー!」

 宿屋を出て、馬車に乗り込む。帰りは来た道と逆のルートを通ることになる。
 王都アイリーンを後にして、一行はシェリーの街へ向かい、そこから列車でオスカーの街へ向かう。そこから再び馬車に乗り、学院へと向かうことになる。

「……」
「どうした、イクト?」
「いんや。いい街だったなーって」
「そうだな」
「どうせならお祭り最後までいたかったー」
「無理だって。俺たちは学院長の厚意で行かせてもらっただけだからな。終わったらすぐに戻る。それが大切だと思うぜ」
「むー」

 そうして、一行は学院へと戻ってきた。
 たった3日留守にしていただけであったが、学院ではとある事件がおこっていた。イクトたちを試すような事件が。

「ねーねー、お父様。お客様は?」
「何を今さら。もう帰られたよ」
「えー! 太古の魔法(エンシェント・スペル)見せてもらおうと思ったのにー」
「ははは。まだ無理さ。そうだな。2年ってところかな。少なくとも2年は待たないとな!」
「うー。会いたかったなー、私のお姉さま」

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