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32話 キプロス星の日常2


 俺は地面に降り立ち周囲を見渡す、落ち葉がない地面に湿度が高い空間だ、熱帯雨林かな?
 おかしい、生き物の気配がしない。銀色の球体に手を触れる。

「リヴァララ、生き物の気配がしないのだが?」
『お答えしかねます、マスターよりお聞きください』

 秘密かよ、いずれ聞くか・・・

「ここは熱帯雨林なのか?」
『キプロス星は公転面に対し90度で傾いておりませんので、四季は存在しません。一年中すべての地域で同じ気温です。冬がないので熱帯雨林のように感じるのでしょう、ちなみにここは赤道面ではありません』

「また何もない、森だけの空間」

 麻衣が木に手を付けて木に向かって話しかけている。
 温泉の時間にはまだ早いし、絶景ポイントと言っても俺がつまらないし、どうするか・・・

「しかたないな・・・」

 俺は麻衣に話しかけようとしたが、すべて言う前に麻衣が遮った。

「毎日はダメ! 絶対ダメだから!」

 さすがに言う前に拒否されると萎えるな。
 銀の球体に触れリヴァララにもう一度話かける。

「リヴァララ、海に生き物は?」
『いません、詳細はマスターより聞いてください』

「空に生き物は?」
『いません、詳細はマスターより聞いてください』

「地中に生き物は?」
『いません、詳細はマスターより聞いてください』

「空中に微生物とかウィルスは?」
『いません、詳細はマスターより聞いてください』

「キプロス星の生き物はどこに?」
『現在の生き物は、織田様、出雲様、城島様、佐久間様の4体と、それらに付着及び寄生している細菌類のみです』

「テナが入ってないが?」
『お答えしかねます、マスターよりお聞きください』

「では、テナに聞いてみたいが、夕食後に話せるか聞いてくれる?」
『確認を取りました、夕食後に会談になります』

「は…はやいな、本当に聞いたのか?」
『心配は無用です、マスターとはリアルタイム通信が可能です』

 原始惑星の景色を見て感傷に浸る、そんな心は持ち合わせていない、あと約20日も退屈だ。
 なら麻衣の行きたいところでも連れて行ってやるか。

「なあ、どこか行きたいところある?」
「海かな・・・あ、まった、やっぱダメ」

 なるほど、海に行きたいが水着がないという事か! これは、行くしかないぞ!
 次回は瑠偉と美憂も連れて行くとして水着はテナのを借りるとかするか。
 帰ってからテナに水着を持っているか聞いてみよう。

「よし海に行くぞ! なーに水着など必要ない、脱げばいいさ!」
「やっぱりそうなった! 脱がないからね! 絶対脱がないから!」

「なにも全裸とは言ってない、下着姿でもいいんだよ?」
「それでも、イヤー」

 そんなに嫌がらなくても全部見ているのにな・・・

「よし、リヴァララ。海に案内してくれ、綺麗な砂浜付きで気温が30度位の所で頼む」
『了解しました、案内します』

 銀色の球体は空に向かって飛び出した。

「音速を超えるから、俺が飛ばす」

 俺は麻衣を浮かせて飛び上がりリヴァララを追いかけた。
 しばらくして麻衣を見ると前回の音速飛行同様にスカートを足に巻き付けて体操座りをしている。

「随分うれしそうね? でも脱がないからね!」
「水着持ってきてないの? 鞄とかに入ってない?」

「2月に海開きはしてないからね、泳ぐ予定は入ってないから」

 麻衣はなぜか残念そうに言う、学生だからお金がない、オフシーズンで安い時期に旅行をしたわけか、と言うことは、俺の当たった旅行も格安旅行かな?

「ねえ、オフシーズンに南の島に何しに行く予定だったの?」
「予定はないな、福引で当たったからな。日付指定で・・・俺の旅行の目的はなんだ?」

 あれ? 今考えるとなぜか不自然だな、まさかこの段階から中条たちの計画だったのか、むしろそう考えるのがしっくりくるな。時季外れの南の島、当然浜辺には水着美女は居ない、俺がそこに行く価値がない。

「な、なによ? 黙り込んで・・・脱がないからね? 全部見られているけど嫌なの」
「まぁ、いいさ、ふふふふぅ」

「なんかエロいこと考えている、エロ妄想してる、絶対してる」
「しまいに縛るぞ? 俺の思考はエロの塊じゃない」

 暫らくすると陸地の端に到着し前方に海が見える、銀色の球体はそこで進路を変え海岸線に沿って飛行し始め白い砂浜が見え始めた所で速度を落とし停止した。

『織田様、到着いたしました。ここはキプロス星で一番景色のいい場所と自負しております。
 それでは追尾モードに移行します』と銀の球体は俺の後ろの定位置で止まった。

「降りるぞ、自力で降りてこい」

 俺は麻衣に掛けている力を開放する。

「まって、いきなりはあああああぁぁぁぁぁぁ」

 麻衣は叫びながら落下したが今回は違った、麻衣の体は途中で減速し宙に浮いた。どうだぁという声と共に手を腰に当てて俺を見上げている。
 俺は麻衣に近づいていき側まで行くと「大変よくできました」と手で頭をナデナデしてみる。
「イヤーーーー」と言いながら麻衣は下に降りて行った。

 俺は麻衣の後を追い砂浜に降り立った、目の前に透明度の高い海が見える。
 暫らくの時間、2人は棒立ちのままじっとしていた。

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