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第2話 冒険者ギルド



 迷宮都市ラビリリスには冒険者ギルドと呼ばれる公共施設が存在する。そこは数多の迷宮に潜って行く冒険者たちをサポートするだけでなく、迷宮都市で暮らす人々に対して様々な公共サービスを提供している。

 その役割は大きく三つ。迷宮探索と冒険者たちの管理、迷宮都市の統治機構、都市で暮らす住民たちへの公共施設だ。



 その中でももっと賑わいを見せるのが、冒険者たちが集まる迷宮管理課。

 今日も大勢の冒険者たちが迷宮掲示板の前に集まり、魔獣の出現情報や探索状況の最新情報、それにクリスタルの買取価格を確認している。

「おい見ろよ、北1番迷宮の1層にゴブリン大量発生だってよ、行くか?」
「バカ言え、ゴブリンなんて何十匹狩ったって二足三文だろうよ」
「それよりこっちに行こうぜ。西3番迷宮の4層、ジャイアントクロウラーからアイテムドロップ率が上昇傾向だってよ」

 迷宮掲示板前に集まる冒険者たちは、4〜6名ほどでパーティーを組んで迷宮に潜るのが一般的だ。
 今日の探索をどこで行うか、迷宮掲示板を見ながら相談する話し声が、随所から聞こえてくる。



「え〜っと、スキル【剣技】持ち前衛一名募集……こっちは【千里眼】持ち募集って、そんなレアスキル持ちがフリーなわけないじゃん」
「ねぇねぇ、このパーティーがスキルなしの見習い募集中だって、行ってみない?」
「え〜その募集、パーティーの構成書いてないじゃない。荷物持ちならまだしも、体張った盾にされそうなパーティーだったらどうするの!」

 他にも若い少女二人がパーティー募集板の前で声をあげているのも聞こえてくる。

 冒険者になるためには、最低でも一つ、何かしらのスキルを取得しなければならない。そのためには少しでも長く迷宮に潜り、生きて生還する必要がある。
 冒険者見習いは、十分な戦闘力と生存能力を保有したパーティーに、荷物持ちとして追随するのが常とされている。
 だが、中には冒険者見習いを騙して率いれ、探索中にパーティーが危険になった場合、囮にしたり肉の盾として利用しようとするパーティーも少なくはない。
 顔見知りの友人・知人を頼れない冒険者見習いは、最初のパーティー選びにも慎重にならなければならないのであった。



「赤の下級が10個に中級が2個、青の下級3個、中級が1個……全部で43000リリーですね」
「この迷宮具は【アシッドダガー】です。魔力を流すと刀身から毒液が湧き出るようです」
「やった、初めての迷宮具だ!」
「40000リリーで買取もできますが、いかがしますか?」
「売らない売らない! 初物だよ? 大事にとっておくさ!」

 また別の一角では、木製格子越しに迷宮で取得したクリスタルや迷宮具の鑑定や買取が行われていた。
 魔獣を倒した後に現れるクリスタルは、その大きさや純度から大きく4つに分類されている。下級、中級、上級と、それでは測りきれない物を特級としている。
 買取価格も上級までは一律で計算され、1000、10000、100000リリーで取引されていた。迷宮具に関しても特別な迷宮具によって性能鑑定と価格判定がなされているのだが、こういった特別な迷宮具の管理をすることも、冒険者ギルドの役割と言えた。
 迷宮都市ラビリリスの物価で言えば、下級クリスタルの1000リリーでだいたい大人一食分を賄うことができ、ほとんどの冒険者たちが利用している安宿や下宿などでは、その3〜4倍の価格が一晩の宿泊費だ。



 そして最も賑わいを見せている場所が、迷宮管理課の中央に位置する冒険者登録窓口だ。

「お帰りなさい」
「おぉ〜今日も生きて帰ったぞ! アレ出してくれ」
「今日こそはスキルが出現していますよ〜に!」
「早く見習い卒業してぇー!」
「お、【怪力】が増えてやがる! それに【斧技】のスキルがIIになってやがるぜ!」
「おめでとうございます。これで冒険者ランクCにランクアップですね!」
「あぁー! 【聞き耳】ってスキルが出てるー!」
「おめでとうございます。これで冒険者見習いからランクFになれますね」

 冒険者登録窓口には、個人のスキルを調べることができる迷宮具が用意されている。形は一定ではないのだが、基本的には水晶の形をしており、そこに手を触れると保有しているスキルが浮かび上がるのだ。
 それにより冒険者ギルドは冒険者たちのスキル保有数を記録し、その数やスキルレベルに応じてランク付けを行っている。
 冒険者ランクはF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSと九段階に別れており、一つでもスキルが出現すれば正式な冒険者として登録される。
 スキルの出現頻度やレベルアップの速度には個人差があり、瞬く間に冒険者ランクを上げていく者がいれば、数年かけても見習いを卒業できない者までいる。



 そして冒険者ギルドで最も人気(ひとけ)の少ない場所が、迷宮救助隊の待機室であった。


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