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第1話 神話と始まりの物語

 遠い昔、創世神「ブレイズ」は、大地を作り出した。その大地は、凹凸も海もなく、広く平坦な土地であった。ガウスは、山々を作り出した。次に谷を、海を、そして陸地を。そうして、世界は出来上がった。次にブレイズは人類を作り出した。人類は瞬く間に各地へ散らばっていった。次に、人類以外の動物を、植物を作り出した。そして次に………。

「この石版も途中で途切れてるか」
「復元できないのですか?」
「無理だな。破損がひどすぎる」

 赤色のローブに身を包んだ一人の男が尋ねたことに、赤色のマントを羽織った女性がそう返した。

(もっとも、不可能。というわけでもないが)
「せんせー! こっち、すごいですよ!」
「あー、もう! 勝手に動かない!」
「ごめんなさい……」
「まぁまぁ。怒るのもそれくらいにして」
「全く。で? 何があったの?」
「あ、そうでした! こっちです!」

 薄いピンク色をしたマントを羽織る少女のあとを、赤色マントの女性はつけていった。そして、広い空洞に突き当たった。普通ならあり得ない空洞であった。

「こ、これは……」
「た、大変です! これを見てください!」

 一人の男が息をきらせて駆け寄ってきて、手に持っていた機械を女性に手渡した。

「なんだ、この数値は!」
「あり得ませんよ、この数値は」
「なんなのだ、ここは。いや、これは……!」

 彼女たちの前にあるとある物体を前にして女性は、驚かざるを得なかった。そしてそれと同時に、女性は目の前の物体に対して、恐怖を感じた。

「この遺跡は封印する」
「な、何を仰っているのですか!」
「みな、ここで見たことは忘れろ。この遺跡は、この場所は、決して開けてはならない災厄の匣だ」
「災厄の匣……」

 そうして、遺跡は封印された。発掘に関わった人間の記憶は操作され、報告書にも「発掘調査を行ったが何も出なかった」と書かれることとなった。

 それから時が流れて200年後、キラウェナ王国。
 キラウェナ王国の首都、水の都と謳われる王都アイリーンから東へ200キロ行ったところに、キラウェナ王国に住む貴族を対象とした魔法・錬金術を教える学院がある。
 生徒は6年間、魔法か錬金術をこの学院で学ぶ。どちらを本格的に学びたいか、3年目に決めることになるが、それまでの2年は、それぞれの基礎を学ぶことになる。

「で、あるからして、200年前の発掘では何も見つからなかったのです」
「先生」
「なにかな?」
「その、調査をした場所ってどこなんですか?」

 黒髪で長髪の少年が、挙手をして質問をする。彼の名は、ローグ・ザスティン。考古学を専門とする貴族の跡取り息子だ。

「ふむ、いい質問だね。だがしかし、この調査が行われていた場所がどこなのか、現在に伝わっていないのだよ」
「伝わっていない……?」
「たまたま欠落してしまったのか、はたまた、意図的に隠されたか。それすらわからないのだよ」

 先生と呼ばれた男は続けて口にした。
 男の名は、シルバー・カースネル。歴史を専門とする学院専属の錬金術師の一人で、魔道士でもある。魔法や錬金術ですら解明できない謎を解き明かすのが趣味。

「おっと、もうこんな時間か。次は、マーベル先生の魔法学だったね。頑張りなさいよ」

 そういってシルバー先生は教室を後にした。
 シルバー先生と入れ違いに、赤髪の女性が教室に入ってきた。
 女性の名は、エスカー・ヴァーミリオン。魔法学の教師である。

「さぁ、みなさん。本日は、去年教えたことの復習ですよ。魔法には、四大属性魔法と呼ばれるものがあります。なにか覚えていますか? ミスター・クレイブ」
「は、はい! ええと、炎・水・土。ええとそれから……空気、です!」
「はい、よろしい」

 クレイブと呼ばれた生徒が答えた4つの属性魔法が、それぞれの属性で空中に書き出されていく。

「ほぼすべての魔法は、この四大属性魔法の派生魔法に過ぎません。ですが、例外もあります。それが、闇と光、そして、無属性魔法です」

 空中の図に、闇と光。そして、無の文字が書き足されていく。そして、それとほぼ同時に矢印も書き足されていった。

「魔法にはそれぞれ、得手不得手の属性があります。ミス・メイビス」
「はい。炎は水に、水は大地に、大地は空気に、空気は炎に弱いです。そして、光と闇はそれぞれがそれぞれの属性に弱いです」
「その通りです。ですが、それは必ずしも絶対とは限りません。炎を扱う魔道士が水の魔道士に勝つこともあります。重要なのは、属性の相性だけではなく、魔力と経験なのです」

 メイビスと呼ばれた生徒の答えに付け足すようにエスカー先生が説明を続けた。

「ですので、例え相手の相性が良くても勝てるとは限りませんし、相性が悪いからといって負けるとも限りません。ですが、相性の悪い相手に無理に挑む必要もありません」
「あの、先生」
「はい、ミス・メイビス」
「無属性魔法ってなんですか?」
「いい質問ですね。では、無属性魔法について教えましょう」

 エスカー先生は、空中に書いていた図を消して、新たに無属性魔法について描き始めた。

「無属性魔法とは、大まかに分けて二種類あります。それは、コモン魔法と、非詠唱魔方陣です」
「非詠唱魔方陣」
「コモン魔法とは、主に日常生活で使われているような簡単な魔法です。みなさんが鍵をかけたり、開けたりする魔法などがそれにあたります。それに対して非詠唱魔方陣とは、地面あるいは空中もしくは天に魔方陣を描いて相手を攻撃したりする魔法です。魔方陣を用いる魔法はほぼすべてが無属性と思ってもらってかまいません」

 長々とエスカー先生が喋ったあと、チャイムが鳴り響き、その日の魔法学の授業は終了となった。

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