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45話 囚われたお姫様


 再調査の開始から幾ばくかの日にちが経過し、麻衣のサイコキネシスも瑠偉達に認識されたようで部屋の中で体を浮かせても特に意識することもなく、それ自体が何時もの出来事のようになっていった。
 
 瑠偉と美憂との関係も仲良くとまではいかないが、職場の仲間意識程度までは向上している。
 そんな中今日の夕食時に大きな事件が発生した。

「あのー、ちょっといいかな?」

 ここ2・3日頻繁に何かを考えている状態か、または悩んでいる様な素振りを見せていた麻衣が申し訳なさそうに話し始めた。瑠偉達は気づいていたようだが本人が言ってきてくれるのを待っているのか、麻衣に何か変な事をさせているんじゃないかと俺にしつこく聞いてきている、だが当然心当たりはない。

「なんでしょう麻衣?」

 瑠偉の返事と共に全員が食事を中断した、3人は一斉に麻衣に注目する。

「えーと・・・そのー・・せ、・・せぃ…りが来ない・・んだけど、ど、ど、どうしよう?」と徐々に声に圧力が抜けながら麻衣が答えた。

 麻衣の発言が終わると同時に瑠偉と美憂の頭が俺に素早く向く、瑠偉は眉間にしわを寄せ美憂は口を半分開けながら見下す目つきを俺に向けている。

「さ、最低ですね! ゴミですね、いえゴミ以下です・・・燃えて無くなるんですか?」
「うぁぁぁ、駄目だろそれは・・・どう責任取るんだ?」

 瑠偉と美憂の渾身の馬頭が俺を襲う。

「まて、まて、まず話を聞け」
「言い訳とか聞きたくありません、とにかく罰を受けるべきです」
「あれを潰すか瑠偉?」

 瑠偉と美憂は立ち上がり今にも襲い掛かってきそうな勢いで俺を睨んでいる。
 どうやら話が通じる状態ではないようだ、仕方なく瑠偉と美憂を力を使い椅子に強制的に座らせ固定させた。

「ひ、卑怯ですよ」
「う、動けない・・」
「まず俺の話を聞け、それから考え行動してくれ」

 俺は両肘をテーブルにつけ手を組み瑠偉と美憂が落ち着く待った。

「わかりました、聞くだけ聞きましょう、聞くだけですよ?」
「よろしい、簡潔に話す。
 生理が来ないのは俺が止めたからだ、だから当然来るはずがない。
 だが若干の不都合がある、でもそれ自体は許容範囲だ、それをしないと止めれないからな。
 つまり、子供など出来るはずがない! 以上だ」

「はーー、兼次ちゃん、それ先に言ってよずっと悩んでたよ・・・」

 麻衣は肩の力が抜けたのかテーブルに頭を付け大きな溜息をした。

「で、その不都合ってなに?」

 瑠偉は怒りが収まっていないのか威圧気味な雰囲気で言ってきた。

「まあ当然その疑問はあるよな。
 施したのは老化と成長を止めた事だ、これにより生理も止まる。
 つまり避妊の必要はない、そう言う事だ・・・」

「そ、それってつまり、どういう事?」と美憂は理解していないのか更に聞いてきた。
「解りやすく言うと歳をとらないと言うことだ。
 つまり老化しないから子孫を残す必要が無い、だから生理も止まる自然の摂理だな?
 ・・・・だぶんそんな感じだ」
「なるほど、解った」

 そこで麻衣が突然立ち上がり目線を上に向ける。

「なんてこと、私は、私は・・・・
 永遠と言う名の時の牢獄に囚われてしまったのね! 悲劇のお姫様ね!」

 その言葉と同時に指を組みお祈りするポーズをとっている。
 自分で悲劇と言っているが、顔はかなり幸福に満ちた表情をしている。

「言っておくが不老であって不死ではないからな?
 普通に病気するし怪我もするからな? それが元で普通に死ぬからな?」

 立ち上がっている麻衣を見上げるが反応が無い「聞いてないし・・・」

「食事を続けましょうか? 動けないの解いてもらえます?」
「実は解くには胸を揉まなきゃいけないんだが、いいよな?」

「よ、よくないです。は、早く解け!」
「怒るなよ瑠偉・・・冗談だよ」

 瑠偉と美憂の体の固定を解くいて食事を再開するが麻衣はそのまま固まっていた。

「おーい、戻ってこい」と胸を人差し指で突いてみる。

 しばらく見ていたが戻ってこないようだ。

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