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103話 暇になったよ。でも何をしよう?

 ギルド支所を出てイングヴェイ工房へと向かうあたし達。まあ、今回用があるのはヒメとレン君で、あたし達はおまけね。でも折角だし装備品のメンテナンスをお願いしよう。

「だいぶ派手にやったんだな。まあ、二人分なら問題なく作れるだろ。仕様はこいつ等と一緒でいいか? そうか。それなら少しは納期を短縮出来るだろ」

 邪龍との闘いでの、邪龍の素材のダメージを見て心配になってたんだけど、二人分の装備を作るのは大丈夫みたい。

「で、銃の方なんだがな。実弾式も完成だ。人数分用意してある。あと、ライフルってやつの試作品も出来てる」

 レン君がいろんなアイディアを出し、次々と形になって行く。これが大量生産出来れば弓矢に変わる武器になる。

「まあコストが桁違いだし、魔石に魔法を充填出来るヤツが必須だからな。そう簡単にはいかねえだろ」

 あーだこーだとイングおにいとレン君、コルセアさんが話し合ってる所に、業務を終えたセラフさんとアインさん達が来た。あら、もう夕方なのね。

「まずはコレを見て欲しいんですが」

 レン君が出来たばかりのライフルと言うやつを手に取る。マギ・ガンよりもかなり長い。でもマギ・カノン程太くもない。

「射程も威力も、今俺達が使っているマギ・ガンよりも高いです。これを領軍や騎士団の兵装として採用する事に対しての意見を聞きたいんです」
「……今までフォートレスがほぼ独占的に使用していた装備をなぜ?」

 レン君の言葉にアインさんが問う。それもそうだ。噂を聞き付けた人が、自分にも銃を作って欲しいと怒鳴り込んで来る事もあったらしい。でもそれを頑なにレン君は拒否してきた。

「危険な武器だからです。だからこそ、今まで俺達が実験台として試行錯誤してきたんです。それに俺としては、実用に問題なしと判断出来たなら情報を開示するつもりでした。それに……」
「それに?」
「これは帝国に対する切り札になるでしょう。この武器を実用化まで漕ぎつけ、帝国の脅威からこの地を守る事を、俺とヒメからフォートレスへの報酬、そして俺達を受け入れてくれたこの国への恩返しとしたい」

 レン君のその言葉を聞いて、アインさんが目を細め、メッサーさんは満足気に頷いた。イングおにいは楽しそうに口端を吊り上げる。

「……詳細を詰めたいが、やはり父上のいらっしゃる場所が良いだろうな」
「ギルドとしても、ギルドマスターのケーニヒがいない事には……」

 そうよね。ここは迷宮攻略のために作られた街。領や組織の、いや、国の行く末を左右するような事案をここで決める訳にはいかないのは分かるかな。

「分かってます。ですから各方面に繋ぎを取って欲しくてお二人を呼びました。それに量産化にあたってクリアしなければならない問題はたくさんあると思いますし。ひとつの工房ではどうにもならないです」

 それを聞いたセラフさんは、顎に手を当てて考えるような仕草をしたあと言った。

「では鍛冶師ギルドや錬金術師ギルド、商業ギルドなども交えて話し合いの場を設けた方が良いかも知れませんね」
「その辺りはお任せします」

 なんでしょ? 随分レン君ってば頼り甲斐が出て来たわね? やけに自信たっぷりというか余裕があると言うか。
 
「邪龍にダメージを与えられる強さは自信になるでしょうね。それに銃の事も成功していますし」
「ヒメの言う通りだけどね、一番はそのヒメを守るっていう責任感と言うか、覚悟が決まったからじゃないのかな?」

 なるほどね。お姉ちゃんの言う通りかも。でもレン君くらいの力があれば、もう何処へ行ってもヒメを守ってあげられるだろうな。ヒメの、そんなレン君を見る目が優しい。

*****

「それじゃあ、俺達はアインさん達と領都へ行って来ます」

 数日後、レン君とヒメ、アイン小隊にセラフさんは、領主様やケーニヒさん達と銃に関する打ち合わせをする為に領都へと向かった。
 あたし達はその間はのんびりと過ごそうかな。アイギスと遊んだりアイギスと遊んだりアイギスと遊んだり……

「困った!!」
「んー? どうしたんだい?」
「お姉ちゃん!! 急に暇になったら何をしたらいいのか分かんないよ!!」

 メッサーさんは工房で寝泊まりしている。まあ、夫婦なんだから当然なんだけど。
 結婚してから殆ど一緒にいる時間無かったしね。だからギルド支所の『フォートレス専用部屋』はあたしとアイギス、お姉ちゃんだけ。

「シルトもかぁ~。ボクもね、エルフの里では友達もいなかったし、一人で本ばかり読んでたんだ。里を飛び出してからは一人旅だし、当然遊ぶ余裕なんてないからさ、ボクも困ったね。ははは!」

 う~む。そうだ!

「お姉ちゃん、あたしに魔法を教えて!」
「そうだね。シルトはエルフの血を引いているから、魔力量は桁違いに多いと思うんだけど……魔法は精霊との親和性の高さで使える魔法が変わって来るんだ。ボクなら火精、メッサーさんなら風精、レン君なら雷精。ヒメは水精と土精。治癒の魔法と言うのは水の清めと土の癒しの複合効果によって行使される魔法なんだ」

 精霊との親和性ね……あたしはどうなのかしら?

「高い親和性を持つ人間は少なくてね。魔法使いが貴重なのはそのためさ。ヒーラーは更に希少だね。ボクは一応殆どの属性も行使出来るけど、水魔法は飲み水を出すのが限界だし、土魔法はちょっと土の養分を活性化させるくらいしか出来ないんだ。だから治癒魔法は使えない」

 治癒魔法が使えるヒメは、訓練すれば土魔法も使えるようになるはずだとお姉ちゃんは言う。

 「その親和性というのはどうやって調べるの?」

「実際に精霊に語り掛けてみるんだ。でもそれには魔法の基礎を学ばないとね。すぐには出来ないかな」

 そっかぁ。残念。

「……というのは建前。実際は適性の高い属性が予め分かっていたら、無駄なく修行出来るよね?」
「あ、そうだね。なにか調べる方法があるの?」
「コルセアさんなら持ってるかもだね。工房に行ってみよう」

 おお。なんかワクワクしてきたよ!

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