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106話 世の中、なんだかんだ言っても使い道は見つかるものだ

 アイギスはあたしにヒントをくれた。

「ねえ! あたしにもオークキングの大剣と同じ特性を持った武器、作って欲しいの!」

 そんなにあたしの言葉は突拍子もなかった?
 みんながポカーンとしている。その中で、イングおにいが口を開く。

「……お前、今までの話、聞いてたか? だからお前は魔法がつかえな――」
「分かってるの! でもアイギスが道を示してくれた! レン君がヒントをくれた!」

 そんなあたしの言葉を聞いたメッサーさんが、頷きながら言った。

「ああ、なるほど。その手があったか。でもアレは簡単な事ではないよ?」

 メッサーさんは言わんとする事を分かってくれた!

「まあ、アイギスが出来たんだ。シルトも頑張ろう! ボクも教えてあげられる事はあるからさ!」

 うう、お姉ちゃん。ありがとう……

「あー、俺達にも分かるように説明してくれるか?」

 レン君の得意技、不可視の刃(ステルス・エッジ)。魔法として成立する前の魔力を濃密に圧縮し、さらにそれを魔剣に纏わせ、剣を振り抜く時に魔力そのものを刃として飛ばす技。アイギスのネイル・シュートも同じ原理。アイギスは本能で出来ちゃってるみたいだけど。

 あたしは魔法を使えない。緻密な魔力操作なんて、会得できるとしても物凄く時間が掛かると思う。レン君だって当初は斬撃になっていなかったし、ヒメは刃に纏わせた魔力を維持する事すらできなかった。

「だからあたしのは、斬撃を飛ばすなんてかっこいい技じゃなくていい。あたしは斬撃じゃなくて打撃を飛ばすの。魔力量に物を言わせた大質量の魔力を放出する。泥臭く敵をぶっ飛ばすのがあたしにはお似合いだからね」

 モーニングスターに魔力を纏わせ、魔力の塊を敵に飛ばしてぶつけちゃう。でもそれには、それを可能にする武器が必要になる。
 それが出来るかどうか、あたしはイングおにいに視線で問いかけた。どう? 出来る? って。
 それを受けて、今度はイングおにいがコルセアさんを見た。

「オークキングの大剣を何度か打ち直している内に、魔力を纏わせるための術式はコピー出来るようになったわよ。しかもシルトちゃん用なら全属性の魔力がどうのっていう構造はオミット出来るから、オリジナルよりも簡単ね。後は素材とインギーさんの腕次第かしらね」

 素材……素材かぁ。

「ねえ、コルセアさん。あたしがモーニングスターに『リセット』掛けて修復したら、それにエンチャントする事は出来ます?」
「それは出来るわね。でも、万が一破損した時に安易にリセットで修復しちゃうと、後付けのエンチャントまで消えちゃうんじゃないかしら?」

 あちゃー、そうね。前にお姉ちゃんに掛かってた認識阻害の魔法もそれで消えちゃったんだっけ。そんなに万能じゃないのよリセット先輩。

「今のお前なら第三階層日帰り出来んだろ? キングの大剣取って来たらどうだ? あれなら材質も問題ねえだろ。三本もあればミスリルだけ抽出してオールミスリルで作ってやれるがな。それからコボルトロードのバックラーも一つあれば、硬度上昇の術式を応用できるかもだな」

 なるほど! 材質を含めてリニューアルする訳ね!

「オーケー! 大剣三本にバックラー一個ね! すぐ取ってくるから! あ、イングおにい、あたしのアブソーバー改に固定式のマギ・ライフルを二門付けといて。盾をもったまま撃てるように。じゃあ、モーニングスターとアブソーバー改は置いてくね! 二日後、一式揃えて持ってくるから」

 さあ、行こうアイギス! 今から迷宮の第三階層まで行くよ!
 あたしは希望を胸に迷宮へと駆けだした。

*****

 アイギスと共に駆け出していったシルトを見送った一同は、何とも言えない表情である。半ば呆れ気味に口を開いたのはイングヴェイだ。
「シールドにマギ・ライフルだと? 移動砲台にでもなるつもりかね、あいつは」

 それを聞いて笑ったのはラーヴァ。

「あはは! シルトは要塞、フォートレスの名を体現する者だからね!」
「それにしても、モーニングスターではこの先の戦いが厳しいという事が分かって何よりだったね。リセットで修復しながらでも戦えない事はないだろうが、邪龍を殴るには少々役不足かもしれない」

 メッサーはいつも通り、冷静に成り行きを分析していた。

「つーかよ。あいつのメイン武装ここに置いてったんだが」

 今から迷宮に潜るんだ、と息巻いて出て行ったくせに、モーニングスターとアブソーバー改という攻防において主役を張る装備を置いていってしまった。そんなシルトに対して、再びイングヴェイが呆れた。

「ああ。問題ないだろう。魔法銃(マギ・ガン)二挺に衝撃鎚矛(インパクト・メイス)、ソードブレイカーもある。シルト専用チューンを施したドラゴン装備はオーク如きでは傷一つ付けられないさ」
「そうそう、それにアイギスもいるし。凄いんだよ、アイギス。邪龍に怯まず向かって行くんだから!」

 しかし、メッサーとラーヴァは欠片も心配していない。そんな表情で微笑んだ。

*****

 辺境伯の屋敷での会合を終えて、俺とヒメは領都のギルド本部に宿泊する事になった。ギルマスのケーニヒさんとは殆ど話した事がなかったから丁度いい。

「レン君とヒメさん、ご苦労だったな。今日はゆっくりして行ってくれ。セラフもご苦労だった」
「はい。有難うございます」
「本日はお世話になります」

 今夜のベッドを手配してくれたケーニヒさんに礼を言うと、セラフさんがケーニヒさんに向き直って問いかける。

「ギルドマスター。お二人の昇級の件は?」
「ああ。問題ない。正式には明日からになるが、君達は2級冒険者になる。それとパーティフォートレスは1級に戻る」
「称号の方は?」
「ああ。王都の統括本部に申請している。数日中にメイズ・ドミネーターの称号が贈られる運びだ。さらにメッサー、ラーヴァ、シルトの三人は今回で三度目の完全攻略だからな。ドラゴンスレイヤーの称号も追加される見込みだな」

 すっごいな。あの三人。名実共にこの国のトップ冒険者じゃねえのか?

「あ、あの、私はそこまでの働きはしていないのですが……」

 称号持ちの冒険者になる見込みと聞いて、ヒメが恐縮するが。

「ヒメさん。パーティは一蓮托生です。そのパーティが成し遂げた功績は等しくメンバー全員の功績なのですよ? 卑屈になる事はありません。それに、ヒメさんが優秀なバッファーだからこそ、フォートレスの皆さんも危険な迷宮への同行を許しているのでしょうから」

 そらー、ヒメが倒した魔物は多くはないけど、今優しくセラフさんが諭してくれた通りなんだよな。ヒメがいたから楽勝だった。ヒメがいたからヤバいとこを切り抜けられた。そんな場面を数多く体験してきた。
 だから、俺はヒメに言う。

「その通りだぜ? もうヒメは俺達に絶対必要な存在なんだ。もっとその薄い胸を張っていいんだぞ?」
「うすっ!? ひどっ!」

 ははは。

 

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