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1-10-2 フィリアの刀?穂香の盾?

 折れた刀の刃先を手に持ってフィリアが涙目になっている。

 「フィリア、それちょっと見せてもらえるか?」
 「妾じゃ直せぬ、煽っておいてなんじゃが、龍馬何とかしてくれぬか……」

 鑑識魔法でフィリアの刀を少し調べてみる。


 【斬鉄剣】(ハードソリッド70%・ブラックメタル25%・鋼5%)
   武器特性
    ・この世で切れない物はない
    ・美咲以外鞘から抜けない
    ・美咲から20m以上離れたら自動的に美咲の下に転移する

   付加エンチャント
    ・自動修復
    ・刀身強化
    ・個人認証

 「フィリア、このハードソリッドっていう物質はなんだ?金属じゃなくて石なのか?」
 「それは、妾がここより上位世界の神をやってた時の知識の産物じゃ。この世界には無い物質じゃの。この世界で一番硬度の高いブラックメタルより1つ上の硬度を持っておる物質じゃ」

 「う~ん。武器特性や刀の成分を見る限りフィリアの刀の方が優れているんだけどな?どうなってるんだ?」
 「どれ、雅の刀を見せてくれぬか?」


 【魔切般若】(ブラックメタル90%・ミスリル鋼5%・鋼5%)
  武器特性
   ・全属性の魔法を切断できる
   ・結界を切る事ができる
 
  付加エンチャント
   ・魔法切断
   ・結界切断
   ・接触切断
   ・重量半減

 「ブラックメタル90%とかよく練成できたものじゃ。だが所詮下位の硬度のものじゃ、魔法と結界を切る武器特性を持たせたのじゃな。う~む解らぬのぅ……怪しいのは接触切断という付与くらいかの」

 「あ!それだ!ただの付与じゃないんだ。練成の段階で闇属性を刀に持たせていたんだよ、叩くたびに刃先に成る部分に、触れた物の空間を消し去るイメージを送り続けたんだ。切断と言うより空間除去って感じかな。刃先がカミソリのように薄いから結局切断になっちゃうんだよね。武器の所持者以外は消し去っちゃうんだよ」

 「闇属性の空間魔法の亜種じゃったか。消し去った物質はどこに行ったのじゃ?」
 「俺のインベントリのごみ処理施設に繋がっている」

 「魔切般若とはよく言ったものじゃ。まさに魔法での切断じゃな。其方のイメージと想いが妾のイメージ力より勝っておったのじゃ。完敗じゃ!妾の旦那様は凄いのぅ!神を超えておるのじゃ、誇ってよいぞ!」

 「う~ん、でも困ったな。美咲先輩の刀は修理できない」
 「何故じゃ?其方ほどの腕があれば簡単じゃろうが?」

 「溶かして錬金練成は俺の魔法でできるけど、できても精錬までだ。金床と槌がないんだ」
 「そうであった!」

 「あの龍馬君どういうこと?直せないの?」
 「美咲先輩のフィリアの刀は、ブラックメタルより硬いハードソリッドというこの世界には無い物質でできているのです。つまりそれより軟い槌や金床で叩いても成形ができないんですよ。硬度負けしてしまうんです」

 「ああ、私の【斬鉄剣】が……馬鹿な勝負で折っちゃってごめんね」

 『……ああ~あ、可哀想に。美咲はあの刀を肌身離さず寝る時も布団に持ち込んで寝ていましたのに。そこでマスターに提案です。高純度のハードソリッドを打つ事は出来ませんが。10%程なら混ぜて使用できます。折れたまま捨て置くのは勿体無いので、混ぜて使いませんか?それと、美咲の武器を見て思ったのですが、雅の武器に個人認証を付与しないと危険ですね。万が一あの武器が他人の手に渡ってしまうと、マスターの最大の恩恵のシールドが紙装甲になってしまいます』 

