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75話 レン君、男前

 森から外れて街道へと出る。しばらく歩くと、以前よりも広範囲をカバーしている防護柵が見えて来た。
 丸太で作られた簡易的なものだけど、森に出没する弱い魔物程度なら十分耐えうるだろう。そして、防護柵に比べれば、かなりしっかりと作られた街門。門兵まで置くようになったのね。門兵さんが詰める小屋も出来ていた。
 街の成り立ちからここで過ごしていたあたし達からすると、なんだか感慨深いものがあるわね。

「こんにちは! お勤めご苦労様です! 特級パーティ『フォートレス』と依頼人の二人です。入りますよ?」

 魔物を警戒する役目もしているあたしは、いつもパーティの先頭を歩いている。だから挨拶もあたしが一番。門兵さんに一言告げて迷宮街へ入ろうとする。

「あれ? フォートレスは旅に出たって聞いてたんだが戻って来たのかい? それならギルド支所へ行ってくれるかな? 支所長から何か話があるかも知れないからな。ってちょっと待て待て! その黒豹はなんだ!?」

 ありゃ、ノリと勢いで行けると思ったけどやっぱり無理だったか。

「えへへへ~、この子はあたしがテイムして従魔にしたんですよぉ。ギルドにも今から届け出ようと思ってたんです。可愛いでしょう?」
『うにゃお~ん?』

 門兵さん、ちょっとビクッってしたわね。こんなに可愛いアイギスなのに。

「か、可愛い……?」

 門兵さんの話によると、ギルドに行けばで従魔の目印みたいなやつを貰えるんだって。で、それを忘れずに付ける事。その目印無しでその辺うろついて討伐されても文句は言えない決まりなんだって。それは大変。忘れないようにしなくちゃ!

「はぁい! ありがとうございますっ!」

 門兵さんお礼を言って、あたし達五人と一匹は門を抜けて、迷宮街をギルド迷宮支所へと向かって闊歩してる。
 非常に注目を集めるみたいで、色んな種類の視線が集まって来る。一応フードを被っているけど、それが余計に怪しさを倍増している気がするヒメとレン君。そして黒豹のアイギス。そして何より、美人と美人と美少女の三人パーティのあたし達!

「ただいま戻りましたっ! 一時帰還です!」

 ギルド支所に入って、カウンターにいるであろうセラフさんに声を掛ける。あたしの声に、中にいる人達が振り返る。中にはアイギスを見て剣を抜こうとする人もいるけど、まあいきなりだとびっくりするよね。

「この子はアイギス! あたしの従魔です! とっても素直でやさしいいい子なので、皆さん仲良くして下さいねっ! いじめた人はあたしが直接懲らしめるのでそのつもりで!」

 と先制パンチ。でもこういう所には必ずいるアレな人達。あたし達が誰か分かってないから絡んでくるのよね。

「おいおいおい、嬢ちゃん。あんまり調子に乗るんじゃねえよ。こんな所にケダモノ連れて来るんじゃねえ。とっとと失せろ」

 まったく……

「うるせえ。俺達の仲間をケダモノ呼ばわりするんじゃねえよ。気に入らねえならてめえが失せろ」

 あれ? まさかのレン君が壁役? しかも両手に電撃パチパチ言わせて準備万端?

「やるってんなら相手になるぜ? 俺は素手でも構わねえが、俺のパンチは食らうと黒焦げになっちまうから気を付けろ」

 電撃を纏った拳を握って絡んで来た男の眼前にぬっと突き出して見せる。

「ちっ! ここは獣くせえから出てってやるぁ!」

 情けない捨て台詞を吐いて退散していく男を見ながら笑ってるレン君がちょっとかっこいい。守って貰うのって嬉しいもんなんだ~。ヒメなんて目がハートマークになってるし!アイギスも感謝してるみたい。レン君にすり寄って行ってる。

「おう、兄ちゃん! カッコいいじゃねえか! まさかとは思うがフォートレスに入るのか?」
「なんだなんだ? 特級パーティに期待の新人か?」

 逆に、あたし達を知っている冒険者のみんなは、レン君に興味津々って感じね。

「あー、ごめんねみんな! ちょっと先に手続きしてからでいいかな?」
「ああ、ほら、先、いいぞ?」
「うん! ありがとう、おじさん!」

 なんだかんだと順番を譲られてカウンター最前列へ。いつもセラフさんがいる窓口だ。セラフさんは見慣れぬ二人と一匹を一瞥すると、いつにない真面目な表情、いや、決死の表情と言った方がいいかも知れない。そんな顔で重苦しく言う。

「……少々込み入った話がありますので別室へどうぞ。そちらの従魔も一緒で構いません」

 うん? いつもと違う雰囲気に、あたし達は顔を見合わせながらもセラフさんに従い奥の部屋へ。

「申し訳ありません。実は帝国の方から手配書が届いていまして。フォートレスの皆さんは帝国へ行ってらしたのですよね?」

 手配書? ああ。脱走したヒメとレン君のだろうな。ここは素直に話した方がいいのかしら?

「栗毛の少女と黒髪の少年。少女は帝国の皇女。国家機密を持って国外へ逃亡した可能性あり。少年は不敬罪及び反逆罪。両名とも発見次第殺害せよ」
 
 セラフさんが手配書の内容を読み上げた。発見次第殺せとか、随分荒っぽいわね。でもそれもそうか。下手に捕縛したりすれば勇者召喚の事実が知れ渡るもんね。

「はははは。発見即殺害とはな。まるで事情聴取をされるのが困るみたいじゃないか、帝国は」
「ホントホント! 凄く後ろめたい事をやってるんじゃないの? 帝国ってさ」

 メッサーさんとお姉ちゃんは、全部知ってる上でカラカラと笑ってるけど、ここであたし達が二人を売り渡せば即刻殺される事になっている事態に、動揺してるヒメとレン君。

「ちなみに懸賞金も桁外れなんですよね。この条件にターゲット、明らかに怪しいんですよ。姫君を即殺せとか普通はあり得ません。それで、そこのお二人は栗毛の少女と黒髪の少年ですね。偶然ですか?」

 鋭い視線で問い詰めるかのようなセラフさん。

 「偶然だね。この少女はヒメ。少年はレン。冒険者見習いでね。ここで正式に冒険者登録をして私達のパーティに入れるつもりだ。そしてこの二人は私達の依頼人でもある。何があってもこの二人は我々が保護するつもりだよ」

 対して、一歩も退かずに二人を守ると公言するメッサーさんがかっこいい。そのかっこいいメッサーさんに、ヒメとレン君も見惚れてぽーっとなってる。メッサーさん、巨乳だけど見た目が中性的な美人だからねぇ……

「それでセラフ。冒険者ギルド職員としての君にではなく、信頼の置ける頼り甲斐のある友人としての君に聞いて欲しい事があるんだ」

 はあ、と深いため息をついて諦めたような表情を浮かべるセラフさん。きっと大まかな事情は察したんだろうな。あたし達が二人の素性を知った上で庇っている事も。

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