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114話 どこまでいっても愚かにして高慢

「この首輪のような物が奴隷の証?」

 捕えたエルフの人達は、全員首に革製のベルトを巻いていた。それを見たレン君は彼等を奴隷だと言う。

「レン君の世界じゃ奴隷には首輪をつけるのかい?」
「ん~、奴隷というのは極論かも知れないけど……俺達の世界ではペットには首輪を付けるのが一般的なんです。つまり相手を同等の存在とは認めていない。自分は主でお前達は隷属するものだ。若しくはお前は俺の所有物だ。そんな意味合いがあるんすよ。転じて、奴隷に首輪、なんていう特殊な世界もあるんです」

 興味深そうに聞いたお姉ちゃんに、レン君が苦々し気な表情で答える。同じ人間(エルフ種だけど)をペット扱いするかのような行為をしている存在に対する嫌悪感がありありね。

「へえ、こっちじゃ隷属魔法で縛り付けるからそんな目印になるようなものは使わないんだけどね」
「自分が誰かの所有物になった証に首輪を付けられるってのは、かなり精神的ダメージが大きいんじゃないですかね? 錠前を付けて外せないようにしてあるのを見ると、そういう狙いも有りそうですけど」

 レン君とお姉ちゃんの話を聞いてて感じる嫌な予感。レン君の世界で通用する知識がここで使われてるって事は……

「また父が別の召喚者を……?」

 ヒメも思い当たったみたいね。

「……だろうな。しかも今度のヤツは、積極的に帝国の悪巧みに加担している可能性が高い」

 排他的ではあるけれど、基本的に人間社会には不干渉のエルフを攻めるという事は、帝国の一方的な侵略行為にほぼ間違いないだろう。しかもエルフを奴隷にするあたりがなんともゲスい。今度の召喚者は碌なヤツじゃなさそうね。

「う、ううん?」

 気絶していたエルフが目覚めたみたいね。もっとも、今は拘束されて捕虜状態なんだけど。

「な、なんだこれは!? 解け! この人間風情が!」

 一人が騒ぎ出すと残りの四人も次々と目を覚まし……

「これはどういう事だ! 下等な人間が我らエルフにこのような!」

 自分達の状況を理解した上での罵詈雑言。思った以上にエルフって酷い種族だった。思わず本音がポロリと口をついて出てしまう。

「迷宮街に逃げて来たエルフもそうでしたけど、殺しておけばよかったですね。むしろ絶滅してしまえばいいと思うんですが」

 助けられてなお、傲慢だったらしいエルフ。お姉ちゃんやお母さんがされた仕打ちを抜きにしても、エルフという種族に憎悪を抱いてしまいそう。

「な、何だと!?」

 あたしの言葉を聞いたエルフが攻撃的な視線を向けてくる。でもね、拘束されて転がってる状態でそんなに睨んでも、滑稽よ?

「おい、腐れエルフ共、良く聞きなよ? ボク達は帝国に制圧されたというエルフの里から逃げ延びたエルフを保護し、治療してあげた。そしてエルフの里の状況を確認するよう迷宮街から派遣されて来た冒険者なんだ。そのエルフも助けてもらった礼も言わずに『人間如きがー人間風情がー』ってバカみたいに喚いてたよ。今の君達みたいにね」

 お姉ちゃんは眼光鋭く、転がっているエルフ達に話しかけている。そのお姉ちゃんの身体からは、今にも燃え上がりそうな赤い魔力がゆらゆらと立ち上っているのがあたしには見えた。

「まあ、僕達の目的はエルフの里における帝国の動向を探る事だったんだけど、事と次第によってはエルフを救出する事も視野に入れていた。でもそちらから先に敵対行動を取って来たんだ。殺されても文句は言えないよね? そこのところをよーく考えて口を開く事だね」

 お姉ちゃんはそう言って『紅蓮』を抜き放ち、炎を纏わせながら底冷えするような視線でエルフ達を見る。

「お、お前、その技、その炎の魔力……まさかラーヴァなのか?」
「復讐か! 復讐しに来たのか!?」
「くっ、不義の子の分際で……げはっ!?」

 今最後に言ったヤツ。レン君が頬げたを蹴り飛ばした。腰の入ったいい蹴りだったわ。あのエルフ、顎が砕けているんじゃないかしら? それにしても、レン君怒りのボルテージが凄い。

「おい。一番の悪は長老だって事も知らずにラーヴァさんを悪く言うんじゃねえ」

「復讐か。それも面白いかも知れないね。腐れエルフが帝国に利用されて滅びるよりもボクが引導を渡してあげようか?」

 バカなエルフ達にプレッシャーを掛けるお姉ちゃんとレン君に、尚反抗しようとするバカなエルフ。そこにヌッとアイギスが割って入り鋭い眼光でエルフを怯ませる。

「ひっ! なんだこの黒豹は! ケダモノの分際で!」

 ――ドパン!!
 あたしは反射的にツインライフルを発砲していた。

「次にアイギスをケダモノとか言ったら殺しますよ?」

 いけない、ついつい威嚇射撃しちゃった。てへ! 威嚇射撃が着弾したのは縛られていた木の丁度頭の上ギリギリの所。あ、また気絶しちゃった。

 ドドーンと、着弾した所から木が折れてしまったのを見て威力を悟ったのか、他のエルフ達が真っ青になる。

「皆さんも分かりました? あたし達、めっちゃ機嫌悪いんで次は当てちゃうかも知れませんよ? そこんとこ、よーーーーく考えて下さいね?」

((((コクコクコクッ!))))

 よろしい。では尋問を始めましょうか。

「皆さん、ここは私にお任せ下さい。皆さんは少々冷静さを欠いているようなので」

 そう言ってヒメは、専用の白いマギ・ガンを手にエルフ達の前に立った。

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