バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第29話 スカイエリア

 宿から外へ出ると、もうすでにお祭り騒ぎであった。すでに、王国祭は始まっていた。
 国内外からたくさんの人が押し寄せる王国祭は、キラウェナ王国最大のお祭りである。
 このお祭りでは王国主催でさまざまな催物が開かれる。もっとも人が集まる催物。それが、魔道大会「バトル・オブ・ザ・スカイアリーナ」である。毎年ルールが変わり、同じルールは連続することはない。他には錬金術師同士が自らの腕を競う錬金大会や、大小様々なイベントがある。

「そして、ここが毎年魔道大会が開かれる闘技場、スカイエリアよ」

 闘技場スカイエリアは、文字通り空中に浮かぶ闘技場である。王都アイリーンから少し離れた海洋上に浮かぶこのスカイエリアは、3つのエリアに分かれる。一つ目が、観客を収容する観戦エリア。二つ目が、下層にある控えエリア。そして三つ目が、メインの大会が開かれるスカイアリーナである。

「すげー!」
『さぁー! 今年もやって参りました、王国祭の恒例行事にして最大の目玉イベント! バトル・オブ・ザ・スカイアリーナ! 今年はどこのチームが優勝するのでしょうか! この大会は5日間かけて行われた、勝ち抜き形式のバトルロワイヤルを見事に勝ち残った7つのチームによって争われます! この大会で必要なのは、力だけでは非ず! 知技心全てが揃ったものが勝つことが出来るのです!』
「予選なんかあるんだな」
「そりゃそうよ。国中から参加者が集まるんだから」
「特に参加条件もないしなぁ。あ、でも2つあった」
「どんな条件だ?」
「当たり前っちゃ当たり前なんだが、登録メンバーが全員魔道士であること。そしてチームであること」

 ちなみにこの2つのルールはかなり大雑把である。
 一つ目の全員魔道士であること。これは魔力を魔法に変換して扱う魔道士と、魔力を持たないものの、魔法武器を扱う魔道士の2つのタイプの魔道士がいるため、ルールとしては意味を成していない。そもそもの魔道士の定義からして「魔法を扱える者」という定義しかない。
 二つ目のチームであること。これは、参加メンバーの上限は5人と決まっているものの、登録メンバーとしての上限下限は決まっていない。つまり、予選会に100人参加して100人全員が通過しても本戦には5人しか参加出来ないし、逆に100人のうち3人しか通過出来なかったら3人で本戦に臨むことになる。ただし、特別ルールとして「一回のみ参加メンバーと登録メンバーを交代してもよい」というルールがある。

「すげー歓声だな」
「さっき聞いたルールだと、いわゆる優勝候補のチームでも全員が残って本戦に出るのは難しいんだな」
「ま、そうでもないんだけどね」
「え?」
「このルール、穴が多いのよ。わざとなのか偶然なのか知らないけど」

 本戦参加メンバーは、最大5人である。先のルールに照らし合わせると、仮に100人が予選を通過した場合、その中から本戦参加メンバーを選出することになる。このうち例えば3人しか通過出来なかったとしても、2人分の枠が空く。この2人分の空いた枠にはメンバーがいるという前提がある。つまり、ルール通りにいくと、メンバー交代した際、例え本戦参加が1人でも2人でも、それが5人になる。これは、交代最大人数を制限していないためだ。

「なんじゃそのルール。それじゃあ、好きなときにメンバーを交代出来るじゃん」
「いや、そうでもないさ」
「そうなのか?」
「ああ。交代は大会中一度のみだ。そうじゃなきゃ、好き勝手にメンバーチェンジが可能になるからな」
「そりゃそうか」

 司会が観衆を煽るように参加チームを紹介していく。そのなかに象の花(エレファントブロッサム)もあった。

「え、あの連中戦えんの? 喧嘩ばっかりしてる印象なんだけど」
「マスターのアリアさんを筆頭に、魔道士としては使い手ばかりよ? 毎年決勝優勝か準優勝だし」
「まじかー」
「ここ3年間はずっと優勝してるわよ」
「え、うわっ! あ、アリアさん!?」

 4人の目の前にアリアが現れた。眼下に広がるスカイアリーナにもアリアがいるので、余計に驚きだった。

「ど、どういうこと?」
「まさか、魔法?」
「そうよー。あそこで行進してる私は魔法で精巧に作られた魔法」
花の人形(フラワーゴーレム)ですね!」
「あら、そうよ。よくわかったわね」
「花魔法の使い手だし、わかるでしょう」
「でも、こんなところにいていいんですか? 説明とか」
「ああ、いーのいーの。今回の大会、ギルドマスターは参加出来ないから」

 今大会に追加されたルールとして、ギルドマスターの参加禁止がある。ギルドマスターだからといって強いとは限らないが、あくまでも公平を期すためである。

「それよりも王国祭、見て回らなくていいの?」
「あ、そうだった」
「明日の午後には戻らないといけないんだったよな」
「名残惜しいけど、仕方ないか。じゃあ、アリアさん。また!」
「またねー」

 名残惜しかったが、イクトたちはスカイエリアを離れてアイリーンへと戻った。

「さっきメイビスちゃんが持ってたのは魔導書(グリモワール)だよね。まさかとは思ったけど、メイビスちゃんが魔導書(グリモワール)に選ばれるなんて。来年、面白くなりそう♪」

しおり