 『それもそうか……よし早速とりかかるか。あまり時間も無いしな。2回目なので朝よりは簡単だろうけど、結構重労働だからな』

 「美咲先輩、その折れた刀俺にくれませんか?溶かして新たに生まれ変わらせてあげます」
 「龍馬?金床が無いからさっき無理じゃと言ってたではないか?」
 
 「うん。高純度の物は硬度負けして打てないけど、10%程なら何とか打てるようなんだよね。だから捨て置くより再利用で新たに生まれ変わらせてあげた方がいいかなって」

 「龍馬君、お願い!是非この子を生き返らせてあげて!」

 美咲先輩この子とか言っちゃってるよ。



 時間も無いのでさっさと始めることにした。
 やはり自分の武器が出来るところが見たいと皆が付いてきた……だが全員が入ると気が散るので、自分の武器の時だけにしてもらった。

 
 ナビー工房で美咲先輩の刀を一度溶かし、錬金術で成分を抽出し、各素材のインゴットにする。
 ハードソリッドは太刀と小太刀用のサイズの11個に分け、新たに創る武器に混ぜやすくなるように加工した。
 
 雅の刀も打ち直す。これは大して時間はかからなかった。
 ブラックメタル5%とミスリル5%を削り、ハードソリッドを10%混ぜてみた。

 上位素材を混ぜたことによって新たにソケットが1つ増えたので、そこに【個人認証】の付与を付けた。
 俺たちには美咲先輩のような20m離れたら強制転移させるような付与はいらない。
 武器にマーキングを入れておけば、盗まれてもその武器の前に転移できるからだ。
 なので本人以外が使えないようにすればいい。

 【個人認証】
  ・血を一滴使用し遺伝子情報と個人香、魔力情報を読み取り個人を特定する
  ・個人認証を付与する際にイメージした状態が発現する


 イメージした状態の発現というのが分かりにくいだろうが、武器によって制限が変わるだろうと思っての処置だ。

 ・刀なら付与全てが無効と、鞘に収まっている状態なら抜けないようになる
 ・弓なら付与全てが無効と、弓が引けなくなる
 ・杖なら付与全てが無効と、魔法が発動できなくなる
 ・盾なら付与全てが無効と、重くなり持てなくなる

 等のように武器によって付与する時にイメージが違ってくるので、毎回イメージするのが大変だった。


 俺も二刀流なので自分の武器はサイズだけ変えて雅と同じモノにした。

 美咲先輩・フィリア・菜奈・桜は美咲先輩と同じ太刀を一本。
 フィリアと菜奈は、カスタマイズで魔術師タイプから魔法剣士のようなオールレンジタイプに切り替えてある。

 【斬鉄剣】(ハードソリッド10%・ブラックメタル80%・ミスリル鋼5%・鋼5%)
  武器特性
   ・全属性の魔法を切断できる
   ・結界を切る事ができる
   ・この世に切れない物はない
 
  付加エンチャント
   ・魔法切断
   ・結界切断
   ・接触切断
   ・重量半減
   ・個人認証


 美弥ちゃん先生・未来・沙織は小太刀を造った。
 魔術師組の3人は小太刀の柄の部分に魔石を埋め込み、杖のような魔法効果上昇などの付与が成されている。
 鞘に収めた状態で杖のように魔法を増幅して放てるのだ。


  【魔法増幅の小太刀】(ハードソリッド10%・ブラックメタル10%・ミスリル75%・鋼5%)
  武器特性
   ・全属性の魔法増幅効果
   ・消費魔力が半減される
 
  付加エンチャント
   ・魔法攻撃力Up
   ・MP消費量半減
   ・自動修復
   ・重量半減
   ・個人認証


 一番大変だったのが、穂香の盾だ。
 盾は大きい上に軽量の付与がまだ付いていないため、重すぎて一人では扱い切れないために穂香を補助につけることにした。

 「じゃあ、今から始めるね。途中で席を立たれると気が散るのでトイレも先に済ませてもらったけど、どうしても何かあった場合は声を掛けてもいいので、我慢はしないように。では始めるね」

