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46話 ちょっ! セラフさん! 素が出てますよ!

 四人一組の小隊が三つ。それを束ねるのがアインさん達三人の小隊。軍隊の仕組みは良く分からないけど、小隊が三つか四つくらい集まるとそれを中隊って呼ぶみたい。アインさんはその中隊を率いる中隊長さんって事になるみたいね。

「済まないがまた世話になるよ」
「「宜しくお願いします」」

 と言う訳で、アインさん達三人とまた同部屋で暫く過ごす事になったんだけど、実際には迷宮の中で過ごす事の方が長くなりそうね。
 他の三つの小隊は、それぞれ他の冒険者パーティに割り振られて冒険者流の戦闘の指導を受ける事になる。ベルガーさんやアキュラさんのパーティも指導するんだって。

「という訳で、アイン達がいない間にも迷宮の新たな情報が出てきていてね。この先は簡単に死人が出る可能性もある。脅している訳じゃないんだが、注意するに越したことはないだろう」

 メッサーさんからアインさん達に、忠告というか警告というか。とにかく第三階層からは今までと訳が違う。

「なるほど……我が中隊にも周知徹底させよう」

 明日から第四階層の調査が始まるんだけど、お姉さん達第三階層大丈夫かなぁ?

「なに、我々も向こうで遊んでいた訳では無いのだ。足手纏いにはならんよ、シルト」

 口に出してないのにまた考え読まれた!?

「いや、シルトの考えている事はあながち間違いじゃないよ? 迷宮は下の階層に行くほど広くなってるんだ。当然調査は長丁場になる。戦闘の負担もだけど、精神的な負担がグンと増えるんだ。まあ、ウチにはシルトみたいな面白い子がいるから助かってるけどね!」

 ちょっとぉ、ラーヴァさん……あたしをマスコットみたいに…

「……そうか。数日の間迷宮に籠りっぱなしになるなど、あまり気分がいいものじゃないな。リャン、ミィ、明日からは一層気持ちを強く持って行こう!」
「「はい!」」

*****

 迷宮入り口付近には掘立小屋が建てられていた。板に字を書いただけの簡素な看板には、『迷宮探索受付窓口』とある。
 徐々に迷宮の危険性が明らかになって来たので、無許可で迷宮に入る事を禁止するお触れが領主様から発せられた。それに対応すべく急ぎで作った掘立小屋。

 流れとしては、迷宮探索を希望する者は辺境伯領の冒険者ギルド本部か、迷宮支所で申請を行い、ギルドが冒険者の力量を判断した上で許可証を発行。許可証を入り口の掘立小屋に提出できない者は迷宮に入れないルールだ。
 受付窓口では冒険者の入出管理を行い、未帰還者がいる場合には捜索部隊を派遣することも検討するんだって。逆に言えば、ルールを守らずに潜った者は死んでも知らないよ、と。

 第四階層の探索から数日振りに帰還してきたあたし達は、徐々に確立されていく迷宮運営に感心する事しきりだ。だけどトラブルも多い。
 話が広まり、辺境伯領の外からも迷宮探索に来る冒険者が増えたのよね。実力のあるパーティならそれでもいいんだけど……

「なんで俺達はダメなんだよ!? 実力は3級並みだって言ってるだろ!」
「ですからこれは領主様の決められたルールなのです。本来の実力に関わらず、ランクが3級以上でないと迷宮入りの許可は出せないのです」

 というトラブルが多発しているみたいなのよね。荒くれ冒険者達に凄まれてもクールに対応するセラフさんはカッコいいな。

「ちっ! 受付の女なんかじゃ話にならねえな! 関係ねえ。無理矢理入っちまおうぜ!」

 セラフさんの言葉を無視して迷宮入り口に向かう冒険者達。はぁ、とセラフさんがため息一つ。出るかな? 出るかな?

 「ち! おいコラ。黙って聞いてりゃいい気になりゃーがってよ!? あん? 誰に口利いてんだこの雑魚が! テメーらくれえの雑魚が迷宮入ったら間違いなくおっ死ぬから忠告してやってんのによ! そうか。どうせ死ぬんなら今ここで殺しちまおうか。そうだな。それがいい。死体は迷宮ン中に捨てときゃゴブリンが食っちまうからいいだろ。オラ、テメーらぶっ殺してやっから表出ろや!?」

 もうね、キレたセラフさんってめっちゃ怖いのよ。舌出して中指立ててるのよ。元2級冒険者で『狂犬のセラフ』って異名持ちだったんだって。殺気がね、受付嬢さんのモノじゃないのよね。いや、マジ怖いわ。

 でも流石にあそこまで言われちゃ冒険者の方も退くに退けない感じよね。ビビってるのバレバレだけど表に出てセラフさんを囲むように陣取る。相手は四人。

「あのー? セラフさん?」
「あん? なんだいシルトちゃん。あたしゃ今からこのクソ虫共をぶっ殺すんだけどねえ?」

 ははは。コワい。でも殺すのは無しの方向で。

「お仕事に差し支えるでしょうから手早く済ませましょう。助太刀しますんで。あ、殺すのは無しですよ?」
「そうかい? やっぱシルトちゃんはいい子だねえ。おい! この子に感謝しな! テメーらの命、少しだけ残しといてやるぁ!!」

 いや、少しだけって……

 セラフさんが話し終わると、同時にダッシュして一人の鼻から血飛沫が舞う。あたしも急がないと冒険者の人達の命が少ししか残らないらしい。

「ごめんなさい!!」

 あたしもダッシュして、シールドバッシュで一人を吹っ飛ばす。やっぱり鼻から血飛沫だ。
 残り二人は戦意喪失で土下座してる。

「あん? 何の真似だそりゃ? 仲間ブッ飛ばされて仇も討てねえような腰抜けが迷宮だと? 笑わせんなコラ」

 セラフさんは頭を踏みつけ地面に顔をグリグリしている。そしてもう一人の土下座男の頭に足を移動させてまたグリグリ。結局この二人も結局鼻から出血だ。

「テメーらの実力なんざこんなモンだ。修行して出直して来やがれ。3級に上がったらちゃんと許可証出してやらあ」

《おおおお!!》
《パチパチパチパチ》

 集まった野次馬が拍手喝采。たしかに気分爽快にはなるわね。

「はっ!? えっと……私、またやっちゃいました……?」
「「「うん」」」
「きゃあ~~!! 忘れて! 忘れてぇ~!!」

 セラフさんフェードアウト。
 

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