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21話 本人確認の方法


 砂漠の熱気にあてられて、額から汗が絶え間なく落ちてくる。空を見上げているが、雲一つない空が地平線まで続いている。
 しばらく見ていたが、景色は変わらず周りは砂と青空のままだ。

 ララに確認しておこう、俺はスマホを取り出す。

「ララ、ガイルアの反応はどうなっている?」
「今現在ガイルアの反応は1つです。先刻に反応が2つになり、1つが消えました。
 やっぱり、と言う事で宜しいでしょうか?」

「ああ、そう思ってくれ。今から帰るから、ガイルア襲来と勘違いしない様に」
「了解しました、お待ちしております」

 スマホをポケットに入れようとする時に、左肩に痛みが走った。傷口に人差し指を当て、傷口に沿って滑らせる、同時に傷口をふさぎ、砕けた骨や筋組織も復元させる。

 そうだな、ついでに若返っておこう。これからは浮遊都市で過ごすし、戸籍は改変し放題だから、若い体でも問題ないだろう。俺の中にある本体(ガイルア)を表に出し全身を覆う、顔のしわ、肌の艶、髪質を変化させる。

 後は麻衣か、気絶している体を浮かせ俺の前に引き寄せる、同じ要領で傷口を塞ぐ。よし、ついでに体を改造しておこう。<ムダ毛処理がめんどいの! >とか言っていたから永久脱毛しておこう。あとは垂れない様に、胸部と尻周りの筋肉を強化して、そして・・・・

「こ、これは・・・なんという見ごたえ、まさにグラビアアイドル」
「へ? なに? てか誰よ?」

 いつの間にか意識を取り戻した、麻衣の顔を見ると、黙って俺をずっと見ている。若返ってはいるが、面影は残っているはずなのだが、別人に見えるのか? まずは、麻衣好みの気の利いた言葉をかけてやろう。

「俺だよ俺、織田兼次だよ。真の力に目覚めて、若返ったのだよ」
「な、何てこと! つまり、あと2回変身出来るわけね」

 予想を超えた返答が返ってきたな、もっと驚くと思ったのだが。
 横の状態で浮遊している、麻衣の体を立て地面に置くと、一歩踏み込んで俺に近づいてきた。
 さらに顔を近づけてきた、この距離感は・・・

「変身ではないぞ、普通に若返ったんだよ」
「普通って何? 普通は若返らないから・・・って、手! お尻触ってる!
 はぁ、この特徴のある触り方は、本当に兼次ちゃん本人で間違いないんだね」

 麻衣は俺の手を振り払うと、後ろに後退し距離を取った。
 俺は、お尻に触れた右手を見ながら、触れた弾力の余韻に浸る。筋肉を強化したおかげで、触れた手を押し戻す感触が何とも言えない。

「でも・・やっぱり、見た目がねー」
「なら体で確認してもらおうか。体の形は変わってないから、あれで確認してくれ」

 そう言いながら俺は、ズボンのベルトに手を掛けベルトを外す。

「待って、脱がないで! 分かったから、認めるから。約束!」

 手の平を前に出し俺を制止する麻衣は、その手を腰の後ろに回した。その時「バチッ」と何かが外れる音が、胸元から聞こえた。麻衣は「ちょっと失礼」と小声で言いながら、後ろを向くと上着の中に手を入れ、忙しく手を動かしている。

 麻衣は笑顔で振り返る「じゃっ、帰ろっか?」
「何事もなかったように、話を進めるな! ブラのホック外れたんだろ?」
「そ、そこはスルーしてよ・・・」
「帰る前に、痛みとか、何か変な部分が無いか、体を確認してくれ」

 麻衣はまずお腹に手を置く「あれ? 傷が無い・・・服も元通りに」そこから更に、顔から下に手を移動させて、全身を触って確かめていった。

「お腹の傷が治っている・・・あとは、特に痛みは無いよ」
「そうか、ならいい」

「待って、何かがおかしい。何か分からないけど、違和感が・・・」

 麻衣は肩を回したり、胸周辺を手で触って確認していく、最後に背中に手を回した。
 その時に先ほどと同じ、ブラのホックが外れる音がした。

「へっ? なぜ・・・」と素早く後ろを向き、外れたホックを直している。今度は勢いよく俺の方に振り返る「なにかした?」と俺に疑いの目を向ける。

「自分の成長を素直に認めろ。っさ、帰ろうぜ」
「死から立ち直った時に、パワーアップしたのかしら?」
「まぁ、そんな感じじゃないかな?」

 暫らくの沈黙の後「ふぁああああ」と麻衣は、突然に大声で叫ぶと、両手を体の前方に繰り出す。ガイルアへの初撃で見せた、ストーム・ハッコウ砲が飛び出した。その光球は、光の線を描きつつ、地面の砂を巻き上げながら、風切り音と共に地平線のかなたに消えていった。

 麻衣はアゴに手を当てながら「威力は上がってないみたいね」
「お、おい、その方角は、街があるはずだが・・・」

 一瞬「うっ」と言う声が聞こえたが、麻衣は何事もなかったように、アゴに置いていた手を下す。そのまま俺の方に振り向く。

「帰ろっか?」
「ま、まあいい・・・帰るか」と俺は、麻衣の体を浮かせる。

「飛んで帰るの?」
「千年ぶりの力だ、感覚を取り戻しておこうと思ってな」

「ちょっと、何言ってるか、分かんないだけど」
「詳しくは戻ってから話す。行くぞ!」

 俺は麻衣の体と共に、勢いよく加速すると、その衝撃で砂煙が一面に舞い上がった。
 ある程度の上空に到達すると、進行方向を横方向に曲げ、太平洋上空の浮遊島に向かって、突き進んでいった。

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