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95話 工房での時間も充実している

 あたし達はレン君の太刀が出来上がるまでの間、迷宮の攻略よりも魔石集めに重きを置いて活動する事にした。
 レン君発案の魔法銃に使う魔石は、大物の方がより強力な魔法を充填出来るみたいなので、各階層ボスのものをそっちに使う。魔法を発射(・・・・・)する方のヤツね。
 それから、雑魚敵から取れる屑魔石の方は、使い捨ての弾丸(?)に使うのでそっちも忘れずに確保。こっちは魔石を直接撃ち込んで炸裂させるタイプ用ね。

 今日も第三階層のオークキングを倒し、帰還してイングヴェイ工房へ。
 そうそう、オークキングと言えば苦戦の原因になるあの咆哮。恐慌状態になったみんなをあたしのリセットで対処してたんだけど、ヒメが加入してからは彼女の魔法が便利すぎるのね。
 オークキングも、戦闘開始直後に咆哮を使ってくる訳じゃないから、事前にヒメが精神耐性上昇のバフをみんなにかけておくの。もうそれだけで咆哮なんてただのうるさい雄叫びね!

 それから、何気にアイギスも咆哮が使える事が発覚。何と第一階層のボス戦で、ボスのハイ・ゴブリン以外のゴブリン上位種が全員行動不能になっちゃったの! ご褒美にあとでお肉あげる!

「全く……お前さん、ホントにただの黒豹か? 魔物でもない、野生の獣が咆哮みたいなスキルを使えるとか聞いた事ねえんだがなぁ。まあいいや、ほら、シルト。その従魔の証の白い布、外してこっちに寄越せ」

 アイギスが咆哮を使えたという話を聞いたイングおにいが、アイギスを見てしみじみと言った。なんだかおじさんくさいよ?

 ――ビシッ!

「うぐっ!!」
「こら、シルト。私の旦那様にあんまり失礼な事を考えるな」

 メッサーさんから放たれた空気の塊が、あたしの可愛いおでこに飛んで来た。地味に痛い。

「ところでイングおにいは、その布に何をするの?」
「ああ。こりゃあな、コルセアさんがオークキングの革に施した魔法陣なんだが、効果は脚力上昇だ。この革を従魔の証の布の内側にくっつけてっと」

 イングおにいは、その後もアイギスの従魔の証に何やらしこしこ作業してたんだけど……

「へえ、リストバンドだな。いや、アイギスの場合はアンクルバンドか」

 レン君がまた聞きなれない言葉を。今までは只の布をアイギスの足首に巻き付けてたんだけど、今度は輪っかになってて伸び縮みする。早速アイギスの足首に装着してみた。

「すごいね、これ! これなら緩んだりしないしぴったりフィットだよ! ありがとう!」
『にゃにゃん!』

 アイギスもお気に召したみたい。
 そんなアイギスの頭を一撫でしたイングおにいは、レン君に向き直って姿勢を正した。あ、これ、職人モードの真面目顔だ。それにコルセアさんも並んだわね。大事なお話みたい。

「それでな、レン。まずはお前さんに言わなきゃならん事がある。いや、お前さんのアイディアに浮かれて気付かなかった俺達も悪いんだが……」

 なにやら神妙な顔をするイングおにいとコルセアさん。どうしたんだろう?

「ほら、魔石を直接撃ち込んで炸裂させるっていうアイディアな、実はかなり難しい。というか手間が恐ろしく掛かる。コストが掛かり過ぎて量産はまず無理だな。やったとしてもお前さん達の誰かに専用で持たせるくらいが限界だ」
「どういう理由です?」
「ああ、実はな……」

 イングおにいの話だと、レン君の魔法銃から魔石を直接撃ち出すには、魔石のサイズを均一にしないといけないらしい。それもかなりシビアに。加えて、魔法銃本体の筒の部分の内径も。
 ところが、似たような大きさに見えていた魔石も同じものは全く存在しないらしく、全部の魔石を同じ寸法に加工しなくちゃいけないんだって。その上で一つ一つの魔石に術式を刻み込み、魔法を充填させなければならない。確かに聞いてるだけでちょっと嫌になってくる作業よね。

「えーと、例えばだけど、魔石を砕いてからまた圧縮して使うってのは可能なのかな?」

 お? レン君に対策案アリ? レン君てホントに知識の引き出しが多いなあ。

*****

 なるほど、魔石のサイズの問題か。確かに全部の魔石の寸法を均等に研磨するのは機械化が進んでいないこっちの世界じゃ大変な手間だろうな。そこで俺は一つの案を出してみた。

「一度にたくさんの魔石を粉々にして、また固める?」

 俺の発案にイングさんが聞き返してくる。

「そうじゃなかったらドロドロに溶かしてからまた固める」

 そして代案も用意。実際のところ、粉砕しちまったらいろいろダメそうな気はしてたからな。

「粉砕しちまったら強度に問題があるだろうな。そもそも、魔石ってのは本来それなりに貴重なもんだ。砕いたりってのはやらねえんだよ。やってみねえと何ともな」

 ならドロドロ作戦ならいけるかな?

「弾丸サイズの鋳型を造ってさ、鋳型に魔法陣、術式を彫り込んでおくんだ。そこに溶かした魔石を流し込んで冷やしたらどうかな? 後は仕上げに面取りするだけになるから随分と負担は減ると思うんだけど」

 そう、俺が提案したのは鋳造ってやつ。鋳型の精度さえきっちりと出せれば、大量生産もいけると思うんだよなぁ。剣とかナイフとか、そういう金属製品だって、大量生産品はそうやって作ってるんじゃないのか?

「なるほど、鋳型か。溶かした魔石を流して固めるねえ……面白そうだ。少し試してみるか。後で報告すっから。おっと、そうだ。こいつ、仕上がったぜ」

 イングさんが一振りの太刀を持って来た。おお! 待ってたぜ俺の愛刀!

「ちゃんと銘は考えて来たか?」

 もちろん考えてきたさ。本来銘ってのは、作った人が付けるモンだと思ってたけど、まあいいか。

「銘は……」

 ――雷電

 それが雷撃を纏う俺の愛刀の名前だ。

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