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38話 始まりの生命体


「まず、何からお話ししましょうか?」

 背筋を伸ばし綺麗な座り方をしたテナが無表情に発言した。
 体が全く動かず何もしゃべらないと人形が座っているかのような感覚になる、改めて深く観察すると生命エネルギーを感じるが我々地球人と比べると著しく微弱であり、呼吸をしている時の胸や腹部の動きもない。

 まるでロボットだ、でもなぜ生命エネルギーを感じるのか?
 地球でロボットを見た時は生命エネルギーを感じ取れなかった、当然生きていないのだから当たり前である。

「単刀直入に聞くテナよ、お前ロボットだろ? でも生命エネルギーを感じるのが気になるのだが何故だ?」
「よく解りましたね、私は生き物と言う分類には含まれません。生命エネルギーに関しては魂の解析に成功しこの機械の体に収納してありますので、生命エネルギーとして感じるのでしょう」

 魂の解析だと? なんという科学力だ予想を超えたな。

「だとしても、なぜテナ独りしかいない? 他の人間はどうした?」
「話せば長くなりますが簡潔に言うと長く生きることに耐えられなくなりました。
 体は機械ですが感覚は生身の体で生きていた時と変わりません、ですが食事の必要もない・寝る必要もない・子孫を残す必要もない、欲望が無ければ生きていく意味もなかったのでしょう。
 一人、また一人と自らの意思で機能を停止していきました、そして私一人が残りました」

 俺も1000年ぐらい生きているが、やはり楽しみがないと苦しむだろうな。
 テナを見ていると彼女は感情すら忘れているような気がする。

「では、なぜ生きている? 苦しくないのか?」
「私はこの惑星の住人に機械化を進めた本人であり、その責任もあります。それに、この惑星で起こった悲劇を他の惑星の人に伝え、私たちがこの宇宙に存在した証を知ってもらえれば・・・
 そんな思いで今日まで生きてきました」

 悲劇か・・・戦争かな? 何処の世界でもあるんだな、自ら武器を開発し殺傷力を高めそして自らも死の危険に晒される

「同種族で戦争ですか・・・・」

 瑠偉は何故か遠くを見つめ小さめの声で発言した。
 この年代の子でもニュースとかで見て知っているようだな、うんいいことだ、戦争はいかん。

「いえ戦争の問題は解決しております、別の問題です。1体の生命体がこの惑星に現れ、昆虫や小動物そして微生物、全ての生命が跡形もなく消えました」
「はぁ? 1体の生命体? 消えた?」

 1体ですべて滅ぼすとか、何の冗談だよ・・・と思いっているところに。

「そ、それって、フ●ーザって人? ほーほっほっほっほって口癖の人だよね?」
「麻衣、お前喋るな、漫画の話を出すな・・・話がややこしくなる、次変なこと言ったらまたアゴを固定するからな?」
「わ・・わかったよ、ケチ」

 なんだよ、ケチって・・・これは、お仕置きが必要だな。

「ひゅあぁぁ、また背筋に悪寒が!」

 麻衣が申し訳なさそうな顔で俺を見た。

「話が折れてすまんが、その生命体とはなんだ?」
「私達はそれを<ガイルア>と呼んでいます、その正体は意思と知能を持ったエネルギーの集合体です。
 その生命体は、ありとあらゆるエネルギーを変換し自身のエネルギーとして吸収します。
 当時の私達の最強の兵器で攻撃してますが、何事もなかったように動いてました。ちなみにその兵器は恒星すら粉々に出来ます」

 恒星すら粉々に出来る兵器とか何処と戦争するつもりだったんだろうな?
 その兵器が今この浮遊都市のどこかに・・・

「当然、拳殴りとかナイフとかの人力攻撃も効かないよな?」
「むしろ、それに付随する運動エネルギーすら吸収します。
 我々はただ見ている事しか出来ませんでした」

 それはもう気の毒にとしか言いようがない出来事だな、ガイルアか・・・ん?
 意思と知能があると言ってたが、会話でもしたのか? 俺達の脳を見て会話できる技術があるならできそうな気がするけど・・・

「会話を試みて1回だけ成功しています、我々はそれに聞きました<何故我々を滅ぼすのか? >と、必要だからとそれだけ返ってきました。
 話し合いでの解決も無理でした」

「そのエネルギー生命体の正体って調べれたのか?」
「いえ、全く未知のエネルギーでした。しかし、その生命体から直接聞けました、なんであるかを」

 それからテナは数分ほどその生命体についての語り始めた、それによると
 ◆宇宙ができてから最初に生まれた生命体である
 ◆意思と知性はあるが発想は出来ず他の物から原子構造ごと取り込み記録することで成長する
 ◆取り込まれた物は物質として存在できず、エネルギーを抜き取られ量子レベルで拡散し崩壊する
 ◆その生命はその1体ではなく宇宙全体に約1000体ほど存在している
 ◆その生命体自身のエネルギーは絶対に枯渇しない
 ◆死を迎えるときは、宇宙自体が無くなるときである
 ◆私達が知っているすべてのエネルギーを自身のエネルギーとして変換し吸収できる

「まさしくチート性能ね! もしかして神様かも?」

 麻衣は嬉しそうに語ったが、なぜか隣で美憂が目にハンカチを当てて泣いている、瑠偉は相変わらず平常心でテナを見つめている。

「神だったら破壊神ってところだな、もし出会ったら勝てるかな俺は?」

「はぁ、会ってみたいなぁ」
「会いたくないですね」
「大変だったね、テナさん・・」

「聞いて頂いてありがとうございます。
 私は貴方たちを地球へ見送ったら命を閉じる事にいたしました」

 各々の発言と共にテナが最後に言った言葉に静まり返るのであった。

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