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異世界人、失踪する(後編)

「ユーさん、見つかったっスか?」
「いやワシらの方は見かけなかったが、そっちもか」

 メッキくんと銀さんが、そんな会話をする。

「そもそも本当に、ユーはここにキテるんデスカ?」
「うっ、それを言われると自信が」

 シロガネさんの指摘に、ナマリさんは苦い顔をする。

「でも、他に手掛かりがないの」

 工場長が、そう言ってナマリさんとの背中を軽く叩く。

「今は、それを信じて探すしか……」

「戻ってこい、おっさんっ!!」


 ふいにそんながして、ボクらは振り向く。あれは、ブリキの?
 そして次の瞬間、ボクらは声の方向に走り出していた。

 ← ← ← ← ← ← ← ←
 
 崖っぷちにユーさんが立っていて、ブリキと活弁士の時任チタンさんが、そこから少し離れた場所で向かいあっていた。

「こっちにも言い分はある。
 だから謝罪はしない!!」

 ブリキはそう口にする。

 いや、そこは形だけでも謝っておこうよ。とことん根性曲がりだなあ。

「だけど、いきなり居なくなるのは卑怯だ!オレが、何も出来ないじゃないか」
「わ、私だって!!」

 ブリキに触発されたのか、チタンさんも大声を張り上げる。

「誤解なら誤解って、ちゃんと釈明して欲しかったです!
 報道に携わる者としてうやむやなまま逃げるとか、許しませんよ」

「大体ね、ユーちゃんっ!!」

 今度は工場長が口を開く。

「うちを飛び出して、その後どうするつもりだったのよ。世間を何も知らない記憶喪失のくせに」

 その言葉は重かったのか、ユーさんが初めて同様した様子を見せたが。

ーーだって、迷惑でしょう!!

 それは普段寡黙で余り口を開かないユーさんが、初めてボクらに見せた感情の爆発だった。

ーー自分みたいな何処の馬の骨とも分からん輩が一緒だと、知らないうちに誰かが傷つく。
 だから自分はいない方が。

「ああそうだな目障りだよ、オレにとっては!」

 ブリキがそう声をあげる。
 おい、いい加減に……と、ボクが前に出ようとするが、何故か工場長はそれを止めた。

「だが、認めたくないがおっさんを必要としてる人も一杯いるんだ!
 ナマリに工場長、他の皆もな!!」

 その言葉に、集まった一同は大きく頷いた。

「あとオレだって嫌いだが……おっさんは大嫌いだが、居なくなって欲しくないと思ってもいるんだよ!」

 何だよ、そのツンデレ。素直じゃないなあ、全く。

 あはは。

 ボク以外の皆も笑っていた。

「なんだっ、笑うな、お前らっ!!」

 ブリキが顔を真っ赤にして怒るが、いや無理だって。
 あははは……あー可笑しい。

 本当に、戻ってもいいのかと念をおすユーさんに、反対する者はその場に誰もいなかった。

 はず、だったのだけど。

"いや、実に残念な結果だな。

 聞き覚えのある機械音声が空から聞こえる。

「ネオンっ!!」

 工場長が空に向かって大声で叫び、肉食獣のような形相で睨む。

"このまま仲違いしてくれてたなら、このまま手駒に加える算段をたてていたというのに"
「あんたには、私の大事な仲間を何一つ与えるつもりはないわ」

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