 炉から穂香と二人がかりでデカいペンチで取出し金床にあてがえて最初の一撃を加えた。魔力を込めて錬成術を行使してイメージを練り込む俺独自の製法だ。一撃毎にMPが5ずつ減っていく、皆の剣と違って硬い上に大きい為、熱しては叩くの繰り返しが延々と続く。2時間程叩き続け大まかな型取りとイメージの練り込みが終わった。水入れを行い冷えたところでインベントリ内で大まかな装飾を施す。

 インベントリから取り出したら最後は俺の錬成魔法で細かな装飾とエンチャントの付与を行う。
 最後の仕上げの前に3本目のMP回復剤を飲み干す。8分目までMPを回復させたので一気に仕上げにはいり完成させる。2時間の大仕事になったが良い物が出来た。と言うかまたやばいかも……。


 「穂香完成した!銘を【魔反龍砲盾】としようかな。正直やばい。間違いなくこの世界最強盾だな」 

 いぶし銀に鈍く光る盾の中央に大きな黒龍が口を開いて睨んでいる美しい盾だ。こちらの世界の竜ではなく日本や中国でみるアジア的な龍だ。


 【魔反龍砲盾】(ミスリル60%・ブラックメタル35%・鋼5%)
  盾特性 
    ・火・水・風・雷の魔法を盾で受けることにより魔法を吸収できる
    ・吸収した魔法は任意のタイミングで吐き出させることができる
    ・龍が食った魔法は吐かずに所持者のMPに還元して吸収できる
    ・龍が吐く魔法は攻撃した術者より4階級程威力が下がる
    ・ストック中に受けた魔法は【魔法反射】効果で術者に反射される
    ・反射した魔法は1階級程威力が下がる
    ・盾の内部に50cmと25cmの投げナイフが2本仕込んである
    ・投げナイフは盾より5m以上離れた場合自動で転移して盾の鞘に返ってくる
    ・盾内部の剣の比率はミスリル70%ブラックメタル25%鋼5%の両刃のものである
    ・ナイフは所持者の手から30秒以上はなれたら自動で盾内の鞘部に転移して戻ってくる

  付加エンチャント
   黒龍部位
    ・魔法吸収
    ・吸収反射
    ・MPドレイン
    ・魔法反射
   盾部位
    ・特殊転移陣
    ・重量軽減
    ・自動回復
    ・個人認証

 「中央の龍がヤバい。龍で受けさえすれば魔法は完全に術者に反してしまう。雅の武器以上に魔術師泣かせだな。それと反射や吸収にMPは使わないが、投げナイフの自動転移回収にMPを消費する。龍が食った魔法のMP分の60%程をMP還元してくれるので、ガンガン投げて使ってみてくれ。敵が反射を恐れて魔法を撃ってこなくなった場合は魔法職の誰かに撃ってもらってMP還元すれば魔力補充も可能だ。なのでMP量を気にせずどんどん投げナイフも使うんだぞ。せっかく投擲も練習して上手なんだから使わないと勿体ない。それにこれで魔法スキルのない穂香でも投げナイフとストック魔法で中距離攻撃が可能になったな」

 「龍馬先輩!これ貰っていいの?これって私無敵じゃない?」

 「俺たちの武器以外では多分無敵だな。俺たちの武器は穂香の【魔法反射】も切っちゃうからね。唯一の天敵かもね。まぁ、身内だし問題ないだろ」



 かなりの時間を有して俺はもうヘロヘロだ。
 何本もMP回復剤を飲んでお腹もチャポチャポいっている……夕飯前なのにな~。



 佐竹たちは魔獣が周囲に少なくやっとレベルを30に上げて今帰路についているところのようだ。
 さて、どうくる気なんだろう?
 

 夕飯までに少し時間がある。
 汗だくになったのでお風呂に入り、雅を呼び出してまたマッサージをお願いした。



 あ~~~~生き返る~~雅ありがとう~!

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